新たな三角関係
「叔父さん……?」
振り返るとそこには驚愕に目を見開いた柚希が立っていた。
通学途中だったのだろう。セーラー服姿にバッグを担いだまま足が止まっている。
ヨシオの顔から血の気が引いた。
(どうしてここに……?)
咄嗟に弁解しようとするが言葉が出てこない。
一方紫苑は特に動揺する様子もない。
団子を頬張りながら柚希を品定めするような目で見つめる。
「あなた宇津木柚希さんね」
彼女の言葉に柚希が眉をひそめた。
「あなたは誰……ですか?」
「わたくし月城紫苑と申します」
紫苑は礼儀正しくお辞儀をしたが、その目には挑戦的な光が宿っていた。
「この方のお世話をしていますの」
「世話?」
柚希の声に不信感が混じる。
「柚希、違うんだ誤解しないでくれ!」
ようやく声が出たヨシオだったが言い訳すればするほど墓穴を掘りそうな気がした。
「それに」
紫苑が言葉を継ぐ。
「わたくし晩餐会で貴方にお会いしてますよ。お忘れですか?」
その言葉に柚希の瞳孔が拡大した。
記憶の糸が瞬時に結びついた。あの晩餐会での出来事―
「あの時の……!」
震える声で叫ぶ柚希。
紫の髪色と冷徹な美貌がフラッシュバックする。
「なんでこんなところに……!?」
「お二人はお知り合いでしたの?」
紫苑が演技っぽく驚いてみせる。
その仕草が計算されたものだと感じるのはヨシオだけではなかっただろう。
「何?叔父さんに変な事しないでよ!」
柚希の声が硬くなる。明らかに敵愾心を抱いている。
紫苑は初めて本当の笑みを浮かべた。
それは幼い子どもを見る母親のような慈愛と嘲弄が入り混じった複雑なものだった。
「心配なさらなくても」
ゆっくりと立ち上がると優雅に裾を払う。
「この方はわたくしが助力して差し上げます」




