【短編】No.4 戦闘課のその後の記録
本編の断片です
「どっはぁぁあー!つかれたぁぁ!」
戦闘課にあるソファに身体を投げるように立夏が座る。その目の前で小梅が腰に両手を当てて、お母さんのように怒った。
「立夏、足を広げて座らないの」
「いいじゃーん、僕男の子なんだし」
「見た目は美少女だからなぁ…」
緋色は立夏の姿を観察するように視線を向けた。短く整っている水色の髪に、赤くて長いリボンを右の髪の毛に括っている。とはいえ顔だけは美少女。服装は完全に男の子に見えなくもないのがずるいところだ。
「蓮くんたちはきっとお前を女の子だと思っただろうなぁ」
「振る舞いだけは女の子になれるから潜入捜査もお手のものだよ!」
「知ってる〜いつもありがとうな立夏」
わしゃわしゃと頭を撫でれば犬のように嬉しそうに笑う。犬だったら尻尾をぶん回しているだろう。
「…隊長〜戦闘課のこの部屋もうちょい綺麗にしません?」
「ツバキ班の部屋だけいつも汚いって言われるのも嫌なんですよぉ〜!他の班は綺麗なのに!」
妖精に殺されかけたのにそれでも元気になった赤道の叫びを右から左に流しながら緋色は腰に手を当てて部屋を見渡した。
広い板張りの執務室。黒っぽい木の柱。壁の上半分は白い漆喰で、天井は高い。その天井近くに歴代戦闘課の旗や部隊章。
隊員の机が並んでるけど、生活感はなく仕事場らしい無骨な空間だ。
「ほらもう、この書類とか…」
机の上に広げられている書類は赤道に投げた事務の書類だ。緋色は事務的なことは苦手なので小梅や赤道に投げがちだった。とはいえ隊長は緋色なので自分の机の上に広げられた書類は消えないわけで…。
「うーーん、わかるけどなぁ…」
「地図とか任務札も多いよねえ」
立夏はソファから立ち上がり、床に落ちている任務札と地図を手に取る。
立夏から視線を逸らし右の壁を見ると、巨大な神居全域図と任務予定を書いた黒板。地図には神秘の出現地点に色付きの札が刺されてる。
執務室の中央には大きな作戦卓がドン、と置いてあり、地図や立体映像を展開されている。
「武器の手入れもしないとなぁ」
最近任務ばかりで疎かになりつつあった自前の武器以外の手入れを思い出して左の壁にある扉を見る。あの中には大量の武器がある、武器庫だ。自前の武器は隊員それぞれの武器棚がある。
「ちなみに、本当に他の班は綺麗なのか?」
「前同期のところ行ったら綺麗でしたよ、紫陽花班とか」
「あそこは陽動だろー、うちは前衛だから」
「関係ないでしょー!任務は!」
「そうですよ、特に汚いのは隊長の机の上なんですから書類を整理してください」
「くそ!小梅も敵か!」
赤道と小梅は綺麗好きで、2人の机の上は整頓されている。
「今日こそは逃しませんよ隊長、妖精任務は終わったんです、当分我々が出動することはありませんよ」
「わ、わかんないだろー?暴れてる神秘がいるかも…」
「神秘が暴れること自体滅多にないのをお忘れですか?」
「ぐぅ…」
「はい!机に向かう!鍛錬だー!って鍛錬場に向かうの禁止!」
「いやだぁぁー!」
赤道と小梅の両方から肩を抑えられて執務室の机に向き合わされる。立夏がそれはそれは可愛らしい笑みを浮かべて緋色の机の前に立つ。
「これで逃げれないね、隊長♡」
隊員を雑に扱えない緋色は泣く泣く書類を手にしたのだった。




