表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護の記録  作者: ツギハギ
妖怪シラジラ編 フォルダ1
PR
143/156

【短編】No.2 シラジラ様の記録

「シラジラ様」


 神でもないのに、様をつける人々。

 不思議だ。不思議な生き物達だ。


 性別問わず、話を聞きにくる。


 "予言など、無い"


「では占ってくださいな」


 "……傲慢な"


「良いではありませんか。欲が無ければそれは寂しいものですよ」


 神で言えば祭司のような、巫女のような女がいた。

 他の人間や神秘が来るたびに女はいつも横にいた。

 そうして占ってください、といつも言う。図々しい生き物だ。


 "予言は、聞けるものが限られている"


「ざーんねん、じゃあシラジラ様、お話ししましょう」


 "話すことなどない"


「私があるんです。ほら、花占いとか、年月占いとかあるんですって!私の誕生日は5月6日だからぁ…」


 "当てにならぬ占いだ"


「良いんですよ、人はそれで楽しむんですから」


 "…何が楽しいんだ"


「当たったかも、当たってないかも。そんなかもしれないを聞いたり見たりするのが面白いんですよ。当たってたら凄いなぁと思うだけです」


 "意味のない"


「ふふ、ええ。そうです、我々はこの意味ない占いを見るのが楽しいんですよ。シラジラ様は?いつお生まれに?」


 "…さて、500年ほど前だったか…"


「根の国史の中だと割と最近なんですねえ。いつ頃生まれたとかわかります?」

 "わからない…暑い、季節だった"


「じゃあ勝手に決めちゃお、今日がちょうど7月6日なので、7月6日で!」


 膝に置かれた本を片手にペラペラとページを捲っていく。


「7月6日の人はぁ〜………あっ、…ふふっ」


 "どうした" 


 人は何かの本を膝に置いたままくすくすと笑う。そうしてこちらを見た。


「優れた嘘を見抜ける人、なんですって」


 "…つまらんな"


「まあ!ひどい!…ふふっでも私は面白いと思うけどなぁ」


 女は本を閉じてこちらを向いて、口角をあげ、目を細める。


「また、お話ししましょうね」


 返事を返す前に女は去っていった。

 またある時。祠の横に座っていると女が何かを片手に持ってやってくる。小走りできた女は、目が合うと、そうして嬉しそうに笑う。


「シラジラ様ー!シラジラ様ってお団子とか食べれます?」


 "食べぬ"


「ずっとそこにいるじゃないですか…お腹空かないんですか?神秘でも神様とかは食べるのに」


 "関係ない"


「なるほど…」


 また次の日も来た。


「ならシラジラ様にこれを差し上げます。巫女特製、お守りです!首…どこですか?」


 "…首などない"


「首にかけれるように持ってきたのに…」


 手の上に乗せたお守りを眺める。女の寂しそうな顔を見て、白い毛を動かした。

 ウゴウゴと動いた毛の一本が、手の上にあるお守りを取る。

 受け取ったお守りを胸にしまう。


「そこに仕舞えるんですか!?」


 "喧しい…"


「シラジラ様、顔も見えないんですもの、でもきっと目はありますよね」


 "なぜそう思う"


「視線があったかいんです、あ、今目があった。っていうのがわかるので」


 "…あったかい?"


 何を言っているんだ、この人の子は。女は嬉しそうに目を細める。眩しい、太陽の光のような女は笑みを浮かべた。


「ふふ、私以外の人たちを見る目も、とっても暖かいですよ」


 "わからないな"


「わからなくて結構です。私達だけがそれを知ってるんですから。シラジラ様は、この村の妖怪様ですもの」


 "…人々がいつしか話して生まれただけだろう"


「それでも、それでもあなたがこうしてここにいるだけでも、幸せなんですよ」


 "変な女だ"


「もう、そろそろ名前を覚えてくださいよ…私の名前は、寿(ことぶき) 春、ですよ!また、お話ししましょうね!」



 女はそう言って、去っていった。後ろ姿を眺める。春のような薄い桃色の長い髪とその身体が風に煽られて、足元がおぼつかなくなっている。1人で愉快な女だ。




 何年も、何十年も、何千年もそこに居た。

 雪が降る。日差しが熱くなる。木枯らしが揺れる。花が咲く。


 女が来ることは一度としてなかった。

 女の未来が視えていた。


 生き物には皆、縁とオーラがある。色がついた、糸のような縁。真っ黒なオーラと真っ黒な糸は、どちらも死を表す。

 あの一瞬、見えた予言で、女は人に殺されて命を落とす。


 知っていた。わかっていた。


 人は呆気なく命を落とす。


 ──予言が降ってくる。神が言った。


『運命の女神は生まれ変わっている』


 …行かねば。


 西城学園に伝えなければならない者たちがいる。

 動くために起き上がる。覆われた家の中から見えた、女が座っていた席を、眺める。


 ────寂しいなぁ。





 行き道で、感染した神秘に触れてしまったらしい。

 予言が、狂う。


 ああ、まずい。


 ダメだ。


 これだけは。

 伝えなければならない。

 黒い鳥を飛ばす。


 人々が口に出し始めた。


 もうすぐだ。私に触れる者がいる、お前はダメだ。触れるな。



 ああ、お前だ。


 青の目、黒の髪……お前だ。


 あと1人、居る。すぐ近くにいる。


 お前………あなた、は。









 どうしてここにいるのですか。


 ああ、でもあなたにも伝えなければならない。


 教えます。全てを。

 詳しく教えれたらよかったのに。




『────赤はすぐそこにある』


 感染してしまう、予言が崩れる。まだ伝えたいことがあった。

 まだ、まだなんだ。まだ後半の予言がある。


 ああ、わからない。

 運命は壊れる、運命は消える、運命は残る。残る?残らない。わからない、赤が白に、青が黒に。


 "白は黒に歪む 黒はそこにあった"


 ああ、ブレる。伝えなければ。伝えなければ。伝えなければ!!!!!





 "あお、あお、あ……"



 伝えた。


 伝えれた…。


 伝え切った。


 ああ、予言は完成した。



 世界が、崩れる…。


 思考がほどける。


 白も黒も。


 赤も青も。


 もう分からない。


 ……それでも。


 人々よ。


 私の予言を聞きなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ