【短編】No.4 雨水市であった災害前の記録
「お、今日の雨は優しいね」
「臼井さんが、守ってくれてるからねえ」
「そういや、今日臼井さんとこの娘さんが誕生日らしいぞ」
あらまぁ、なんて外に出る人たちがそんな会話をする。
今日も雨水市は雨が降る。
「それにしても、量が多くないか…?」
「なあ!おい!あそこにいるの臼井さんじゃないか!!?」
「臼井さん!政府に連絡!」
次の日
「今日の雨もずっと何だか優しいね」
「ね、神様、なんかいいことあったのかな」
「…ねえ、流石におかしくないか?この量。もう溢れてきてるぞ」
「警戒アラート!逃げれるやつは雨水から出ろ!!」
「雨が増えてきた、まずい、みんな逃げろ!」
「ああ…」
臼井さんが、死んだ。
……死んだと聞いた。
雨水市は閉じる、守護者の人に言われる。
「どうしてだ!どうしてこんな目に遭わなきゃいけない!」
理不尽なことに怒りを向けたのに、守護者の人に頭を下げられた。
自分たちの故郷は今や神がいないと。
だから、閉じると。
知っている。
分かっているとも。
この雨が、すい様の優しさだったこと。
この街では、誰もがわかっている。
神がいなくなれば、こうなるって。
すい様は悪くない。
そんなこと、みんなわかってる。
……ただ、いなくなっただけだ。
優しい雨が、街を包んでいた。
守護者の人にもう一度頭を下げられる。
……5年は戻ってこれないらしい。
ぶつける先の怒りがどこにも無くなる。
わかっていた。
……わかっていたはずなのに
それでも、信じられない。
臼井さんが死んでしまったことも。
すい様がいなくなったことも。
……家族が死んでしまったことも。
信じたくない。
しかし、今日の雨は、いつもよりも優しく当たっていた。




