生存の糧 (続き)
「よし」
段ボールに収めた戦利品を両手で抱え直しながらヨシオはほくそ笑んだ。
これで少なくとも三食は保ちそうだ。
夕食はもちろん一番消費期限が危うい牛乳を使った特製カフェオレ風液体と惣菜パンを組み合わせるつもりだ。
タンパク質補給のために鯖缶は朝食用に取っておく。贅沢はできないが飢餓ラインは越えられる。
歩きながらポケットの名刺を再確認する。
「月城家総代代理 月城紫苑」——いかにも只者ではない身分を示唆している。
しかし彼女の思惑が掴めない。
(一体俺に何を求めているんだろう?)
柚希に関する情報提供か?あるいは完全に別件か?
**SNSチェック**
スマホを開くと柚希からの未読メッセージが47件も滞留していた。
アイコンをタップして中身を確認する勇気が湧かない。
どうせ「嘘つき」「何を考えているの」といった類いの罵詈雑言に違いない。
(あとでゆっくり返信しよう)
そう決めて一旦アプリを閉じた。
**移動開始**
目的地は近隣スーパーの食品廃棄置き場だ。
閉店後の深夜に従業員が搬出してくる廃棄食材を狙うために今からベストポジションを確保しておく必要がある。
幸い今日の成果で少し余裕ができたので無理はしなくてもいいかもしれない。
(でも本当に大丈夫かな……)
歩道橋での一件以来柚希との関係修復が必要不可欠だということは理解している。
しかし紫苑の存在がそれを阻害している。
本来であれば弟の凛太郎を通じて説明するのが最善策だが今のヨシオには連絡手段がない。
(困ったことになったな)
黄昏時の街路樹が作り出す長い影法師を追いながらヨシオは一つ深い溜息をついた。
生きていくということはこんなにも困難なのだと改めて思い知らされた瞬間だった。




