【短編】No.1 呪術課の日常風景の記録
バサバサ…。
紙の落ちる音ともにため息を吐く。
【ゲハハハハ】
呪術課にある、呪物【笑う冷蔵庫】が人の紙を落とした姿を見て笑ってくる。
「仕方ないだろー、【イル】〜、お前本当に…」
イルのせいで紙の束を落としてしまった。この紙は呪物の整理をしていたものだったのだが、1からやり直しだ。
「琥珀さーん、新人が触るなっていったコップ触っちゃったんで浄化課行ってきまーす」
「はいはーい」
カタカタ、と机の上に置いてあるライトが動く。台座に貼ってある札を物ともせずにどこかへと向かおうとするのを掴み上げてライト部分に一枚貼ればぴたりと動かなくなった。
「…こいつもそろそろ収容かな」
ビクッとライトが反応し、チカチカと光ったかと思えば、ライトの光が当たっていたところが燃えだす。
「こらこら、嫌なら大人しくここにいなさい」
どこかしょんぼりした様子のライトを横目にイルを抱き上げる。
もうそれはもう全力で尻尾を立てている、今日は猫の姿なのだ。
事務所を出ると呪術課の中だ。そこかしこにある札をためらいなく踏みしめながら、大の猫好きにイルを手渡す。
「はぁあん!!かわいいーー!」
崩れ落ちる職員を置いて、今日の呪物記録を確認する。
「…こりゃまた多いな」
「こら、イル!ダメでしょそんなとこ登ったら!はあ?だめだめ、あ!琥珀さんのところ逃げないの!」
ワッと先ほどの職員が怒る声。とともに、こちらに駆け寄ってくる猫ことイルが足に登ってくる。
「イル教育指導の源さん…あのイルに向かって怒るとは」
職員同士の話を耳に入れる。
「流石すぎる…怖くねえのかな?だって認識したら終わりじゃん」
「源さんはイルを猫以外あり得ないっていう部類の猫好きだからな…多分ないんだろうなぁ、犬が人になるっていう発想が」
「マニュアル知らないんすか?」
「いや、知ってるよ。見せた。あの人なんて言ったと思う?」
「…え、なんだろう」
「『私この子を猫にします』って言ってたんだ」
「します…?」
「自分が猫だと認識していることでイルを猫に改造しようとしてる狂人だ」
「人の方が怖いオチ!!」
何やらギャグオチだった。
イルの中身は割とアホの子なので怖がる必要はないと俺は思うよ。そんな密かな声が届くと思ってないので何も言わないこととする。
「琥珀さーん」
近寄ってきた新人が疲弊した顔でため息をつく。
「【片翼のサル】がバナナをよこせと騒いでまして」
「はぁ…またか」
呪物名【片翼のサル】
何匹も殺したサルと、翼の生えた鳥を悪魔的に合体させて生み出したモノ。サルの憎悪が集合し、呪いとなった。A級だ。
肌に触れられるとそこから羽が生えるというモノで、最後は体全体が羽になって死ぬ。
「神秘ってのは理不尽なことが多いよなあ」
「さーる、バナナ食べたろ朝」
緑の目が檻の向こうでじっと様子を伺うように見つめてくる。
わかってるわかってる。
「食べ足りないのはわかったけどまだ早い」
【ギィぃー!!!】
サルに背中を向けた次の瞬間、檻の向こうから1秒にも満たない速さで伸ばされる手。
バチン!
強く鳴り響き手を押さえながら悶えるサル。
「この檻からは出れないから安心して」
「…サイバー課ですか?これも」
「そう。ほーら、お前たち今日もガンガンやるよー」
声を上げて伝えれば、呪術課のみんなが返事する。いくつか呪物からも返事が返って来たが、無視だ無視。
さあ、今日は何が起こるかな。
そう思っていたら呪物を抱えた神無蓮くんが来た。
特級呪物ものの話だったなこれは。




