第23神 教会にて、見えたものは…
────夢をみる。
誰かを守りたいと願う、1人の男がいた。
以前見た夢の続きだった。
村人達が雨を止めてくださいと何かの儀式を行なっている。
黒い髪に青い目の男がそれを見ていた。
突然、夢の世界がブレる。真っ暗な空間になる。
ここはどこだと目を凝らしてとにかく歩いていると、1匹の青い蝶々が飛んでいた。
「…なんで夢で蝶々」
着いてこいと言わんばかりに鱗粉を飛ばす蝶々の後ろをついていく。
やがて、ぼんやりとした人影。青い、マフラーの男。
「おまえっ!」
手を伸ばす、届かない。
「……待て」
ふと、声がした気がした。
振り向くな、と。
なのに、俺は振り向こうとしていた。
頭が痛い。
──ハッと目を覚ました。
「なんなんだよ一体…」
『大丈夫?蓮』
「…うん、大丈夫。ありがとう火雷』
…頭がガンガンとする。
俺は、鮮明に珍しく覚えている夢に振り回される気持ちに授業中にも関わらず顔を伏せてしまった。
雨水と修行を終えて、少しだけ霊力がコントロールできるようになり、前に進むことができたように思う。
怒涛の日々を過ごした次の日は普通に学校である。
西城学園。
以前にも話した通りここは広い。とにかく広い。
「おっ、れーん良いところに」
聖川先生に呼び止められる。
「これ旧校舎に持ってってくれ」
「えっ」
「よろしくなー!」
「えっ??」
…もちろん、旧校舎だってあるくらいには広い。
──薄暗くてギシギシとなる廊下、埃が舞う空気。ミシッと音を立てて廊下に足が刺さる。
「うぎゃっ!」
『久しぶりに見たな、お前の不幸体質』
『この前までのも充分不幸ではあったよね』
「…うぅ…」
風伯と火雷の言葉を聞きながら木がチクチクと刺さった足をなんとか抜け出しながら木屑を払う。
立ち上がった時、ふと窓の外を見ると使われなくなった古い教会があった。
「…こんなところに教会あったんだ」
『…おい、あれ』
風伯の言葉の先を見ると、金髪の、男の人が教会に入って行った。
「…誰だ?」
さて、金髪の人が気になって急いで教会の近くまで降りてしまった好奇心旺盛なバカは俺です。
『…気になってからの行動が早すぎる』
「うるさい」
いいじゃんか…。危ない人だったら止めればいいし…。
こっそりガラスが割れた窓から男の人を眺める。
教会の中にあるステンドグラスから照らされるカラフルな光りと、屋根のない、十字架のみがポツリと残ってる。
床は朽ち果て、苔や蔓が壁を蔓延る。
祭壇も椅子も解体されていて、ただの物置のようなそんな異様な光景を前にして、男が一人そこに立っていた。
じん、と契印に熱が集まるような感覚。
なんだ?少し熱い気がする。
チラリと自分の手を見て、すぐカリカリと何か音がしたので窓の外から中を眺める。
木の棒で何かを書き始めた男は、どう見ても魔法陣のようなもので、陣の上には、なんらかの肉の塊が置いてあった。
その上から自分の血を滴り落とす。
「…なんだあれ」
陣の上に手をかざした男は何かを唱えた。
ここからだと声が遠いから何を言ってるかまでは聞き取れなかったが、ばちばちと音と共に魔法陣からツノの生えた悪魔が出てきた。
「!!?」
悪魔だ、悪魔っていたんだ…!
『蓮、逃げるぞ。見つかる』
風伯からの脳内の声に慌ててその場を去る。
バレてないことを祈りながら。
「だはー…なんだあれ怖」
これは報告した方がいいのか…?でも何から説明すればいいんだろ…
…えー、悪魔召喚って報告する内容?マガツヒ関係ないしな…。
家に帰ってから、風伯と先ほどのあれはなんだったのか話しあう。
『まあ、悪魔の召喚だな』
「…悪魔って神居だとどういう扱いなわけ?他の国?だとなんか悪いやつなんでしょ?」
せんべい──という名の供物を神棚に捧げれば二人がひょっこりと姿を表す。火雷が俺の言葉に反応する。
『お、調べたの?蓮』
「まあね!今後関わるだろうと思ってちゃんと調べてる!えらいだろ!」
『えらいえらい!』
火雷からの褒めのなでなでをいただき大変満足な気持ちのまま風伯とも話す。
『…神居での悪魔の扱いは、まあ悪いやつなことに変わりはないな。
性格はどっちにもつかない享楽的なやつが多いけどな』
「悪いやつではない?」
『いや、どっちにも転ぶ。あいつらは自分がいいと思った方につく。あんまり悪魔は信用しない方がいいな』
「……じゃあなんにせよ、絶対放置しちゃダメなやつか」
『そうだな、広大たちあたりに伝えとくのは大事だと思うぞ』
「悪魔って何で判断すんの?ツノ?」
ばり、とせんべいを齧る音が室内に響く。
机に座りながら、風伯に問いかけると、風伯は静かに『あー…』と声を出し何かを考えるように左上を見る。
『うん、まあツノくらいか。ただ基本的に悪魔は自分の姿を隠して生きてるからそうそうわからんな』
「えぇ!?じゃあ見分けつかねえじゃん…」
なんだー、と仰反るようにベッドに倒れ込むが、火雷が、
『一つだけ見分け方があるよ』と笑う。
『人間の中だと、守護者だけがわかるの、良い?』
じんわりと、右手が熱い。
「…なんで」
……嫌な予感がする。
金髪の、教会にいた男が──クラスにいる




