第55神 side:赤歳家の日常
赤歳家────信善寺の中心、朧月市にある由緒正しき、神社を守る家系。
纏大稲荷神社の現神主、赤歳幻治郎をはじめ、息子赤歳色、赤歳色華が守護者として活躍している。
────そして今、俺たち…赤歳家は信善寺の海岸にいる。
玄兎市にある海岸で、海域の異常な上昇を抑えるために出動したわけだ。
「…まさか神の透かしっぺとは」
「いやほんとにクソだよね」
すかしっぺだけにとは言わないが、やる規模が神すぎる。
そのうちちょっと手であつーって煽ったら風で後ろの街が吹き飛んだとかそういうのが来そうで困る。
「生まれたてだったから加減が分からなかったらしい」
父親の言葉に、だから神ってのはヨォ…新神に加減教えるとかないのか。あるわけないか…そんな縦社会じゃないからな神様って…。
「今回は春の管掌で色華もやるから」
「え、纏稲荷の管掌はなくて良いの?」
「いいよ、何年も祈ってるから一年くらい大丈夫でしょ」
「適当だなぁ」
大丈夫大丈夫と笑う父の横で空に手をかかげ、海に向かって降ろす。
「我が名は赤歳色────梓」
色がメガネを投げればボワっと音共に赤紫の狐が出てくる。
尻尾も耳も垂れ下がり不満そうな声を上げた。
『これ僕にはデカくなぁい!?』
「できるできる」
「できるよー、梓ーがんばれー」
『2人とも適当だなぁ!?』
やるけどねぇー!!と上昇した海域に『我は纏稲荷の神使なれば、その力は無限のもの。
僕の力で海域を落とす』
『おらぁぁぁあ!』
海域の上から下に体重を乗せるようにして全身を使って何かを押すように動いている梓を見上げながら、父は笑う。
「おー」
「思ったより力技」
『うるせぇえええ、本来僕はこういうことやる役じゃないのにやらせるのが悪い!!』
「やらせるよー、梓はそろそろ神使から脱さないとね。お前いつまで神使やってんだ」
『幻治郎にそれ言われたら何も言い返せないじゃんかぁぁぁぁ』
ぐぅううううと押していく梓の下にある海が少しずつ下がっていく。
「おっ、効果ある」
「まあ、あれでもあいつは神だからなぁ」
「ちなみに父さん」
「ん?」
「梓は何年神使やってんの?」
「んー、本来ちゃんと狐神になるための期間が合わせて5000年ほどだとしたら、梓は神使を4000年くらいやってる。もうそろそろ1000年かけて神にならないとお前いつまで経ってもそのままだぞ」
『いいのー!僕は纏様の神使でいいのぉー!!』
「嘘つけー!お前そう言って俺に泣きついてきたことあるだろーがー!」
父と梓の関係はまるで友達で、梓がうるせえええとまた叫んでいる。
これが何千年もの記憶を、転生するたびに保持している、歴代最強の守護者だ。
「──次元が違うんだよな父さんって」
「まあ、記憶めっちゃ持ってるやつってそうなるよなぁ。でも色のところにもいるだろ。脅威の記憶保持者」
「え?誰」
「愛依ちゃん」
「…ああ、そっか、あいつもか」
『ねええええちょっとシリアスに何のやめてくんない!!ほら!終わった!ほら僕にご褒美あるでしょ!ほら、終わったよ!!』
んっ、と両手を出してきた梓の手の上に両手を乗せてやる。
一瞬の間。
『…なに、ギャグ?ツッコミ待ち…?それとも寂しかったの?』
「いや、ツッコミ待ち」
『クソが!!色のそのノリほんと良くない!』
ポンっと消えた梓は目にかけてるメガネに戻る。
戻った眼鏡をかけていると父が笑う。
「…お前も覚えてるくせに」
父の笑みに、うーん。と顔を上げる。
「…確かに覚えてるよ、転生したなぁって。
最近思い出したからね前世の記憶。めっちゃ曖昧だし全部は覚えてないけど…でもそれ言われても父さんが異次元なんだよなぁ」
「そんなことないだろ」
『いや、個体としてお前は異常枠だろ。異次元、化け物、終わってる』
「え、そんなにじゃないよ。誰でもできるって」
『「できないって」』
「神に言われるレベル…?いや、梓がカスなだけ?」
『なんだと!!?』
カッと噛み付く梓に、父は笑う。
俺もなんか楽しくなって、「さーて終わったし帰ろー、今日のご飯母さんがきつねうどんって言ってた」
『油揚げ!やったー!』
切り替えの早い、梓の喜びように俺も嬉しくなる。
うちの家のご飯は母さんとそのお付きの人たちによる手製のもので狐たちのご飯も作ってくれているのだ。
転移できるのにわざわざ車を買った父が、運転席に乗り込みエンジンをかけながら、そういや…とつぶやく。
「色華が『お兄と梓どこ行ったの?』って言ってたぞ」
えー、可愛い〜妹っていつまでもかわいいよなぁ。昔もよく後ろについてきてて。と昔を思い出しながらうんうんと頷く。
「ふふー、色華いつまで経っても俺に甘えて可愛いー」
『ほんとかわいいー僕のことも心配してるってことー?ふふー』
「人の部屋で梓の毛の処理したの許さないってブチギレてた」
父の言葉に俺と梓は青ざめる。
「まずい、帰りたくなくなってきた」
『俺も』
父がエンジンをかける。
「さて帰るかー」
「ねえ、父さんやめよ。一旦遠回りしよ」
無慈悲にも走らせる父に、家に帰ったらどうやって言い訳をするか、梓と脳内会議をしながらこの後妹と母に怒られるであろうことを想像して泣いた。
「今回の舞を踊る練習場所に終さんの所借りたからそっちでやれよー」
父の言葉は耳に入らなかった。




