第35話「ひこうき雲に、ツッコミをのせて」
小学生のときの同級生が亡くなった。
そんなに親しかったわけでもない。卒業してからは、年賀状の一枚も交わしていない。
それやのに――
胸の奥に、ぽっかり穴があいたみたいな、不思議な喪失感。
何んやろネ。
ふと、頭の中に流れたメロディ。
「空に憧れて 空をかけてゆく あの子の命は ひこうき雲」
……ユーミン。
ユーミンって誰やねん?
ムーミンの親戚か?(ちゃうちゃう)
それとも遊び人?
それは遊民や。(ややこしいわ)
そういえばアイツ、小学生の頃
「将来はパイロットになる!」って、胸を張って言うてたなあ。
パイロット? 万年筆か!
……それはパイロット社や。
教室の窓から見上げた空。
雲ひとつない青空に、白い線がスーッと伸びていくのを「オレが飛ばしてんねん」なんて言うてた、あの頃。
「誰も気づかず ただひとり あの子は昇ってゆく」
ああ、そうか。
アイツは今、ほんまに
新しい場所へ旅立ったんかもしれへん。
小学校の運動場より、ずっと広い空へ。
ユーミンの歌が、じわり、じわりと心に染みてくる。
ムーミンでも遊民でもなく、ちゃんとユーミンで。
アイツよ、そっちの空はどうや。
万年筆ちゃうで、ちゃんと翼で飛んでるか。
ひこうき雲みたいに、細くてもええから、長く、長く、誰かの記憶に残る軌跡を。
合掌。




