第36話〜テレサ節は止まらない〜
昭和に出会った人たち。
その中でも、ひときわ甘く、やわらかく、オルゴールみたいな声で時代を包んだ人——
テレサ・テン。
だからお願い そばに置いてね いまは あなたしか 愛せない
——「時の流れに身をまかせ」より
そばに置いてね? 海苔か!!
いや、蕎麦ちがい。
ズルズルすすってどうすんねん。
お願いやから、薬味程度に扱わんといて。
テレサ、テン、テン、てんこ盛り。何のこっちゃ、と思いながらも 心はすでに三杯目。
彼女の魅力は、あの声。
派手じゃない。叫ばない。
けれど、まっすぐ胸に落ちてくる。
アジアの歌姫は、言葉を越えて、国境を越えて、バラバラだった心を、そっと縫い合わせた。
……はずやのに。
バラが咲いた バラが咲いた
今のアジアは——
何やねん、バラバラやないかい!
咲いてるんか散ってるんか、
どっちやねん昭和。
「オルゴールのような声。シンプルな歌い方。心が癒されて……耳に残ります。」
そう語ったのは小柳ルミ子。
たしかに。派手さはないのに、一度聴けば、ふとした夜に蘇る。
離れて 恋しくて そして会いたくて このまま あなたの胸で暮らしたい
——「愛人」より
あなたの胸で暮らしたい……。
ええやん、ロマンチックやん。
……でも、トイレどうすんねん!!
胸元ワンルーム、風呂なし共同か。
それでも住みたいと思わせるのが、昭和の恋。
少し不便で、少し大げさで、
そして、とことん真面目。
テレサの歌は、
笑ってツッコめるのに、
最後はちゃんと泣かせてくる。
甘くて、切なくて、どこか懐かしい。
昭和は遠くなったけれど、あの声は、まだ耳の奥で鳴っている。
テン、テン、テン……
心に、てんこ盛り。




