第31神 現れた図書館
俺はアルバートさんと共に、体育館から出る。
「こっちに行くよー、蓮」
言われるがままに着いていった。
「そう言えばさっきの寿の朧産みってなんですか?」
「神居の諺でね、寿という名の生き物がいるのさ。見たものは良いことが起こるし、良いことを教えてくれる不思議な龍のような生き物でね」
「その寿が子産みをする時、朧のように薄く霞むんだ。そうして年に一度しか現れない新しい『寿』に成り代わる。
この寿の子産みをなぞらえて、元からあると思っていたものが実は無かったことを『寿の朧産み』って言い方をするのさ」
つまり“あると思ってたものが実は幻だった”ってことか…??
「じゃあ寿っていう生き物は最初からいないって事ですか?」
「神無蓮が1人しかいないように寿は世界に一匹だけだ。
けれど寿命は尽きる。だから寿は生まれ変わって何度も転生をしているのさ」
「へぇ…」
音楽室まで来たあたりでひょっこり音楽室から出てくる朝梨を発見する。
…よく見たら、音楽室の文字が反転している。
この世界は鏡の世界なのか、と今更気づく。
体育館にいたから全く気づかなかった…少年の影のせいで上も下も黒かったし…。
アルバートさんと朝梨がお互いを見る。
「お、朝梨、ここに居たのかい?」
「アルバートさんと蓮くん!」
音楽室から出て、朝梨とも無事に合流を果たしたので、さて次はどこへ向かうか。という話し合いになった。
「残ってるのは屋上の女子高生か保健室の骸骨か図書館の番人だね」
「…あれ、いねさんは?」
「イネ?ああ、狐のこと?アレとはもう話し合いをつけてきたよ」
会話でね。と笑うアルバートさんは何処か含みをもたす笑い方と言い方をした。
「非合法的なことはしてませんよね」
俺がジトリと見ると、してないさ、失礼だなぁ君は。と肩をすくめる。
さて、どこにいく?
そんな話をしながら俺たちは廊下を歩いた。
「…ガイコツ先生の七不思議ってなんだっけ?」
「蜜柑達に聞いたとき言ってたのは『全ての物語を知るモノ。『ガイコツ先生、質問を三つしても良いですか?』って扉の前で聞くの。
そしたら、中から『良いとも。三つだけだよ?って返ってくるんだって!どんなことにも三つだけ絶対に答えてくれる。
質問を三つ終えたら1分以内にその場を去らなければならない。』」
「去らなかったら?」
「…ガイコツ先生と同じように皮とか肉とかありとあらゆるものを剥がされてガイコツにされるんですって」
肩をすくめてアルバートは笑う。
「ワァオ、crazyだね。まあ、悪魔の方がクレイジーだけど」
「番人はこの西城学園にある、数々の歴史や秘密を抱えている図書館を護ってるんだっけ?」
「それだけ?」
「いえ、なぞなぞを仕掛けてくるらしいです。」
「……西城学園にある七不思議はどれもこれもクレイジーだね」
「その謎々に答えれなかった人は本にされるんだとか」
「しかも本にされるのかい?…意味がわからないんだぞ」
「私もよくはわからないのですが、取り込まれる人の人生そのものを文字にして、本の形にするみたいです」
「リアルエッセイってか…」
「古めかしい扉が突然出てくるらしくて」
朝梨の言葉をへぇ…なんて聞いているとあてもなく歩く。
「とりあえずガイコツ先生のところに行ってみるかい?」
というアルバートさんの言葉に頷き三人で歩く。
「アルバートさんいるならなんか全部解決しそう〜」
「わかる〜」
「君たちねえ、ここまで俺が何にもやってないの見てたのによく言えるねそんなこと」
音楽室の廊下を抜けて階段を降りる。
保健室はどうせ下だろうと認識だ。
「この世界は鏡の世界なんですね」
「文字も反転してるし、もしかして場所も逆だったりするんですかね?」
「だろうね、君気づいてなかったのかい?」
「音楽室の文字見て反転してることに気づきました」
「え!あ、本当だ!」
朝梨が"1-A"と書かれたプレートが逆転してることに気づき声を上げる。
「君たち…」
『おまんら、ホラー映画やと1番最初に死ぬ人間やね』
「やめてその例え」
思わずツッコミを入れた朝梨に、ホラー映画で1番死ぬやつよりはもう少し長く生きると思うけどなぁ、と内心思いつつ3人で保健室の近くまで歩いてきた。
すると、前にいたアルバートさんの背中に当たる。
「うわ、アルさん止まらないでくださいよ」
「…古めかしい扉ってまさかこれかい?」
「エッ」
道順的に本来ならこの奥に保健室があるはずだ。
図書室は別館のためこんなところにあるわけがない。にもかかわらず、ここに鎮座している。
どう見ても図書館の扉だ。
このちょっと豪華な装飾に、茶色の扉のみが浮いている。
「…ちなみになんだけど、元来た道に戻るのはできたりしますか?」
「俺が聞いた話によると確かできなかったはずなんだぞ」
後ろにあった道は消え、壁になっていた。
「壁を壊すとか」
「壊しても構わないけど空間が歪んで俺たちはあらぬところに連れてかれて2度と戻って来れなくなるだろうね」
「なんでそんな怖いこと言うんですか」
「君が聞いてきたんだろう」
がちゃん。扉が開く音と共にギィぃと開閉する音が鳴り響く。
次の瞬間──廊下の音が消えた
【ようこソ】
【図書室ヘ】
「来たくて来たわけじゃないんだよな」
「右に同じく」
「正直過ぎるのも考えものだね。見て、ウキウキしてるよ彼」
「「変人じゃん」」
「だから、もっとオブラートに包みなよ」
ペラ…
ペラ……
ページの捲る音が聞こえてくる。
扉の先には、本好きなら誰もが声に出して喜ぶほどの大量の本が天井から下までずらっと並んでいた。
その中心で宙に浮かぶ人影がそこにはいたのだった。




