屋敷にて
時間が経ち、また、屋敷は静けさに包まれていた。
コンコン
しかし、そんな静けさが長く続くはずもなく、突如として聞こえたノックの音により、かき消された。
ここの主人であるお方は、今は用事で出かけていて不在。だが、たとえ主人が居なくとも、ここに来るということは客人である可能性が大いにある。その為、多少なりとも顔を出し、話し、もてなす必要がある。
門番に連れられやってきたのは、近くのポツンと佇む一軒家に住む、ルナーズ・テレナ様。
しかし、確かテレナ様は貧困民のはずでしたが、どうしたのでょうか。
すると、今にも泣きそうな顔で訴えた。
「娘を……娘のフィアを知りませんか?」
あぁ、なるほど、そうでした。この方はハート様の産み人でした。
「安心してください。テレナ様、フィア様はちゃんと居ります。今は不在ですが。良ければですが、お話をお聞かせ願えないでしょうか。その髪色についても」
何故なら、テレナ様の髪色はフィア様と同じ銀髪。確かにただの親子ならば何も疑問は無い。しかし、フィア様は、転生をなさったのだ。転生は普通、産み親と同色であることは少ない。つまり、同じ髪色だということは、滅多にない。それも、奴隷民となれば尚更のこと。
「付いてきてくださいこちらです」
「はい」
未だ、落ち着かないほど静かな廊下を渡り、応接室へと案内した。
応接室にある、向かい合っているソファーに座らせ、自分も反対側に座った。
「あ、あの……娘は一体どこにいるのですか?」
先と同様に聞く、この者へ私は答える義務は無い。が、その事を話すべきだろう。
「全て、お話し致します。ご安心ください。……まず、旧シーク・ハート・バナー様、そして、現ルナーズ・フィア様は今から約500年前に魔王が率いる魔王軍、天をすべる古龍族を壊滅させた、勇者様です。」
テレナ様は驚きを隠し切れずに、手で口を覆っていた。
「シーク・ハート・バナー……勇者にして人類にとって最大の天敵と呼ばれた最恐の英雄。昔に歴史で習った程度の過去の人。」
その認識はやはりあったようだ。
「はい。しかし、実際は人類、ましてや魔王さえも敵に回そうとはしていませんでした。そうです。あのお方は強くなることしか頭にはありませんでした。しかし、この転生後はそれ以外を求めています。」
「じゃあ、つまりは私の娘は本当の子ではないのですか?」
「いえ、あなたの子です。なのであなたには今日からこの屋敷に住んでいただきます。」
一瞬、思考が停止していたが、理解が追いつくと、驚きのあまり、声が漏れてしまった。
「奴隷民だとあそこに暮らすのはさぞ大変でしょう。ですので、この屋敷でお暮らし下さい。じきにフィア様もお帰りになりますので。」
テレナ様は、それを聞くと、はい。とだけ答えた。




