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危ういバランス(後編)
広大なパーティルームの中央に進み出た二人。
柚希のドレスが光を反射してきらめく。
しかし彼女の緊張は一目瞭然だ。
(これ以上は無理だ)
そう思ったヨシオが一歩前に出ようとしたその時—
「パパ」
柚希の声が宙に溶けるように消えた。
瞬時に会場全体の空気が変わったのが分かった。
振り返ると、雅也が壇上の中心で立ち上がっていた。
その周りには政府関係者と思われる紳士淑女たちが集い、彼らの視線が一点に集中する。
「あら! 柚希さんじゃない」
「本日はぜひお話しさせていただきたくて」
次々と声をかけられる柚希。
しかし彼女の視線は一点だけに向いていた。
「柚希」
雅也が娘に近づく。
その目は慈愛に満ちていた。
だが……背後に佇むヨシオに対しては別の感情が宿っている。
「紹介しましょう」
雅也が微笑みを浮かべて右手を差し出した。
「うちのヨシオ君です」
「「「…………………」」」
一瞬の静寂の後、会場に疑念のざわめきが広がる。
(なぜこんな場に一般市民が?)
(そもそも何者なのだ?)
(あの伸び放題の髪は明らかに場違いではないか)
耳打ちする声が四方八方に飛ぶ。
「ご紹介ありがとうございます」
ヨシオが努めて穏やかに挨拶する。
しかし周囲の視線は依然として厳しいままだ。




