日課と再生 橋上の招待
30分ほど歩道橋の上で行き交う人々をぼーと眺めていると──
「あら貴方、またお会いましたね」
いきなりの声に背筋が凍りついた。
振り返るとそこには鮮やかな紫の髪色が目に飛び込んできた。
「月城……さん?」
セーラー服姿の小柄な少女。
学校指定の白い靴下に黒い革靴。
校章が縫い込まれた上品な鞄を肩に下げている。
「こんなところで何を?」
紫苑の問いかけに言葉に詰まる。
「いやその……仕事みたいなもので」
拾ったばかりの空き缶が入った袋を見せると彼女の眉が僅かに上がった。
「まさかアルミ缶拾いですか?」
蔑むでも同情するでもない純粋な好奇の目が痛い。
「ああ」
「なるほど」
しばらく沈黙が続く。
「貴方、顔色が良くないようですが、朝ご飯はお食べになっているのですか?」
紫苑の澄んだ声が朝の空気に溶けた。
彼女の視線がヨシオの青白い頬に注がれている。
「いや……」
言葉に詰まる。
実際昨夜から何も口にしていない。
しかしプライドが邪魔をして素直に認められなかった。
「もしよければ」
紫苑が学生カバンに手を入れた。
「お団子食べますか?」
取り出されたのは高級和菓子店『京祇園』の紙包み。
三本入りワンパックが朝日を受けて輝いていた。
「みたらし団子です。新作の抹茶きな粉付きなのですが……」
ヨシオの喉仏が上下する。甘い香りが漂うにつれ腹の虫が鳴った。




