嵐の予感
**正午・マンション入口**
インターホンが鳴り、「宅配便です」と名乗る。低い声にヨシオが出る。
しかしモニターに映るのは明らかに配達員ではない若い男だった。
(花音の送った写真の奴だ)
咄嗟に通話終了ボタンを押し、「いったい何者だ……」と呟く。
同時にマンションロビーの監視カメラがその男の動きを捉えていた。
「……」
ヨシオがスマホを握りしめる。
既存の「居候」という立場を超越して動かなければならない局面だと本能的に理解した。
(花音の忠告通りなら)
その時、リビングから雅也が現れた。スーツ姿のままテレビニュースに目を凝らしている。
「何か問題でも?」
「いえ……ただの見間違いでした」
「そうか」
雅也がヨシオを見据える。
瞳の奥に読み取れない計算が渦巻いているようだった。
「ところで今夜のパーティーだが」
「はい」
「柚希も同行することになっている」
「え?」
「スポンサー企業のご令嬢も出席するんだ。社交の一環と思ってくれ」
「でもまだ高校生ですよ?」
「彼女もいずれは我が家を担っていく存在だ」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
**夕刻・応接室**
「ヨシオ君」
突如声をかけられ顔を上げると雅也が立っていた。
「今日からしばらく忙しくなる。家事を任せてしまってすまない」
「ああ、俺のことは気にすんな」
「それともう一つ」雅也が一歩近づく。
「柚希のことなんだが……」
「柚希がどうかしたか?」
「最近変な男に絡まれていると聞いてな」
「はぁ?」
「万が一のことがあっては困る」
(花音の言っていた『柚希の安全を考えて』という忠告がここに繋がるのか)
「用心してくれないか」
「ああ……もちろんだ」
「夜七時からパーティーだ。そこで……」
雅也が耳元で囁く。
その内容にヨシオの顔が強張った―――
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