【短編】 No.3 天使たちとライラの記録
「──お帰りなさい、私のかわいい子たち」
【王母〜!!】
天使がわちゃわちゃとライラの周りを飛ぶ。天使たちは160センチほどあった成人の身体を90センチにも満たない小さな身体へと変えてライラの足に抱きついた。
【王母様、今日は記録を読んだよ】
【私は人々の争いを見たわ】
【僕は、人と悪魔を恋人にしてきた!】
ライラに向かって様々な話を伝えるように飛び回る天使たちの声はこんなにも弾んでいるのに、どこか無機質だ。
そんな声たちを全て聞いて、ライラは頷いた。
「観測者には会えた?」
【会えなかった。僕らは彼の方には会えないんでしょう?】
【いつか会えるって言うけど、いつ会えるの?】
「あら、じゃあまだその時じゃないのね」
【記録を見てる僕らよりも上の存在なんて知らないよ】
【ねえ、王母様…】
白くて長い髪の毛の、小さな女の子の天使はライラを見上げる。その首には金色の輪っかが三つ。
「ん?」
【外は、醜いね】
三角のマークが書かれた瞳は、ライラをじっと見つめる。
ライラは一瞬だけ目を伏せ、小さく息をついた。
「……そうねえ…でもねラーファ。あなたが世界を癒せばきっと、世界は平和になるわ」
【もちろん、醜い生き物をちゃんと癒していくよ】
「ふふ、まだまだ子どもねえ」
ラーファを抱き上げたライラが微笑んで抱きしめる。
「いい?人間は醜いからこそ美しいのよ」
【…?わからない…】
「わからなくていいわ、さあ!あなたたちまだまだ天使としての仕事があるはずでしょう?働くわよ〜」
【はーい!】
小さな天使たちは一歩進むごとに身体を大きくして、飛び去っていく。
ライラはラーファを降ろして、小さな背中を押した。
「キューピットと一緒に仕事してらっしゃい」
【わかった、行ってくる!】
真っ白な羽が生えて、空を飛ぶ。一つ一つの羽が舞い、円を描くように落ちていく。
ライラはそんな天使たちの後ろ姿を微笑ましそうに見送った。
天使は今日も空を渡り、世界を巡る。
人々がその姿を知ることはない。
それでも彼らは、今日も変わらず羽ばたいている。




