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守護の記録  作者: ツギハギ
雨水大災害編 後半
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第20神 それでも俺たちは生きなければならない

──災害支援の翌日。



学校で授業を話半分で聞きながら、心許ない気持ちを抱えて帰宅し昨日のことを思い出す。


無力なことを知った自分は何かをしないと気が済まなくて、落ち着かない気持ちになる。


雨の守護者の娘さん(まなちゃん)を助けられなかった後悔。

それから、これから先何かできることはないのかという思い。


その落ち着かない気持ちを、島崎さんにRIRINで相談した。



『じゃあ今から神居くる?』

『!助かります‼︎』


「よ、蓮」

「島崎さん!」

「授業中さ、俺も考えてたんだよ。だからちょうどよかった」


奥の方から島崎さんがラフな格好で出てくる。

執務室を介したので、鷺沼さんからは程々に。と言われた。


「────弔いだけしてもいいですか?」


島崎さんが静かに頷く。



島崎さんの案内で雨水まで来た。

昨日の今日なのに、ひどく現実味がなかった。

……現場に、居たのに。


雨水は、相変わらず閉じている。

今日は雨水の外なのに雨が降っていたので、傘をさして雨水を見上げる。


「…どこの地区もこんな感じで門があるんですか?」

「うん、どの地区も管掌が見てるとはいえ、こうして災害級のものばかりだから、封じることができるように地区は全て塀で囲まれてるんだ」


雨の雫の装飾がされた白い壁の奥に、眠る神様の残穢は…静かな余韻を響かせる。


目を閉じる。あの時の無力な自分とお別れして、今度こそ。


島崎さんが、普段の明るい声を落として、静かにまっすぐと俺ではなく、壁を見ながら小さな微笑みを残して言う。



「────灯しに行こうか」







娘さんと、雨の管掌さんのお墓は雨水から少しだけ離れた森の中にあった。


「お墓は森の中なんですね」

「神居で生まれた魂は産夢に還る。1番の直行便は森なんだよ。森は全てと繋がってるから」


森の中は雨が止んでいるので傘を閉じ、たくさんのお墓が並んでいる中心にある2人の眠る石に向かって頭を下げる。


「ほい、蝋燭」


受け取った蝋燭を灯す。

よく見ると、お墓の周りにはいくつも蝋燭が灯されて、お供えとしてミチロ草も置かれていた。


「俺からは白刄の飴」


島崎さんはそう言って飴を置いた。

その横で俺も、細やかながら小さなお菓子を置く。


────親子で食べてほしいことを願って。










「さて、銭湯に行くか」

横で仁王立ちをしていた島崎さんが笑う。俺は、まだ追いついていない感情に困惑する。


「…えっ、銭湯ですか……?」

「こういうしんどい思いした時はまず身体をあっためる方がいいって母さんが言ってた!」


島崎さんは、空元気のように笑った。


「…それに、俺たちは生きてる。

助けられなかった人たちがいるんだってのは、今回俺も知った」

「…」


──ああ、そうだ。


俺たちは生きてるんだ。


「だからこそ、生きてる側なりにやれることってあると俺は思うんだ!」


…この人は、強いなぁ…。俺には、まだそこまで考えられなかった。

立ち直りたい、という気持ちだけ。

どうやって救うのか、どうしたら、この感情を落ち着かせれるのか。それしかなかった。


「すごいですね島崎さん」

「ん?何が?」


「…俺はまだ感情が落ち着かなくて、どうしようって考えてました」

しゃがんだまま見上げていると、

バンっと背中を叩かれた拍子に前に傾く。


「うわっ」


「…俺も最初はそうだったよ」


墓の前で何をしてるんだという感じだが、島崎さんが笑う。


「でも、さっきも言ったけどさ、俺たち生きてんだよ、蓮」


「これからの未来を、守るために俺は守護者になったんだ」


島崎は腰に手を当てて空を眺める。まだ、日が高く青い空が見える森の中は静かだ。


「そのやれることをこれから少しずつ探していけばいいと思う。

何度も守れないことも、守られてることも知ることがあると思うけどさ」


「人って支えられて生きてるもんだと俺は思うし、迷惑かけてなんぼだし、何より、俺たちが笑ってないと、この人が浮かばれないだろ」


ニッといい笑顔を向けられる。




────そう、か。



「…そう、ですかね」

「そうだよ!それに蓮、強くなりたいだろ」


「手の届く範囲を、一緒に増やそうぜ」


手を伸ばされる。


…無邪気に、『俺の神様を俺以外の誰が救うんだ』と誓ったあの日。


実力なんてものはない、理想だけを言葉にして仮契約の時に成功したから、次も。なんて、考えていた。


呑気に構えていたら、守るとはなんなのか、考えさせられた…。


救えた人がいたから、なんだ。


そう思ってしまう自分もいる。


人も救いきれないのに神様を救うだなんて無理な話だ。


でも俺は…。




──俺も。


「俺も、手の届く範囲を…」


ギュッと膝の上で手を握る。

草の匂いが鼻をくすぐり、鳥の囀りが聞こえてきた。



「……守れる人たちを、たくさん守りたいです」

「おう!」


島崎さんの手を掴む。


「そのために、今日俺はお前と弔いにきたんだよ!」


この、街を守った雨の守護者の前で俺は誓う。


守ります。


あなたの愛したこの街も、人々も、神々も。

あなたが守りきれなかった部分を、俺たちがこれからは引き継ぎます。

あなたとまなちゃんのことを、俺はこれから先もずっと忘れません。


……だから、少しの間。


────おやすみなさい。




春夏秋冬温泉街があるという方向に、俺たちは向かうことにした。

これから先の未来を、次は守るために。


次のページからは雨水の断片が見えます。

次の章から、少しだけ世界の見え方が変わるかもしれません。

興味があればぜひ覗いてみてください

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