第5神 ヒーロー
できるだけ詠唱に関しては似たものにしないように頑張って考えてはいるんですが脳みそが弱いので似たようなものになってるかと思います。ご了承下さい。
「で、すぐにこうなるんだよなぁー!!!」
『喋る暇があるな足を動かして走ればか!』
「なんでそんな辛辣なの!?」
ああどうしてこうなったのか。
────遡ること数分前。
あのあと、風伯と火雷に改めて自己紹介をされた。
家に戻り、部屋で膝を突き合わせてベッドの上で三人で座ったあと、火雷が微笑んだ。
『もう一度自己紹介させて。あの時のあなたは気絶しちゃったから…私の名前は火雷。雷の神様だと思ってくれたらいいよ』
『俺の名前は風伯だ。火雷とは対の存在で風や嵐を司ってる』
2人の名前を聞いて雷と風が入ってるのすごくわかりやすくていいなぁと呑気に思いつつ正座にした膝の上の手をギュッと握る。
今度は俺の名前の番だな。よし!
「俺は『あ、だめだよ自己紹介したら』え?」
拍子抜けてしまい首を傾げると風伯の目がジトリと細まる。
『何にも知らないんだな…全く、神に名を教えるな。いいか、お前は神に名前を名乗る時は下の名前だけ名乗れ』
「な、なんで?」
怒ってるような声で言われて思わず肩に力が入る。だって自己紹介されたし、ちゃんと返さないと…って思うじゃん!?と火雷に助けを求めて目を向ける。
困ったように眉を八の字にして微笑み、衝撃的なことを言った。
『制約が結ばれちゃうの。氏名を言ってしまうと魂を縛ってもいいですよっていう開示になっちゃうのよ』
「へぇ!?そうなの?!」
『それは例えお前を守ってる俺たちに対しても、同じことだ』
「うぅ…お前らにもダメなの,?」
『ば、おま…〜〜っ…はぁ』
額に手を乗せため息をつくその姿は本当に8歳児くらいの姿ではない。大人…しかも保護者の面だ。
まあまあ、と宥める火雷はその奥さんのような、そんな姿で…それでいくと俺は息子…?それはどうなんだ、絵面的にもなんだか違うような…とどうでもいいことを考えていると風伯がこちらを見る。
『…ダメだ。例え俺たちでもダメだ。いつか裏切ったらどうする。その時お前の名前を知ってる俺たちが悪いことに使う可能性だってあるだろう。危険なことは最初から避けておくべきだ』
「…わかった」
『あなたから名乗らなければいいのよ、例えば昨日の鷺沼さんからあなたの名前を神に紹介しただけだったら問題ないの』
「俺が俺の意思を持って名前をいうのが良くないってことか…」
「…わかった!じゃあ、改めて俺のことは蓮って呼んでくれ」
『うん、よろしくね蓮』
やれやれというようにため息をついた風伯だがそのじつ表情は穏やかな顔をしていて、怒ってるわけではなくずっと心配してくれてたんだなと気づく。
「れーん、買い物してきてくれないー?」
下から母さんの声が聞こえてくる。
めんどくせーという気持ちを押し殺し、はーいと返事をして下に降りれば、2人も後ろからついてくる。
こんな感じでいつもついてきてくれてたのか??なんか可愛い〜。
ほっこりとしつつも母の話に耳を傾けた。
「買い忘れてたのがあって,トイレットペーパーとティッシュ。他の探してたら忘れがちよねえ〜」
ケラケラと笑う母に「めんどくさ〜…」と返すがしっかりと背中を叩かれた。
「行くよね?」
「行かせていただきます」
「はい、行ってらっしゃーい」
不幸体質だからとかそんなのは母には関係ないのだ、息子は息子。
不幸体質で死にそうになる息子をずっと籠もらせたりはせず好きに生きろというのがうちの方針らしい。
【次のニュースです。西城地区、椿町1番の十字路で交通事故がありました。死亡したのは女子高生で車に潰されたとのこと。神無警察は────】
テレビのニュースはいつも不穏なことばかり流れてくる。そんなテレビのニュースを聞きながら玄関を出た。
「────ある意味放任主義な気がする」
『一種の愛情だろうな』
『お母様もすごく悩んでた日々があったんだよ』
「あ、そっか2人はずっと見てたんだっけ…ずっとってどれくらい?」
『蓮が生まれるよりも前から、あなたのお父様がまだ生きているよりももっともっと前から』
「もはや神無家の守護神だな」
『概ね間違ってないな』
話しながらスーパーで買い物をし終えて、家までの道のりを歩いている時、声をかけられる。
ーチ、コ、ンチ ワ
「え?なんか言った?」
蓮の言葉に返ってくる言葉はなく、2人はただじっと前を見据えていた。
「え、なに?どした?」
『しっ、』
火雷の静かに。の合図に口を閉ざす。
ただ静かに前を見据えていた2人とは別に後ろからぺた、ペタペタと足音。
「ね、ねぇ、足音聞こえるんだけど」
『なんでお前はこうも色んなものを引っ掛けてくるんだ』
『小さな頃からそうだね』
「何それ知らない」
『…ちょうどここは十字路か』
「?」
『十字路には昔から色んな話があるの。辻道って言ってね、私たち神や心霊とあなたたち人間との境と言われてる』
『だから、こういうところは人がよく死ぬ。ここも最近死んだんじゃないか?』
「…あっ」
さっきのニュースの場所だ。
それに気づいてゾッとする。
花束が道に手向けられているのは、そのせいだ。
『…蓮お前には言ってなかったが、俺たちには制約がすでにされている。俺たちより上位存在に6000年以上も前から』
「え、何?なんで今言うの????」
『昨日突然その制約がさらに強くなった』
「つ、つまり?」
『今の俺たちじゃ戦えない』
『雷を軽く撃ったり風を軽く拭かせる程度ならできるんだけど完全には倒せそうにないの』
「なんでもっと早く言ってくれなかったのぉおおお!」
『悪い。お前の不幸体質を見てきていたのに甘く見てた』
『私たちもれんと話せてちょっと浮かれてたの…ごめんなさい』
「そんなこと言われたら許すしかないじゃんッッッッッ」
『とにかく逃げるぞ』
どちらの方向にもきていない右に曲がって走る。
この向こうは商店街で、人が割といるはず。
ただ商店街に向かうまでの距離が徒歩で30分もかかる。加えてそれまでの道はただの住宅街だ。
「軽く打つってどの程度!?」
『この程度かな』
バチンッと敵の腕を貫通させる。
足元には雷の打たれた焦げ臭い跡が残る。
「だいぶ強いけど!?」
『消せないから弱いよ』
「神様の弱い基準って消せるか消せないかなの!?」
後ろを向くとゆっくりとしたペースで2匹の怪異がついてくる。
先ほど貫いた腕は綺麗に戻っていて無事完治している。
怪異は歩きながら融合したのかとうとう1匹になり、足元を見ると女子高生の髪の毛のようなものを引きずっている。
「うぇっ…」
『…そうだろうな、普段見えてなかったものが見えるとこうなる』
吐き気がする。
風伯の言葉を適当に聞き流しつつ自分の胃の中のものを出さないように我慢する。
気持ち悪い、
気持ち悪い、
きもちわるい。
吐きたい、はきたい、
胃の中のものが競り上がる感覚。
────道端に咲く、なんの花かわからない花が無邪気に咲いている。
『一度お前を認識したとはいえある程度の距離を保てば消える。ああいうヤツらは特殊な能力を持ってない限りは問題ない』
ゆっくり歩いていることをもう一度確認して適当なところで吐く。
無理我慢できない、だって気持ち悪いもん。
人の生き死にがあんなあっさりと、簡単にあいつらは命を弄ぶんだ。
人の中身ってあんな感じで出てるの?無理なんだけど。本当に泣きそう。泣いてる。
「うぇえええ口の中苦いし気持ち悪い〜水欲しい〜‼︎」
走りながら空を見る。
まだ明るかった日差しはいつの間にやら暗くなっていて、異空間である事実に嫌になる。
同じ家の塀を二度見た気がしたが気のせいだと思う。
この辺は似たような住宅がたくさんあるしそんなもんだろう。
もう嫌な気持ちになりながら、ふと横を見るとさっき吐いた自分の吐瀉物に目がいく。
────あれ、ここ通り過ぎたのに。
ぐるりと見渡して、なんの花かわからない花が、道端に変わらずあった。
「もしかしてループしてる??」
『みたいだな』
『私が前消した時のやつに似てるね』
だから全く商店街に着かないどころかあいつは悠々と追いかけてくるわけだ。
持久戦なんだな?やめてくれ俺は別に得意じゃないんだよ。
走りながら、大きな声で空に向かって叫ぶ。
「もういやだー!帰りたーい!!!!!」
『あと少し、あと少しだけ頑張れ。もう少ししたら必ず助けに来る』
「誰が…」
『来たな』
────空気が痺れる。
思わず、足を止めてしまい肩で息をする。
「は、は、は、ぇ…なに?」
『ヒーローだぞ』
「どういう…」
「我、広大の名の下に告げる」
トン、と杖をつき黒い着物をはためかせて怪異に立ち塞がる。
その男は、昨日いた人だ。
「昨日の…」
『電話しておいたよ』
「火雷!いつのまに…」
「我は根の国を守護する者。
再生と破壊の守護神よ、契印をもって告げる。
我が刃に大いなる力を与え、我らを護りたまえ!」
持っていた杖が刀の形に変わり、赤く染まる。
「さっさとこの世から去るんだな」
スパンっと綺麗に縦に切る。
いつのまにか怪異の後ろにいた鷺沼さんは刀を仕舞う。と同時に怪異がゆっくりと溶けて消えていく。
【サビ、シ、イ】【オイテ…カ、…ナイデ】
「お前は元の輪廻に戻るだけだよ」
怪異の身体から出てきた四方のカケラに向かって刀を突き刺す。
「ゆっくり戻りな」
刀で壊れるはずがないその菱形のガラスは粉々に砕け散る。
パンッ
音ともに暗い煙がモヤのように溢れてきた。
そうして空に登るように静かに消えた。
「さて、さっそく呼んでくれたようで何よりです。お怪我は?」
『悪いな鷺沼』
「構いませんよ。神無くん、だったか」
「あ、はい」
「二度目ましてだな」
「あー、へへ…あの、そのかけらは?」
地面にはもう跡形もなくカケラは消えている。
刀を納めた鷺沼は「これはマガツヒだ」と言う。
「……マガツヒ?」




