第17話 動きだす物語 前編
圧倒的だった。抵抗もむなしく、勝負は1分ほどで幕を閉じた。周りには息が出来ないほどの熱気が漂い、朱色の炎が広がっている。容赦なく燃やし尽くしたその朱色は、まるで戦争の跡となっていた。
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ヤオランテは身体的なダメージが酷く、動ける状態ではなかった。空間移動の反動もそうだが、ツヴァイの攻撃によって出来た傷の方が重傷だった。
ヤオランテ「…油断しすぎたかな、。」
目の前には、異臭を放つ紅い水が広がっている。どうやら自分は城と修練場の間にある橋の下に移動したらしく人気が全くない。半ば誰も見つけてくれないと諦めていると、誰かがこちらに近づいてくる音がした。
健太郎「…わっ。なんだ…これ?」
雪夜「…これは…血、、かな?」
ーーこの声は…、雪夜君達か?
雪夜「…ヤオランテさん?」
ヤオランテ「……あぁ、よかった。」
雪夜と健太郎が駆け寄ってくる。
雪夜「何があったんですか?」
ヤオランテ「…フリアは何処だ?」
この場で一番頼りになるのは、フリアの方だ。雪夜の質問よりも先にフリアに状況を説明した方が早いと判断した。
フリア「ここにいますよ。また派手にやられましたね。」
2人の背後から声がする。あまり驚いてないところを見ると、なんとなく状況を察したらしい。
フリア「それで?貴方がここで倒れているということは、。」
ヤオランテ「あぁ、言い訳はあまりしたくないが奴らには魔術が効かない…。いや、奴らというより人型の牛にはだ。奴を捕らえるには、魔術無しの戦闘を得意とする12騎士に頼るしかない。」
フリア「そんなに喋らなくていいですよ。魔術が効かないなら、私達の出番ですし。場所は迷宮の中に行けば分かりますね?」
ヤオランテ「あぁ、…頼む。」
フリア「分かりました。…そうだな。念のために雪夜君と健太郎君のどちらか、ヤオランテさんを城の中へ運んでくれ。もう1人は僕についてきてくれ。もし、本当に勝てない相手なら君達の神造武器の力に頼るかも知れないから。」
健太郎「…ついていくのは、天ノ下先輩でいいですよ。俺は、ヤオランテさんを城の中に運びます。」
雪夜「…分かった。じゃあ、健太郎君。頼んだよ。」
フリアと雪夜は迷宮へ向かい、ヤオランテと健太郎は城へ向かう。
フリア「雪夜君。君に1つだけ質問していいかな?君達の担当を任されてから、ずっと気になっていたことがあるんだ。」
雪夜「なんですか?」
フリア「君は人を殺したときはあるかい?」
唐突な質問に雪夜の足が止まる。あまりにも予想外のことだったらしく、驚いているらしい。
雪夜「…いえ、ないです。」
フリア「…そうか。ならこれだけは言っておく。戦いで敵のことなんて考えるな。ただ敵を殺す。躊躇えば君が死ぬ。これだけを頭に叩き込むんだ。ヤオランテさんは生け捕りを望んでいたけど、そんなことは考えなくていい。敵を生かすことを前提に戦うのは馬鹿がすることだ。」
まだ雪夜は決心がついていないようだったが、
雪夜「…分かりました。できる限り頑張ってみます。」
フリア「うん。それじゃあ、迷宮へ向かおう。」
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晃平「暇だなぁ。」
晃平はヤオランテ達と共に迷宮に来ていたのだが、ヤオランテからの質問攻めで疲れてしまい、途中からタケロスが川まで開通した大穴の中を歩いていた。
ーーあまり出歩くなって言われたけど、やっぱり迷宮ってなると探検したくなるよな。
この前迷宮で迷ったばかりだが、今回は1本道なので大丈夫だろと思い単独行動をしている。良太達は未だに貯水タンクを造る為に城に籠ってるいる上、タケロス達も迷宮探索に出て行ってしまっているので実際暇なのだ。
ーーそろそろ戻ろうかな。大分時間経っただろうし。
この世界に来てから時計を見る機会が恐ろしく減った。朝起きた後と寝る前くらいしか、時計を見ることがなくなった。
ーー腕時計とかも欲しいし、元の世界にはやく帰りたいな。
元の世界に戻る手段など、まだ自分達には無い。ヤオランテはもう戻れないと言っていたけど天ノ下の言う通り、神の奇跡とやらに頼れば可能かも知れない。そんなことを思いつつ来た道を戻っていく。
晃平「あいつら大丈夫かな?」
ふと、ライトとドライのことを思い出す。
ーーヤオランテに捕まったら面倒なことになるだろうな。
ドライの方は解剖でもされるんじゃないか?などと思い、少しだけヤオランテが気持ち悪く感じでしまった。
晃平「あれ?」
戻ってくると、何人かの兵士が道を塞ぐような形で立っているだけでヤオランテの姿はない。ドライの方を捕まえに向かったのだろうか。少しだけ、この後のことについて迷った後、ヤオランテを待つ意味などないと判断して城に帰ろうとする。
ーーん?
前方から誰かが走ってくる。2人いるようだが、暗くて個人までは判別できない。
晃平「天ノ下、先輩?」
走ってきたのは天ノ下といかにもイケメンで強そうな人だった。少し驚いたのは、天ノ下が金色の棒状の物を持っている。見た感じ、槍っぽいがあまりカッコ良くはない。
ーー少しだけ豪華にしようと頑張った初期装備みたいだな。
天ノ下「あれ?山田君?」
天ノ下がこちらに気づいた。話をするのが面倒だなと感じつつも、
晃平「お疲れ様です。どうしたんですか?そんなに息切らして。」
天ノ下が走ってここにくる理由がよく分からず質問してみる。良太以外の図書委員が今、何をしているのかは分かっているつもりだったが、迷宮に天ノ下がいるということが、どうにも理解できない。
雪夜「…いや、なんて言えばいいんだろう。えっと、ヤオランテさんが迷宮内で何かにやられたらしくて。僕とフリアさんは、その何かを倒す為にここに来たんだ。」
晃平「へぇ、ヤオランテが…。」
ヤオランテがやられたと聞き、少しだけ笑ってしまう。あれだけ余裕な態度を取って起きながら、返り討ちにあったと考えると少しだけ面白くなってしまう。
晃平「えっと、じゃあ天ノ下先輩は迷宮内に行くんですか?」
天ノ下「うん、そうなるね。」
その言葉を聞いて少しだけ迷う。捕まったら捕まったで、ライト達は運がなかったと切り捨てられるのだが、まだ捕まっていないのなら、何かしら自分も頑張ってみようかなと思ってしまった。
晃平「…あの、1つだけお願いしてもいいですか?僕も、そこに連れて行ってもらっても良いですか?」
自分らしくない。こんな面倒事に首を突っ込もうとするなど、今までなら考えられない。しかし、
雪夜「僕に言われても困るな。もし一緒に行きたいならフリアさんに頼むしか…、」
フリア「聞こえているよ。…晃平君、だったかな?正直に答えると無理だ。これから私達は戦いをしに行くんだ。君の命を守れる保証はないし、もし君が死ねばヤオランテさんになんて言われるか分からない。」
晃平「ッ、。」
見事なくらいの正論を返され黙ってしまう。確かに自分は自分の身を守る手段など持っていなければ、戦いというものがどういうものなのか、それすらも実感できていない。そんな自分が行ったところで迷惑しか掛けることができない。
晃平「…分かりました。」
晃平の答えを聞くと、フリアと天ノ下は迷宮の中へ走って行ってしまった。晃平は、それを追うことはせず城へ向かって歩きだした。しかし、それは諦めたから仕方なく帰るというわけではなく、今自分が出来ることをするために帰路についたのだ。
蘭丸です。昨日に投稿できずすいません。18話も可能なら今日中に投稿しようと思っています!(50%くらいの確率)
28日、29日はお休みです。
どうも小太郎です!
今日はクリスマスイブ!最高ですね!(特に用事はないけど)。昔はクリスマス楽しみでしたけど小太郎のサンタクロースは数年前から失踪しました。一体どこに行ったのか不思議です。それはさておき、今回の話はなんだか雪夜が活躍しそうな展開ですね!楽しみです。
皆さんもクリスマスイブ楽しんで下さい!
それでは次の話で会いましょう!
ありがとうございました!




