表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護の記録  作者: ツギハギ
春夏秋冬祭り準備編
PR
66/147

第54神 未来を照らす灯り

 部屋から出て廊下を抜けた先には縁側だ。

この縁側の向こう側には大きな庭園がある。

 水中のような海面のゆらめきがあるのにも関わらずなぜか池があり、その中にも魚がいて、それはそれとして空中にも魚が漂っていた。





「…この魚はなんなんですか?」

『うちの力やね』



 同じようについてきたのであろう玉さんがそう言ってニヤリと笑った。


『侵入してきた敵をジャッジする、監視カメラみたいなもんながよ』


 とのこと。見た目はこんなに可愛いのに…ヒレもヒラヒラしてて、金魚みたいで、鮮やかなのに…やってることは監視カメラなの?こんなに大量にいるの怖すぎるな…。思わず空を眺める。空を泳ぐ魚というのは不可思議だ。


「お前さんら、これもいるじゃろ」


 舞を舞う時に持つ小道具をいくつか手にして縁側に並べる玉さんを見ながら朝梨(あさり)と一緒に小道具に触れる。


「刀…と扇子…とこれは?」

「ああ、それはランプだな」

「なんかあんまりイメージないですねランプ…」


 舞を舞うのにランプ…?

上に掲げて眺める。


「神楽の鈴に、番傘だ!」


 朝梨(あさり)がキラキラした目で番傘を手に取る。開いて遊び出す朝梨(あさり)を横目に鷺沼さんに問いかける。



「番傘…聞いたことあります、日本のやつですよね」

「お、よく知ってるな」



 バンっと傘を開きクルクルと回した鷺沼さんは笑う。

朝梨(あさり)が開いた傘を肩に乗せてくるりと回る。


「日本かぁ、行ってみたーい」

「無理無理、だって階層が違うらしいじゃん」


 笑う朝梨(あさり)にそう返すと鷺沼さんが傘を閉じながら意外だなぁと言う。

いや、意外だなぁじゃないんだけど。


「蓮でも流石にそれは知ってたか」


「うわっ!!今バカにしましたね!?知ってますよー!

 上から、天界、現界、隠り世、魔界の順番の四層になってるんでしょ?」


手の指を折りながら数える。


「で、俺たちが居る、ここ──根の国こと神居(かむい)神無(かんな)の層は隠り世!」


「ね!玉さん!」


 と玉さんにふれば、縁側で俺たちのやりとりを見ていた玉さんは、


「そうやねぇ」


 縁側に座っていると思っていた玉さんは縁側より少し前の砂利の上に立っていた。

 笑いながら刀を持ち、するりと抜いた。


「…玉さん、刀使えるんですか?」

「ん?んー、おん。うちは神居政府で、警察をやりゆうきね」

「警察!?」

神無(かんな)警察で働かせてもろてます」



 刀を納めながら笑うその体幹は確かに強そうに見えた。


「玉さんの攻撃方法も実は刀なんだよ。ほら、七不思議で戦ったとき刀だったでしょ?」


…そういえばそうだった!あの時はもうそれどころじゃなかったから忘れてた…!


「だから私の力も刀寄りなんだよね」

 ほい。と出した、魂の形から生まれた武器が朝梨(あさり)の横に現れる。

「おぉ…短い?」

「そう!暗殺向き!」


 にっこりと笑った笑顔に反して持っているものが、暗殺向きだと言われるとあまりいい笑顔を返せず、笑顔が固まる。


「よし、じゃあ休憩もいい感じに取れたし。今度は流れを見るように!」



鷺沼さんの切り替えの言葉に俺と朝梨(あさり)はゆったりできなくなることを察した。




とにかく、今は流れを頭に入れるしかない。


もう何度も鷺沼さんは舞っているのに汗ひとつかかず、息も切れていない。













────神事の舞というものは、とても厳かで静かなものだと思っていた。

だが、今流している曲はまるで違う。


笛から始まり、バイオリン。鈴の音。


太鼓の叩く音が連立し、琴を弾く音。


玉さんの庭園の中央に鷺沼さんが立つ。

仁王立ちから、裸足の足先をずらすように立つ。


右腕を振り上げ、足を強く下ろし、地面を揺らすように叩く。


振り上げた右腕を横に、持っている小道具──扇子を開く。



…空気に漂う魚があたるたびに泡になるように消える。






「──的な感じでだな」


鷺沼さんが俺と朝梨(あさり)に顔を向けた。

俺たちは気づけば興奮を隠せぬように立ち上がり盛大な拍手を送っていた。


「やっぱ何回見てもわかんないです!!」


思わず詰め寄る俺と、感想を言う朝梨(あさり)


「ずっと思ってたんですけどこの曲!なんですか!?」

「めっちゃ綺麗でした!」

「番傘消えたけど、アレってどうなったんですか!?」

「ていうか、本当にすごい!」

「お、おち、おちつけ!」


鼻息の荒い俺たちを宥め、ため息をついた。


「この曲は、春夏秋冬(ひととせ)祭りで踊る時の音だよ、実際に楽器を弾いてもらう」

「え、てことは生演奏?」

「そう。で、今回の俺がやったのはあくまで俺の動きだから参考にはならんところもあると思う。」

「鷺沼さんの動き…」

「最後の礼をするのは俺の動きだな」

「番傘と刀のところですね」


俺の言葉に頷いた鷺沼さんが笑う。


「小道具にも意味がある。扇子は、繁栄に。番傘は魔除けや守護に。刀もまた、邪気を祓い、守るもの。この神事の目的は平和を祈るものだからな」

「は、はぇ〜…」


納得する朝梨(あさり)と俺は鈴もかぁ、と小道具を見て、ふと残っている物を手にする。


「じゃあ、あれ?この鐘みたいなランプは誰が使うんですか?」

「ん?お前だぞ」

「おれぇ!!?」


今日一くらい大きな声が出た。


いや、ランプ!ランプだよ!?



「鐘のランプですよ!?何に使うんですか!?」



両手で見せつけるようにすれば、鷺沼さんは笑った。



「はは、あー……、結論から言う。今回のお前たちは管掌として立ってもらう」

「管掌?」

「雨の守護者を覚えてるか?」

「わ、忘れるわけないじゃないですか!」



 あんな…事件を。

思い出すだけでたまに胸が痛む。

目の前で起こった、人の死とはあまりにも儚く無惨なものだった。

 小さく拳を握る。指が内側に食い込むが、それでも、思い出すたびに泣きそうになる。



「守護神には役割がある。これは知ってるよな?」

「っ、はい」

「雨の守護者は雨の土地──雨水の管掌だった。俺は、産夢(さんむ)の管掌だ。


 そして、今回お前たちの守護神も、管掌としての役割を持つ神だ。」

「有象無象の守護者ではなく、な」


「だから管掌として、舞を行う。

 要は中心人物だよ」




 一瞬の静寂。

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が妙にざわついた。

 まるで、俺がずっと前からそこに立つことを知っていたみたいに。

 俺の頭は今まで以上に回転し、え?じゃあ…。




「え、えぇー!!!?新人なのに!?俺たち!」

「新人でも、そこは関係ないんだよ正直」

「どうなってんだ神居政府と守護者の制度!!」


 キレる俺に、鷺沼さんは苦笑いを浮かべた。


「まあ、それくらいお前たちの神の存在は強くてでかいってことだよ」

「いやぁ、うちの玉さんは確かにカッコよくて可愛いですけどぉ」


朝梨(あさり)受け入れるのが早いって俺たちは抗議するべきだよこれ」

「抗議してもいいが時間の無駄だぞ」


 折れるつもりはない。と言う宣言に膝が崩れ落ちる。

 俺の脳裏には敗北という2文字が頭に浮び、鷺沼さんの頭には勝利の2文字が浮かんだのだった。

思わず膝をつき項垂れる。



「てことは俺新人なのに目立つ上に、みんなとは違う動きを覚えなきゃいけないってことでしょ…?やだ、無理だ…」


俺の言葉に朝梨(あさり)の理解が追いつく。


「え、あ、そういうことか!えー!無理ですよ!」

「いや、やるぞ」

「責任が重すぎませんー!?」


 叫んだ声はものの見事にこの庭では、泡の音でかき消される。





鷺沼さんが大きく笑った後、ゆっくりと息を吐きつつ俺のランプを指差す。


「で、そのランプは未来を照らす象徴だよ」

「…未来」




実際の所、未来の自分なんて想像もできなかったが、ここに来て少しずつ管掌の重さを少し実感する。



不思議と手の中のランプが重く見えた。

俺が照らす側になるなんて、少し前の俺なら笑っていただろう。


混乱している俺をよそに玉さんが何かを持ってくる。


「これは朝梨(あさり)が使うもんやきね」

「え!!?私はこれなの!?」


手のひらサイズの割と大きめな貝殻を手にして朝梨に渡す。


「まって、これどうやって使うの?上に掲げればいいの?」


困惑する朝梨に玉さんは笑った。


「見た目は貝殻やけど、これ楽器ながやき」

「えっ…?」

「あの曲聞いとった時、不思議な間ぁがあったやろ?」

「……あった」

「そこで朝梨は鳴らす側になる」

「はぇ…私ラッコじゃん…」

『貝を鳴らすラッコかぁ』

ちょっとラッコのような朝梨(あさり)を想像して笑ってしまう。朝梨(あさり)に叩かれる。


「蓮のそれは、未来を照らすものだ。舞の動きには意味がある。」

「…未来を照らす…」


掲げたランプの中には何もない。

この庭園から見る空が映るくらいだ。



「お前の守護神には火雷様がいるだろ、彼女は常世の番人。見たことないか?あの方がランプを手に取っている姿」


そう言われて、思い出す。

七不思議の、ガイコツ先生に会う前に、気絶してしまった時だ。



──黄泉の帝王に会いに行こうか──


そう言って手にしていたのは、青いランプだった。



「青い炎は黄泉の色だ」



暗い道に照らされていた燃え盛る青い炎は確かに不気味だった。



「風伯様の象徴は花吹雪に入ってる。お前はその火雷様の象徴を持って舞に組み込まれてるから」



──つまり、俺たちはただ舞うだけじゃなくて、それぞれの神様の役割を背負って立つということらしい。


へぇ、と掲げていたランプを胸の辺りまで持っていき持つ。


「それじゃあ、教えるからよく見るんだぞ」


逃げられないな、これ。

諦め半分、管掌という役割の重さのために気持ちを切り替える。

鷺沼さんの動きを見るために、俺たちは改めて覚悟を決めて、しっかり覚えれるように座った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ