第122神 夏だ、海だ!
「悲嘆海岸?」
「そう、神様たちも最近は疲れてるだろう?七不思議、文化祭、妖精にシラジラ!いやぁー、聞いたモノも含めるとかなり怒涛だったぁろう?!」
「そこで、俺は考えたわけさ。そうだ、みんなで遊ぼう!ってね!」
「え、ええ…?」
『いいね!私も遊びたーい!』
『えー、神様も水着着れるならいいわよ、私も水着着たいし』
『わしは仕事があるき、いけんねぇ』
『あら、じゃあ玉の分まで楽しみましょ』
さんせーい!なんて神様たちの声に、俺たちは慌てる。
「いやいや!夏休みはまだまだ先だし」
「そうですよ、だって今六月の下旬…」
桃梛とるんも慌てる。その中でアルバートさんと神様だけが首を傾げた。
「何言ってるんだい。明日から夏休みだよ」
『蓮昨日夏休みだって喜んでたじゃない』
「……?え、そんなはず…」
アルバートさんが俺の背中に腕を回してくる。
「れーん」
やれやれと言いたげな顔に、なんでそんな顔されなきゃないんだ…。と少しの不満を見せるも、アルバートさんは気にも留めない。
「君は疲れてる。そうだろう?幻治郎と広大も連れてくから」
あ、そこは強制なんだ…。
というか、え?俺たち夏休みに入るの?
だってこの間の妖精とシラジラの件はまだ六月だったはずだ。
雨だって降っていたし、七月には入っていない。
なのに、神様とアルバートさんだけがわかっていない。
俺たちだけが頭の先から足先まで冷える感覚を覚える。
「悲嘆海岸は今マガツヒに汚染されてるらしいから、さっさとそこだけ広大に任せちゃって、俺たちは存分に遊ぶんだぞ!」
「えぇ…?」
いいのかそんなことして…と悩んでいるとアルバートさんが、ガッと掴んでくる。
「朝梨の水着とか見たいだろう?」
「えっっ、いや、」
俺には、なんか…こう。
モニョモニョいっているとアルバートさんは片眉をあげてハッとした顔をする。
「なに、もう違う子を好きになったのかい!?」
「ちょちょちょちょ!!しー!しー!」
アルバートさんの口を塞ぐ。
朝梨たちには幸いにも聞こえてないらしく、ホッとしつつアルバートさんを睨む。
「声がでかいんですよ!」
「いやー、君朝梨のこと好きだったじゃないか、どう言う心境だい?」
「俺そこまで顔に出てないでしょ…!」
「顔に出てなくても俺はわかるのさ」
「悪魔めぇ…」
校内の生徒たちも、友人たちも別に夏休みの話なんてしていなかったのに…。
一体、なんだというのだろうか。
結局、俺たち守護者だけ違和感を持ったまま当日を迎えたのだった。
「……で、このメンバーはなんですか」
「俺、広大、蓮、るん、桃梛、朝梨、春雨〜保護者の幻治郎に、色、あと珊瑚と色華ね!後で何人かまた合流するらしいしみんなで遊ぶんだぞー!」
「多い多い、多すぎる」
「幻治郎たちはあとから来るよ。他の子達は俺が連れてきた」
ああ、アルバートさん流移動方法ね…あのシラジラの最後のやつ…。
アルバートさんが歯を見せて笑いながら、腰に手を当てる。金髪に青い目、ムキムキの身体に浮き輪。
「泳げないんですか?」
「泳げるさ。ただやっぱ海といえば浮き輪。海といえばスイカ!」
ドンッとスイカを置き、俺を見たアルバートさんはニヤリと笑う。
「割ろうじゃないか」
「いや早すぎる!まだきたばっかでしょ!」
「れんくーん!」
桃梛の声に振り向くと、女性陣たちがキラキラと輝いていた。
桃梛の豊かな胸が水着におさまっている。
「…おぉ」
水着って、何がどうなってるのかわからないけど、ビキニなのはわかる。あとスカートみたいなヒラヒラしてるやつ。
るんは短パンを履いていて、桃梛はビキニタイプ。朝梨はスカートだった。
春雨さんもビキニタイプだ。
思わず感嘆の声をあげればアルバートさんがニヤァと笑う。
「やっぱ見ちゃうんだ?」
「やめてくださいよもう!」
アルバートさんが朝梨達に呼ばれて向かったのを眺めつつ、ため息をつく。なんか、わちゃわちゃしてきたな…。
目の前に薄緑の髪色に頭の上の方でお団子をしている春雨さんがボールを両手で持ってやってくる。
「蓮くん、後でビーチバレーしよー!」
普段首に巻いてるマフラーは夏だからか外している。その代わり見えている尻尾に目がいく。
「尻尾二つあるんですね!?」
「ん?ああ、そうだよー」
薄緑のたぬきのしっぽがお尻?背中?辺りから出てきている。
「春雨、お前俺に全部の荷物預けやがって…っ!」
「いーじゃん、男の子だし」
「昨今それは関係ないんだからなァ!」
白髪の髪に赤い瞳。メガネをかけた顔立ち。のそのそとクーラーボックスを抱えてサンダルを履いた色さんがいた。
「色さん!」
「よう、蓮一緒に持ってくれ」
「うぐ……これ持ってたんですか…」
ひょいっと渡されたクーラーボックスは確かに重たかった。
色さんの後ろから、ワンピースタイプの桃色の水着を着た色華さんがやってくる。
「あ、蓮。今日は人数が多いね」
「ね、本当に多いですよねぇ…島崎さんは一緒じゃないんですね」
「大地は今日は好きな子と一緒にお勉強らしいよ」
なんだその羨ましい展開…。
すると横から手がニュッと出てくる。
「守護者はみんな身体動かしてるから、筋肉がちゃんとあるね、ね!蓮くん!」
「うぎゃっ!人の腹を叩かんでください!春雨さん!」
ニコニコしながら、逆セクハラをかます春雨さんに自分のお腹を守るように遮る。
アルバートさんがウキウキとした顔で戻ってくる。
車の扉を閉める音共に、崖の方から歩いてくる見覚えのある人。
薄い和服の羽織に、均等にとれた筋肉を曝け出し、頭にサングラスをかけた幻治郎さんがいた。
筋肉…すげえ…果たして今の俺は、いや。
俺もあるよな筋肉…うん、ある。
自分のお腹を触って確認する。
幻治郎さんは目を細めた。
「女の子は華やかだからどんな格好も似合うね」
サラッとそんなことを言いながらパラソルを抱えている幻治郎さん。
なかなかシュールな光景だ…。
なんなら絶対に見ることなかったであろう光景だ…。
「すごい、パラソル似合わないですね」
「俺もそう思う。今回は面倒なことに君たちは巻き込まれてるねえ」
「もう、本当に…」
「悲嘆海岸のやつは広大と珊瑚が今処理しにいったよ」
「えっ…二人で大丈夫なんですか?」
「もちろん、悲嘆海岸くらいなら大丈夫さ」
言葉に違和感を覚えて、首を傾げる。
「…くらいなら?」
フッと目を細めた幻治郎さんはパラソルを砂場に突き立てる。
海辺を眺めた後腰に手を当て、サングラスを目にかけた。
「良いんじゃない、今回は好きにやっても」
「ね」
そう言った幻治郎さんの姿はやけにかっこよかった。
「…好きに…」
朝梨を見る。
いやいや、朝梨のことは確かに好きだったけどぉ!
「そうだ、今日はオールメンバーだよ」
「は?」
これ以上のオールメンバーってどういうことだ?
ゾロゾロと後ろから大人の男女がやってくる。
「まあ、綺麗ですねえ」
「いいね。なかなかだ」
「あ!神無蓮…なんであいつここにいんだよ」
海の煌めきに反射した黒髪の綺麗な女性。
花のような声に真っ先に目がいった。黒のビキニで、金色の金具が胸元についている。
眠花さん…!?
…と。誰だあの高身長…。
サングラスに上下長袖長ズボンの変人スタイルの人は…。
多分男だろうけどそれにしたってだいぶ変人くさい…。
──というか、は?なんで。
「影森…」
なんでこいつがここにいるんだ。




