第4話 明石家さんま、20代──モテはじめたあの頃の話。
いらっしゃいませ〜」
「いらっしゃいました〜」
第一声からこれである。 笑いながら入ってきたその男は、さらっと女性テラーの名札に目をやると、
「◯◯さん、これ頼みますワ」 と、自然すぎる関西弁で、光熱費の払込票を差し出した。
女性テラーはドキッとしながら言う。
「光熱費の払い込みですね」
すると彼がすかさず──
「高熱? 熱は高うないで」 ボケた。 当然、彼女はクスッと笑ってしまう。
* * *
ちょうどその頃、僕は外交席で誰かに呼ばれて外へ出た。 そこにいたのは、さっきの彼。
「デイと申します」
「あんた外人?」
「そう、なんでやねん」 と、セルフツッコミ。 もう止まらない。
* * *
僕は口座振替をおすすめすることにした。
「それ、手続きめんどいんちゃうん?」
「いえ、サインするだけで……」
「色紙に?」
「ちゃいます」
「サインは〜……」「バント」
「サインは〜……」「V」
「サインは〜……」「スクイズ!」
「もうええわ(笑)」
ツッコミが追いつかない。 さすがにここで仕切り直す。
「ちゃいますって。用紙に、ですよ」
「……あんた、養子?」
もはや話が進まない。こっちは真面目に説明してるのに。
「どう言うたらわかるんかな……」
「どう聞いたらわかるんかな〜」
彼のノリは、完全にさんまワールドだった。
* * *
帰り際、彼は後ろ手で軽く右手を上げて、
「ありがとございました〜」 と、言いながら去っていった。
その背中を見ながら、僕は思った。
笑いに始まり、笑いに終わる。 その頃からもう、天才の片鱗はあったのだ。
─-彼の名は、明石家さんま。




