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守護の記録  作者: ツギハギ
天使編2

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第123神 海の違和感

 青い髪の毛を無造作に括った影森が睨んでくる。俺と影森の間で一瞬、空気が張り詰める。


神無(かみな)蓮…ここで会ったが…ぅわっ」


 影森の頭を眠花さんが掴む。


「影森くん、ダメですよ今日はそのために来たんじゃないでしょう」

「やめろ、頭掴むな!」


 ギャンギャン騒ぐ影森に眠花さんとその隣にいる男の人が頭を下げた。



「うちの影森がすいません」

「ん。え??いぇ?」


 うちの???


 え、と眠花さんを見ると眠花さんと目が合う。


 にっこりと満面の笑みを浮かべられた。

 ひえ、かわいい…うっ、やっぱ俺眠花さんが好きなんだ…。

 いや俺がちょろいだけか!?

 自分のことながらパニックになっていると眠花さんの綺麗な口が開く。



「影森くんとは知り合いなんです、昔からの…なんというか弟みたいな感じでして」

「は!?誰があんたみたいなバ…」


 影森は顔を青ざめて言葉を止める。


「……なんでもないです」

「なんでもないなら結構です」


 花が綻ぶように眠花さんは頬に手を当てて微笑む。視線が勝手に眠花さんを追う。

 …いやいや!そんなに会ったことないのになんでこんなに気持ちが溢れるんだ!!

 …おかしい…これもこの空間がおかしいせいか!?


「うふふ、今日は幻治郎さんにお呼ばれされまして」


 今度は幻治郎さんを見ると瞬きを一つして頷いた。

 何に対しての頷きなんだ?

 気を抜くと自然と眠花さんに視線がいく。それにしても本当に可愛い…綺麗だし、見てて飽きない…。

 浜辺で春雨さんと一緒に楽しそうに笑っている朝梨が目に入る。


「………」


 朝梨のことはぁー!好きだったんだけどぉ!ちがうくってぇ…!

 というか、そんなに会ってもない眠花さんに恋をしてる俺っておかしいのか!?なんでこんなにこの人に惹かれるんだ!?

 胸のときめきが止まらないし!どうなってんだいったい!

 謎の言い訳をしつつ頭を抱える。

 頭を上げて前を向けば、目の前にいる眠花さんは首を傾げる。さらりと流れる黒髪にまた俺は目を追ってしまう。

 そんな俺を見ていた影森が顔を引き攣らせる。


「…お前気持ち悪いぞ」

「んだと!!」

 

 影森が身体を一歩引くようにして理解できないという顔をしてくる。


「お前だって乙女さん追いかけてただろうが」

「はあ!?アレには訳があるんだよ!お前のその百面相と一緒にするな!」

 

 なんでこいつにそんな必死なんだ……。


「…乙女さんが好きなのか…!」

「好きで悪いか」


 …な、なんて堂々としてるんだ……。俺を刺したやつだとは思えない…。


「お前も恋するんだ…」

「これは、恋とかそんな簡単な言葉では治らないんだよ。恋に一喜一憂してるお前と違ってな!」

「なんでお前そんなに俺に当たり強いんだよ!」


 ふんっ、と影森が顔を背けた。眠花さんと隣の男の人は幻治郎さんを見る。幻治郎さんもようやく、というように二人に話しかけた。


「ようこそ、皆さん。来て頂きありがとうございます」


 幻治郎さんが眠花さんに挨拶をする。


「いえいえ、まさか呼んでくださるなんて」

「当然。こういう楽しいことはみんなでやったほうがいいでしょう?」

「幻治郎!私は日光がダメなんですよ、なんで私まで呼んだんですか」


日傘をさしてサングラスをかけた、身長のある男の人がため息をつく。幻治郎さんは男の人の主張をサラリと流した。


「蓮、こいつがヴラド。吸血鬼だ」

「きゅ、きゅきゅ吸血鬼!?」


 悪魔と天使がいたらそうなるか!?そうなるか……。

 一人で納得する。

 うん、確かにそうかも。居てもおかしくない。


「ちなみに、マンドラゴラのシチューを作ったのはこいつ」

「あの政府の食堂にあった弾けるマンドラゴラのシチューを!?」


 思わずヴラドさんとやらを見るとヴラドさんは頷いて笑った。


「マンドラゴラの回復!みなぎる野菜シチューですね」

「えー!あれ作ったのあなたなんですかー!?美味しかったです!」


 マンドラゴラシチューを食べたるんが楽しそうにヴラドさんに近寄る。

 ヴラドさんもおお!と声を上げた。


「そうでしょう、そうでしょう!うんうん、味見はしてなくてもわかります。私の料理は美味い!」

「めちゃくちゃ美味しかったです!」


 うんうん、と嬉しそうに頷くヴラドさんとニコニコのるん。

 なんて平和なんだ。

 日差しに目を向け、なんだかほっこりしてしまう。

 しかしすぐにハッとする。



 ──なんでこんなに平和なんだ…?


「深く考えると疲れますよ、蓮くん」



 眠花さんが俺を見て、目を細めた。普段の笑みよりも、どこか不気味な雰囲気。

 夏休みが異常だと話していた、あのるんですら溶け込み始めた。

 その違和感に、俺はゾワゾワと嫌な感覚が背筋を襲う。

 異常なことを異常だと思えない、そんな雰囲気。





「それじゃあ、私たちは海に向かいますね」


 そう言って、海に向かった眠花さんと無理矢理連れて行かれる影森。

 その近くでビーチバレーをしているアルバートさんや、神様たちがそこには居た。

 綺麗な眠花さんを見て心が踊りそうになるのに、その反面、何か得体の知れない空間を感じて怖くなる。


「…なんなんだよ、この空間」


 砂を踏み歩く音が後ろから聞こえてくる。


「おや、蓮くん、君も気づいていましたか」

 後ずさる俺の後ろで190もあるでかいヴラドさんがサングラスをかけたまま俺を見下ろす。


「へ」

「まあ、蓮は特異だからなぁ」

「え!?」


 反対側から声がして横を向くといつの間にか居た、羽織を肩にかけて腕を組んで、サングラスをかけている幻治郎さん。

「ん???」

「と、いうことはだよ、蓮くん」


 二人とは別の人に肩をポンと叩かれる。

 振り向くとそこには桃梛が両手を腰に当てて真剣な目でこちらを見てくる。


「今回はこのメンバーでどうにかするってわけだ」


 パチンと片目を閉じて、どこか余裕そうに笑う桃梛は俺よりも早く守護者をやっていただけはある。

 ぎらつく夏の日差しの下で、これからまた何かに巻き込まれる事実を察した俺の背筋はやけに冷えていた。

23時にも上げます!

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