【短編】 No.1 車椅子の少年の記録
──これは、七不思議がマガツヒに感染する前の断片。
事故に遭って数日後。
車椅子生活を送る、僕に友達たちは気にせず話しかけてくれるし、一緒に遊んでくれた。
──長く生きた。
いつの間にか…西城学園を彷徨っていた。
気づけば『僕』はあの頃の姿のまま『車椅子の少年』としていた。
七不思議の仲間たちができて、穏やかに仲良く過ごした日々があった。
──ある時マガツヒが広まり、感染した。
…待て。
……なあ、待ってくれ。
僕の記憶。
ダメだ。
僕の怒りすら、忘れてしまったら…。
あの子のことを──
──僕の代わりに死んでしまった、
あの小さな女の子のことを、誰が。
誰が覚えているんだ。
この理不尽な怒りを!
誰が覚えているんだ!
──あれ………名前、なんだったけ…
ああ、まずい…!
ダメだ、ダメだダメだ!
ダメだ
記憶が…
……
…
ポーン、ポーン。
…今日も生贄が来た。黒い髪に青い目、眼鏡をかけた男の子。
なんらかの気配を纏った不思議な少年だ。
「初めまして、お兄さん」
声をかければ驚く顔。
何度、ここに来る人間を見てきただろう。
ねえ、お兄さん。
僕の足を返してくれよ!
なあ!!
ああそんな顔をしないで、僕は怒ってない。
……怒ってない?
そうだ、怒ってない。ただそれがほしいんだ。
……なんだ、これは。
なんでこんなに、イライラするんだ…。
────くれよ、足を。僕に。
返してくれよ、あの時、走れてた足を
きっと、僕はそれを求めている。
この日々にいつか終止符が打たれると信じる。




