因果の糸(前編)
「いや、いいよ。そこまでしてもらう義理もないし」
ヨシオの言葉に三人の女子高生が静まり返る。
北条綾乃が眉をひそめ何か言いかけた時だった。
「義理などではありませんわ」
澄んだ声が河川敷に響く。
振り返ると黒塗りのセンチュリーが土手沿いに停車し、開いたドアから降り立つ紫紺のドレスが風になびいている。
月城紫苑の姿だった。
「月城さん!?」
西園寺葵の驚愕した声。
「どうしてここに……」
東雲朱里の呟き。
「‥‥‥」
北条綾乃だけが警戒するように身構える。
「貴方、またお会いしましたね」
「わたくし貴方とお会いしてお話がしたかったのです。今日はお茶会のご用意もしております」
彼女の視線が三人の女子高生に移る。
紫苑の微笑みは宝石のように冷たく光る。その瞳がヨシオを射抜く。
「もちろん西園寺さん、北条さん、東雲さん皆さんの分もご用意していますよ」
最後にヨシオへ視線を戻し、鈴のような声で命じる。
「光圀、用意して下さい」
後方から執事服の老人が粛然と現れ、橋下のコンクリート地面に赤い布を敷いて魔法のような布陣を描き始めた。
白い日傘が立てられ、レース飾りのテーブルクロスが敷かれる。
茶器の金属音が水面に波紋を広げるように空間を満たす。
突然の展開に固まるヨシオ。
西園寺葵が困惑した様子で声をかける。
「あの、突然こんなことをして春野さん大丈夫なのでしょうか?」
「構いませんわ」
紫苑の声は穏やかながら確固たる意思を感じさせる。
「彼はわたくしのお客様なのですから」
東雲朱里が遠慮がちに尋ねる。
「月城さん、これはどういう‥‥‥」
「お話を伺いたくて参りましたの」
紫苑の視線がヨシオを捉える。
「貴方が柚希さんと離れている真相を」




