生きる糧
呆気にとられしばらくその場に佇んでいたヨシオだが、気を取り直し集めた空き缶を換金しに郊外のスクラップ屋に歩いて向かう。
途中、柚希からのメッセージ通知があったがとてもではないが目を通す気になれない。
何やら長文のようで読み込みが長い。
(月城さんとの事で誤解があるようだな)
「後できちんと説明しとこう」
と一人呟きながら歩を進める。
ふと紫苑の名刺を見て連絡をするか悩んだ挙句ポケットに入れておく。
今はとにかく空き缶を売り捌くしかない。
郊外にある小さな商店街に到着した。
店主のおじさんはヨシオの事をよく知っていて事情も知っている。
店の中に入ると奥から大きな声で呼ばれた。
「いらっしゃい!ヨシオ君!今日は一杯集まったかい?」
ヨシオが持ってきた空き缶を見て店主が声をあげる。
「おー!すごい量だねぇ!」
感心した様子でヨシオの肩を叩く。
「これ全部あんた一人で拾ってきたのかい?」
「あぁ。まぁな」
少々疲れた声で返事をすると店主が苦笑した。
「相変わらず頑張るねぇ〜」
そう言うと店内の秤を持ってきて重さを測る準備を始めた。
「じゃあ今から量るから少し待っててくれよ」
「お願いします」
秤に載せられた空き缶が軽快な音を立てて重石を押し下げていく。店主の日に焼けた太い指が目盛りを辿る。
「……3.2キロだな」
確認するように復唱すると電卓を取り出し叩く。
「今のアルミ相場だと1キロ210円だから……」
カチャカチャという乾いた音と共に液晶画面が光った。
「はい672円だね」
店主が釣り銭入れから百円玉五枚と五十円玉二枚を取り出しヨシオに差し出す。
「ほらよ」
ヨシオの指が硬貨を受け取る。
ひんやりとした感触が掌中に広がった。
(これで当座は持つか)
財布を覗くと残金2480円+今回入手の672円=3152円。二日前の全財産が3000円だったので微増といったところだ。
「ありがとう」
礼を述べながら俯くヨシオ。
しかし店主の目には見透かされていた。
「どうしたんだい?元気ないね」
鋭い声にぎくりとする。
「ああ……まぁ……色々あってさ」
曖昧な返答に店主の眉毛が吊り上がる。
「例の姪っ子ちゃんと揉めたんじゃないのか?」
核心を突かれ息が詰まる。
「それもあるんだけど……別の件もあって」
ズボンのポケットを探ると名刺の角が爪先に触れた。月城紫苑の名刺だ。
(いつ連絡すればいいんだろう?)
店主は追及せず笑みを浮かべた。
「まぁ詳しくは聞かないよ。でも……」
彼が棚の下段を指差す。
「これ持ってきな」
そこには賞味期限切れ間近のパンや缶詰が山積みになっていた。
「廃棄品だけど捨てるのも勿体なくてね」
ヨシオの目が輝いた。
「いいのか?」
「おぅ。いつも頑張ってるあんたへのサービスさ」
**本日のヨシオの戦利品**
- もらった現金: ¥672-
- 廃棄パン/おにぎりx5個
- 缶詰鯖x2個
- 消費期限ギリギリ牛乳1Lパック
- 使用期限切れインスタントコーヒー2杯分




