表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護の記録  作者: ツギハギ
第二幕 神居政府編 前半
PR
108/151

第88神 呪物の所在

 バン!


 扉の音ともにピンクのショート髪の女性が何かを手にして入ってくる。


「琥珀ー!原初の龍の手よ〜」


 ギョッと全員の目が点になってしまう。

 その瞬間、空気が張り詰める。

 特級なんて…と、喋っていた職員たちも静かになる。

 特級とよく関わっているのか、琥珀さんはおおー!と歓声を上げた。


「おわ、ちょうど話してたところですよ。あ、蓮くんたち〜これこれ〜」


「家で見つけてきた物のテンションで文化祭で使用されたらしい龍の手を振るのはやめてください!!」


 思わず突っ込む俺と固まる朝梨たちに、ピンクの女性が琥珀さんを見る。


「なに、蓮って、守護課の蓮?あらすごい有名人じゃない」

「ねえ!俺何にそんな有名なんですか!?」

「さっきから蓮くん、色んなところで言われるね…」

「本当に!なんなんだよぉ〜」


 ピンクのショート髪の女性は目を見開き驚いた表情をしたかと思えば、琥珀さんに何か耳打ちをしだす。


 …なんなんだろう…??




「…あの子、知らないの?自分のこと」

「幻治郎さんから、この龍に前世の自分が記憶を消すことを代償に世界を戻したと」

「…ああ、だからか」

 ヒソヒソと二人が話しているが全く話が聞こえない。

 首を傾げる俺に、女性は近寄って笑いながら手を差し出される。


「初めまして、私は鴇羽(ときは)。これからも君たち守護者とは仲良くすると思うから覚えておいてほしいわ」

「…あ、俺は…蓮です…」

 握手を返すと女性にしては少し強い力で握られた後、桃梛たちにも挨拶を交わして手を握った。

 まるで、存在を確かめるように。

 …先ほどのイルの後だと全てがもう怖く感じるが、呪術課にとっては当たり前の日常なのだろう。


 龍の手を見る、アレが龍の手…見覚えがないはずなのに、なんでこんなに既視感があるんだ…。

 文化祭はずっと寝てたから、龍の手を見てなかったはずなのに。

 思わず、口に出た。


「…それは、どうなるんですか?」

「これは特級に収容されるのよ。ちゃんと龍からの許可は得てるわ」

「喋るんですか!?」

「そうよ。あと産夢(さんむ)の枝」


 はい、と渡された琥珀さんが悲鳴をあげる。


「ぎゃぁぁあ!!なんてもの手渡してんですか鴇羽さん!!産夢(さんむ)!?産夢(さんむ)って言いました!?」

「言ったわよ、私も幻治郎さんにソレもらった時おんなじ反応したわ」

産夢(さんむ)って、輪廻機構の…」


 るんが聞くと鴇羽さんが答えてくれる。

 琥珀さんはその後ろで他の職員に渡して、他の職員たちもまた、悲鳴をあげていた。黒い服の職員たち、しかも大人がビビるほどの代物だということに俺たちはいまいち実感が湧かない。



「本来、産夢(さんむ)って真ん中に島はあるし、上から見れるんだけどね。私たちには霧がかかってるように見えてるの。だから、私たち神居の人間も誰も見たことがないし、入ったこともないのよ」

「えっ、そうなんですね」

「ええ、だから本当に産夢(さんむ)ってあったんだなぁって。

 小さい頃に、死んだ人は空にいる。って言ってるの聞いたことない?」

「おじいちゃんが亡くなった時に言われました」


 桃梛(ももな)の言葉に、優しい笑みになった、鴇羽さんは続ける。


「私たち神居の人間は、みんな輪廻に、産夢(さんむ)に還るんだよって言われるの。

 神居で死んだ人間は産夢(さんむ)に還るから、絶対に幽霊として出てこないの。会いたければ迷いの森に行きなさい。って言われるくらい、おとぎ話みたいなものだと思ってたのよ」

「…それが、実在してた」


 幻だと思っていた、夢物語だと思っていたものが本物だった。それが彼女たち呪術課にとっては驚くものだったという。


「…こんなに呪物に囲まれてるのに、産夢(さんむ)は夢見たいな話だったんですね…」


 朝梨(あさり)の言葉に、鴇羽さんが笑う。 


「…私、自分が何度も転生してるなんて感覚ないのよね。前世とか全然知らないし、でも呪物たちや神様から見たら転生してる同じ魂らしいの。ふふ…実感なんて湧かないわよ、だって私たちの目の前に産夢(さんむ)が現れたことなんて一度もないもの」


「…一度もないんですか?」

「ええ、無いわ。誰も見たことがない、不思議な島。中がどんなことになってるのかなんて知らない、でも。実在してた。そりゃぁそうよね、私たちが神様はいるって言ってたら神様が生まれるんだもの。


 産夢(さんむ)はあると思って生きてたんだから、存在もするわよねえ」


 産夢(さんむ)の枝で戯れていた琥珀さんがひょっこりと戻って、会話に混ざってくる。


「ですねぇ、俺も産夢(さんむ)は当然あるものだと思ってました。でも枝を見るとうわ、本当にあったんだ!!っていう実感がね、沸きますねえ」

「本当にねえ」


 じゃあ、その枝が今ここにあるのはかなり歴史的にもとんでもないことなのではないのか?

 俺たちはその事実に衝撃を受ける。神居の人間ですら、その反応なのに神無の人間である俺たちにとってはおとぎ話の話だ。

「…転生した記憶はないんですか?」

 るんが、気になっていたのかその事を聞くと鴇羽さんと琥珀さんはきょとんとした顔の後に笑う。

「全く!」

「むしろ、前世の記憶がある守護者たちが特殊なのよ〜、あんたたち本当に特別な人間なんだからね」

「そうそう、俺たち魂は一緒だけど姿形は毎回違うらしいから、全く変わらない守護者ってすごいんだよ」

「…なんかとんでもないこと聞かされてる気がする…?」


 桃梛(ももな)まで首を傾げ始めた。情報がコロコロ増えて俺たちはすでにパンクしそうだ。


「というか、幻治郎さんが言うなら間違い無いわよねえ、だってあの人、昔から産夢(さんむ)に行ってるって言ってたもの」

「じゃあ、枝を折ったのは、幻治郎さん?」

「まさか!あの人ほどこの世界の秩序を壊すことを許さない人間はいないわよ。あの人が枝を折るとは思わない。多分違うやつね」

「幻治郎さんが何かやるとしても、せいぜい…そうねえ、この政府内の洗い直しくらいじゃ無い?」



「ああ、世界そのものには干渉しないって感じですよねあの人」

「家族にしか興味ないからね、良いところよね…本当にかっこいい」

「鴇羽さん、人妻ならぬ人夫だよその人」


 琥珀さんに言われ、鴇羽さんは琥珀さんをしばく。


「わかってるわよ、あほ!とりあえずそれ収容するのと…ちょっと研究するわよー!

 せっっかく産夢(さんむ)そのものがここにあるなら調べないと損じゃない!」


 鴇羽さんがウッキウキで中に入っていく。

 琥珀さんも、確かになぁと言った後、俺の手にある人形を指差す。


「あ、その人形一応浄化課に持ってって浄化してもらってね。呪いは解いたから、よろしく〜!」


 二人共もしかしたら研究家気質なのかもしれない、ということと幻治郎さんへの信頼がとても大きく、この政府内の幻治郎さんの立場が凄いものなのだと知った。


「…じゃあ、浄化課?に行くか…?」


 3人を見ると朝梨が手を挙げる。


「ごめん、私行きたいところあるから行ってきても良い?」

「いいよ、いってら!」

「ありがとう!いってくる!」

 たたっ、と朝梨(あさり)が呪術課を出てどこかへと向かった。

「…どこ行くんだろうなぁ」

「さっきの、小雪さん?とかの話なんじゃない?なんか反応してたし」

「かもなぁ」

 桃梛とるんと話しつつ、浄化課を目指す。

「ソフィアさん連れてってもらってもいいですか?」

『もちろん、さあ!こっちですよ〜』

 俺たちは、こうして神居政府探検を始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ