第14話 昭和ゴールデン街の奇跡
〜歌の女王とフォークの神様、運命のジョイント!?〜 新宿ゴールデン街──
バラック長屋の酒場が並ぶ、昭和の香りむんむんの街。 作家、映画人、演劇人……ちょっとワケありな大人たちが夜な夜な集う“文化のるつぼ”だ。
そんな一角に、ある夜、とんでもない二人が現れた。
女38歳、男29歳。
年の差9つ。
連れられてきた女は、どこか艶っぽく、しかし堂々たる風格。 男は関西弁をまじえて、どこか飄々としている。
店内のざわめきの中、女が突然、歌い出した。
「重たい雪もいつか溶け出し 日の光〜」 ……
その声が響いた瞬間、空気が変わった。 あの声を知らない者など、昭和にはいなかった。
「う、嘘やろ……? まさか、ひ、ひばりさん!?」 居合わせた客たちは拍手喝采。 こんな小さな酒場で“あの美空ひばり”の生歌が聴けるなんて、夢のようだった。
ひばりはご機嫌だ。
「いいワね! 風の流れに〜」
そう言って、隣の男に向き直る。 「アンタの感性、私にピタリ、肌を突き刺すワ」
男はすかさず関西訛りで返す。 「わしゃ、人刺す蚊か!」
「アンタはヤブ蚊!」 ひばりは大笑いしながら男の髭を撫でた。
そしてウインクひとつ。
「わたしは歌の女王。アンタはフォークの神様。 ジョイントすれば素晴らしい! グッ!」
——そう、その男こそ、フォークの開祖・岡林信康。
ゴールデン街に現れた“歌の女王とフォークの神様”。 二人の笑い声が、昭和の夜を優しく包んでいった——




