【短編】No.2 浄化課の日常の記録
浄化課の中は白く、神聖な空気が流れている。
その中でも特に、泉の周りは清廉としており妖精の羽の音だけが響いている。
パシャン。
水の音。
薄紫の髪に長い狐のような耳、尻尾はふわふわの猫のような獣人が一人書類を抱えて、青い帽子の男のところまで来る。
「白藍さーん、これどうしますか?」
「それは、こっちに…こら、女の子がはしたない」
「…うぅ、失礼しました…」
ふわふわの尻尾で書類を持とうとして、白藍に怒られる。
顔を上げた白藍が、何やら笑みを浮かべた。
「…おや、今日は珍しいお客さんだ」
「ん?誰か来るんですか?」
問われた白藍が笑う。
「…ああ特級ものだよ」
「特級もの?」
「千草は知らないかもね」
「白藍〜、神無蓮がこの後来るからあんた浄化課の案内してあげて〜」
あれが!?というように指を指す後輩に首を振る。
「鴇羽さんは違うよ、アレはうちの彼女」
「ばっ!あんたねえ、そういうことを気軽にいうもんじゃ無いのよ、わかる?」
「かわいいよねえ」
「聞いてる?人の話!」
千草の長い耳がぴこぴこと動き、視線があきれた目をしだす。
「なぁんだ、白藍さんが言う特級の人じゃ無いんですねえ」
「特級?もしかして蓮のこと?」
「そろそろ来るとは思ってました」
白藍の言葉に鴇羽は帽子を見て白藍の黒い布を引っ張る。
「わ、ちょ、ちょっと鴇羽さん!」
「あんたの目のおかげでわかったのね?」
「いや、そうですけど引っ張らないで」
「そんなに綺麗なのに隠すのもったいないわねえ」
うんうんと同意をするように頷いた千草もうっとりした声で笑う。
「ね、本当に綺麗〜」
「ダイヤモンドみたいよねえ」
「人の目を宝石に例えないで。貴方が言うと洒落にならない…そのうち研究されそうだ」
引っ張られた手を離させて布を整える。
「大変ね、なんでも見通せちゃう天眼って」
「…まあ、生まれつきなので慣れましたよ」
「ねえねえ、日本ってどんなところなんですか?」
ふわふわの尻尾を揺らして、キラキラとした目で輝かせた千草に白藍は悩むような仕草を取る。
「そうだなぁ…俺がいたのは東京なんだけど…みんな、どこか焦ってるような、忙しそうな雰囲気を感じたよ」
「忙しそう?」
「生きることに必死、って感じかな」
「えー、なんかつまらなさそうですねえ」
「そんなことないよ、面白いことも、楽しかったこともたくさんあった。でも…俺のこの目には、少し、窮屈だった。それだけだよ」
「よくここに来れたわね。隠り世と現界じゃ世界の境界が違うでしょ」
「視える人限定で出てる飛行機にたまたま案内されまして…」
「へえ!それで神居に?」
「付き合ってるのに今更聞いてるんですか?」
「出身なんて興味もなかったもの。でもいいわね、ふふ楽しい」
「それならよかった。まあ、はい。それで神居に来たんですよ」
ふーん、と言いつつも嬉しそうに笑顔を向けた鴇羽は、白藍に問う。
「で?どうなの?今は楽しいわけ?」
「とても居心地が良くて、面白いですよ」
「よかったですねえ白藍さん」
千草の笑顔に、白藍も笑みを深めた。
「さあ、千草は私と一緒に産夢の枝の解析よ」
「産夢の枝ぁ!?なんつーものを…!」
「がんばれ、千草」
「私が古代のものを解析できるからって!みんなしてー!」
ぽこぽこと怒る千草に笑う。
「行ってらっしゃ〜い」
引きずられていく千草と引き摺る鴇羽を見送る。
うにゃうにゃと何かを言っている千草は次第に諦めて鴇羽にされるがままだ。
「…摘まれる猫ちゃんだ」
さてはて、今日のお客さんはそろそろ来る頃かなぁ…。




