試験のはじまり
「奴隷民……だと?」
確か昔に私が廃止したはずの制度だ。今更しているのか。無駄なことを、
「あぁ、そうだ。その紛れも無い銀髪、奴隷民以外の何物でもない、そういや、確かもう1人くらい居たな。」
「奴隷民だかなんだか知らないが、それが何だ。」
奴隷民だろうがなんだろうが、関係ない。同じ人間だからだ。
「あのなぁ、奴隷民は、魔法術と剣が下手くそなんだよ。俺ら上民と違って、お前がいくら奴隷民の中で強かろうと、弱い奴隷民の中でだけなんだよ」
今ので全てわかった。こいつは、弱い相手に対してしか強気で言わない。典型的な弱い奴だな。
「これ以上はやめろ。私だって暇がある訳では無い。言い合いをする為に来たんじゃないからな」
「なんだと?」
今にも殴りかかりそう、という所で前方の左右の扉が開かれた
「それでは、準備が整ったので、番号で進め!」
悔しそうに舌打ちをして、睨みつけながら筆記試験場へ向かって行った。私も実技試験場へと歩いた。
扉をくぐると、外からは分からなかったが、かなりの大きさの中庭があった。すると、全体に大きな声で説明が入った。
「あーあー、よし。えーと、まずこの試験ですが、火水木土の魔法術どれでもいいですから2つ、あの的に撃ち込んでください。その後に剣の試験です。」
すると、またしても後ろから声が聞こえた。
「すみません。そこの銀髪の人、いいですか?」
振り向いてそこに居たのは赤髪の男だった。どこかで見たことがあるような、顔だ。そうだ、思い出した。
「お前、もしかしてカーニャ・ボルパールの子孫か?」
カーニャ・ボルパールは一時期旅を共にした、仲間で、初めて気が合った友人だった。
「はい!そうっすよ。カーニャ・ボルパールはオイラの御先祖様っすね。いやぁ、ボルパール家も有名になったんすかね。」
ニヤニヤしながら楽しそうに話す。カーニャにとても似ている。顔立ちもそっくりだ。
「おまえ、名前はなんだ?」
「はい!ナーク・ボルパールっす!よろしくお願いするっす!」
こいつとは上手くやって行けると、確信した。
「よろしくな。ナーク、私はフィアだ。」
はい!と、笑いかけられた。やはりこういうやつは愛嬌があっていい。
「フィアさん。実技試験ですけど、出来そうすか?じつは僕は自信なくて」
不安そうにモジモジしながら話すナーク。
「さんは付けなくていい。実技くらい自信を持て、男だろう?」
はい……と、少し小さく返事した。かなり、沈んでいるようだ。
「ほら。他のやつのを見ようか、」
最初は離れた位置にある人型の的に目掛けて撃っているようだった。しかし、
「はい。次の方、」
「生命の根源の精霊よ、我に力を貸して給え、アクアヴァンテージ」
長い詠唱とは裏腹にあまり強いとは言えないような、少し強い程度の水砲が噴出されただけだった。
「あれなら楽勝じゃないか。」
そう言いながら振り向くと少し顔が青ざめていた。
「どうしたんだ。具合でも悪いのか?」
聞くと、すぐ返事を返した。
「いえ、そうじゃなくてアレじゃ自分、落ちちゃうかもって思っただけです。」
「はい。次の人どうぞー」
自分の番が来た。定位置につき、構え始める。
「では、適正属性魔法術を、あの的に目掛けて放って下さい」
と、言われたので火の少し強い魔法術のグレイヴスカーレットをイメージする。グレイヴスカーレットは爆散する、炎を数発撃つ技だ。全てを的に当てるよう、狙いを定め、炎を、イメージする。
手から朱の火炎の玉が放たれる。全弾命中、凄まじい爆発が起き、人型の的は木っ端微塵になった。使ったことがなかったから失敗するかもしれなかったが、結果オーライだ。周りの皆んなは口をぽかんと開けたまま、ほとんど放心状態だった。
まあ、後ろにはナークのみだ。大丈夫だろう。
「頑張れよ。ナーク、お前なら出来るだろ?」
ナークは少し間をあけ、
「はい!」
と、ナークのいい返事を聴いて、次の試験場へ向かった




