第116神 上層部へ行こう
────土日は基本的に暇なので、この間幻治郎さんが言っていた、天使を育てた人とやらに会いに、政府に行くことにした。
親には友達の家に行くことを伝えた。
「…あんた最近すごい外に出るわねえ」
「いいじゃん、俺が出ることに問題なくない?」
「無いけど、友達できたのねえ」
「友達いなかったわけじゃないけど!?」
1人とか2人は居たし…と呟きながらご飯を食べて二階に上がる。
床に正座になって座り、幻治郎さんが雨水の時にくれたA4紙を見下ろす。
お母さんも友達と遊ぶし、らんとりんも友達と遊ぶ。
──赤はすぐそこにある。
ふと頭をよぎった言葉を振り払うように、首を振る。
『蓮、大丈夫?』
「大丈夫!」
『行くんだろう』
「…うん」
俺は慣れたように紙に唱えた。
「神居へ」
執務室に着いたが、誰も居ない。珍しいこともあるもんだなぁ。
相変わらずの赤いカーペット、風で揺れる白いカーテン、左右にある大量の本棚を見上げる。
「天使かぁ」
『天使を育ててる人、って言ったら私は一人しか思い浮かばないなぁ』
「むしろ、思い浮かぶのがすげえよ」
『でもなんであいつがお前に会いたいって言うのかが俺たちはわからんな』
「そうなんだ?」
『あんまりお前との関係性はなかったはず…』
「前世も?」
『無かったねえ』
ふーん、なら確かに不思議だなぁ…。
「……運命の女神が生まれてたことは、二人は知ってた?」
『どうして?』
「…予言では、生まれてるって言ってたから…神様なら知ってるのかなって…」
風伯が静かな声で答える。
『知ってたよ』
「…!…そうなんだ、でも、今の今まで誰も…言わなかったじゃん、何で急に…」
俺が守護者になった時も、言われなかった。
『何か、動き出してるのかもしれないな』
…何かって、何が動いてるんだよ…。
風伯の声はどこか静かで、火雷は何も話すことなく、けれどそれは肯定しているような、そんな空気を感じた。
ガチャと執務室の開く音。
鷺沼さんが戻ってきたのかなと振り向くと、以前呪術課の中で出会った緑の髪の女性がいた。
「あ」
「あ!」
ずいっと顔を近づけて満面の笑みを浮かべた、お団子を頭に二つ。髪の毛は流している女の子とその方にトカゲがいた。
「神無蓮くん!」
「あ、はい!」
『花雨』
火雷が名前?を呼ぶ。
「わっわっ、神様の声…!初めまして、私の名前は天日花雨!ふふ!君と話したかったんだぁ」
「あ、これはどうも俺の名前は…知ってるんですっけ…」
「…ん?話したかった?」
「そう!ねえねえ、今はお暇?一緒にお話ししない?」
「それは…構いませんけど」
「じゃあ話そ!何処で話そうかなぁ〜何処の課なら今暇してるかなぁ」
「ええ…?暇してるところにお邪魔するんですか?」
「ふふ、そう!まぁやっぱり呪術課かな」
『花雨、私サイバー課を見てみたいな』
「あー、あそこは忙しいんですよお…あ!政府にしますか!」
「ん?政府?ここじゃなくて?」
「上層部!」
「そここそ暇してるとは思いませんけど……」
ぐいっ、と腕を掴まれる。
「…え!!わ!」
「いこー!」とにこやかに笑う花雨さんに引っ張られる。
「絶対暇してないですって!ねえ!聞いて!」
聞く耳を全く持たない花雨さんに腕を引っ張られながら、上へ上へと登っていく。
「ねえ、絶対暇してませんよ」
「いーや、してる。火鉢さんとか王妃はしてる」
「誰と誰かわかんないですけど絶対してないです、だって上層部なんですよね?」
「でもいつもお団子くれるし、浄化課とかに冷やかしに来てるし」
上層部のイメージが飴ちゃんくれるおばちゃんやおじちゃんになりつつあるのを首を振って消す。
「…とにかく、やっぱやめましょうよ」
「着いたよ〜」
一瞬にして移動した転移装置に乗せられた結果なんかすごく広くていかにもな扉までくる。
「…終わった」
『腹括るしかないな、蓮』
『こんな形で上層部にくる日があるとはねえ』
「ホントだよ」
前にソフィアさんが話していた、上層部か…。
一つの大きく白い扉が目の前にある。この中を開けるのか…ドキドキしながら見上げていると花雨さんが躊躇いなく開けた。
「火蜂さーん、おーひー!暇してますかー?お話ししーましょ!」
「躊躇いがなさすぎる!」
「こら、花雨。入る時はノックをしろとあれほど言っているだろう」
「いいじゃない、久しぶり〜花雨〜お団子いる〜?」
口調が男性のような女性の声とのんびりとした男性の声。花雨さんの後ろから見た上層部の中は広かった。
シャンデリアが一つ、二つ、三つ…?横に広く、縦にも広い。
奥は大きなガラス窓と花柄?のカーテンがかけられている。
床は真っ白で青いカーペットが真っ直ぐと敷かれているその先には台が一つとさらにその後ろにはステンドグラスの窓。
で,その横に小さな談話室のように机とソファがそれぞれ四つずつあった。
そこに、ブロンドの髪の男の人と真っ白な髪の女性がいた。お姫様のような格好をしていることから彼女が王妃なのだと気づく。
ぺこりと頭を下げると二人?は瞠目した。
「おやまあ!神無蓮くん!噂は予々!」
男の人が明るい声で笑う。
「花雨、彼を連れてきたのか!?全く準備も何もしてないぞ」
慌てつつも、席の確保をしてくれる女性がいた。
口調が真逆の男女。男っぽいのに何処か上品な喋り方をする王妃様と、ウキウキとした顔で笑う男の人。
よく見たら、耳が…
「耳、長い…?」
「ん?ああ、ふふ。それも含めてお話ししよう蓮くん。それじゃあ、ようこそ、上層部へー!」
上層部の人間なのか、それとも違うのかはわからないけど花雨さんが満面の笑みを浮かべて両手を広げたのだった。




