予期せぬ再会
「そ、それいいのか?」
ヨシオの声が裏返った。
堪らず尋ねてしまう。
甘辛なみたらしの匂いが鼻腔をくすぐり、口中に唾液が溢れ出す。
「貴方、今にもヨダレが垂れそうですよ?」
紫苑の冷めた視線が刺さる。
「別に構いません。登校までまだ時間もありますし」
彼女が包み紙を破く音が静かに響く。
「それに……」
袋から取り出した一本をヨシオの方へ差し出しながら付け加えた。
「貴方に興味がある事に変わりはありませんから」
二人並んで歩道橋の欄干に腰かける姿はどこかシュールだった。
制服姿の美少女とボロ雑巾のような中年男。
通行人は遠巻きに不審な目を向けるが、紫苑は通行人の視線など意にも介さない様子だ。
その堂々とした振る舞いはまさに生まれながらの支配階級の風格だった。
(なんか度胸が据わっているというか……)
ヨシオは受け取ったみたらし団子を前に固まってしまう。
高級和菓子店の名品が目の前にあるのに手が伸びない。
「早く召し上がってください」
紫苑の声が急かす。
「このお店の団子は温度変化に敏感なのです。出来立てが最も美味なのです」
言われるままに一口噛むと—
「うまい……!」
外は香ばしく焼かれ内部はもっちりとした食感。濃厚な醤油タレと白胡麻の香ばしさと抹茶のほのかな苦みが甘さを引き立て絶妙に絡み合う。
「でしょう?」紫苑が満足げに頷いた。
「父から頂いた東山庵の限定品です」
二人並んで団子を頬張る姿はあまりに異様だった。
セーラー服の美少女とホームレスの中年男。
通行人の囁き声が風に乗って届く。
(あの娘、気は確かなのか?)
(援助交際の現場じゃないか?)
(警察呼ぶべきかな……)
そんな言葉が耳に入るたびヨシオの身体は縮こまる。
しかしそれが逆に紫苑の気を引いたようだった。
「周りが気になるのですか?」
「ああ……」
「くだらない」彼女の口調が急に冷たくなる。
「他人の評価など価値がないものです」
その時だった。
「叔父さん……?」
振り返るとそこには驚愕に目を見開いた柚希が立っていた。
通学途中だったのだろう。
セーラー服姿にバッグを担いだまま足が止まっている。




