【短編】No.5 蓮と合流する前の3人娘の記録
──るんちゃんと朝梨ちゃんと一緒に蓮くん達を探しながら先ほどの話を話す。
「──前世、思い出したんだ!?」
「そうなの、完璧!」
「私はまだ思い出せてないんだよねえ」
朝梨ちゃんが、はあ、とため息をつく。そんな焦って思い出さなきゃいけないものでもないと思うけどなぁ。
「…ハチスはわかった?」
「ああ、うん。わかったよ」
るんちゃんの質問の意図に頷く。
あのハチス伝説のハチスは、蓮くんだった。なんで今まで気づかなかったんだろう、と思うくらいそっくりな顔立ちで、認識とはここに来てハチスと蓮くんをイコールで結びつけれない。
「…でも、今世で出会ったのはハチスじゃなくて、ハチスの魂を持ってるだけの神無蓮くんだから」
「!そうねえ、蓮くんは蓮くんだからね」
「あの人と似ても似つかないよ」
くすくすと二人で笑い合う。
朝梨ちゃんだけが首を傾げる。
「えー二人とも誰の話してるのー?」
「これはねえ、思い出さないとわからないやつだ」
「朝梨ちゃんだけが舞い上がっちゃうやつ」
「蓮くんの前世って言ってたよね!?私の夢で探してる人じゃない?って前話してたじゃん」
「むしろなんでそこまではわかるんだか」
「どこまでいっても見つけちゃうんだねえ」
「…誰かはわからないけど惹かれちゃったんだもん」
「初恋の人だ」
「蓮くんの前世が!?」
「うぅ…」
赤くなる朝梨ちゃんを見ながら驚く。私とるんちゃんは顔を見合わせてため息をついた。
「やめときな、あの男は女を泣かせる男だよ」
「そうそう」
「前世の蓮くん何したの!?」
ケラケラとるんちゃんが笑う。
あんなにもモヤモヤとしていた霧が晴れると気持ちがいい。
前世は思い出さなくても良かった。
でも、知りたかった。
断片的に見せられる、自分の最期。
ハチスや、前世のるんちゃんたちと出会う流れや一緒に戦う瞬間が見れるのに、自分の生まれだけは、どうしても思い出せなくて。
マガツヒに感染した妖怪に襲われそうになった塾の帰りに、美夜さんが出てきた。
記憶の中の自分が『守護者』だったから、今世もきっと、あるはずだと思って自分の神様に聞けば『ある』と答えてくれた。
守護者になれば、自ずと前世の自分がどう生まれたのかが知れるんじゃないのか、と。
周りにいる人たちに聞くのは、簡単だった。
でも、それは私が許せなかった。
一人で思い出したかったから。なんでかはわからないけど、絶対に、絶対に思い出したかった。
──思い出せた今、思うのは一つ。
良かった…。
私はあの時、確かにたった一筋の縁を辿って生きていた。
過酷な方の手段を取ってでも、守りたいものが、知りたいものがあった。
私はこれから、救う。
あの人たちのように、存在の意義を肯定してくれた、赤に。
胸に手を当て、深く息を吐く。
突然の私の行動にるんちゃんと朝梨ちゃんが立ち止まって、私を見る。
「ふぅーー…」
吐きながら、笑う。
「…今世で家族がつけた名前にしては偶然の一致だよねえ」
「わかる〜笑お母さん私の前世知ってたん?って思う」
「えっ、私の前世の名前も同じなのかな」
「残念ながら朝梨ちゃんは全く違う名前だね」
「え!?違いは何かあんのかな!?」
るんちゃんが苦笑いを浮かべて朝梨ちゃんを見る。
「いやぁ、無いと思うよ…」
「だよねえ」と笑う朝梨ちゃんにるんちゃんは笑う。
「違いは置いといて、個人的には、名前に思い入れがあるか無いか、が大切かな」
私も一つ頷いて私の答えを伝える。
「誰かに名付けてもらった、とかね」
「えーどっち〜??」
「答えは無限にあると思うよ」
「私は思い入れがあるから派」
「私は名付けてもらったから派かなー!」
「何それ〜」
二人には教えれないけど、名付けてもらうのってすごい特別感あるんだよ。
私は篠倉桃梛。
恩人に名前をもらい、生きる意味を教えてもらった。
これは私の名前だ。前世でも、今世でも、来世でも。
ずっとずっと変わらない、私があの人たちにもらった、私だけの名前。
探していたルーツの答えは確かに赤色を背負っていた。
だから私は今日も、桃梛を名乗る。




