華族からの尋問
ヨシオが顔を背けると同時に紫苑の声色が変わった。
「ところで貴方」
突然の質問に心臓が跳ねる。
「宇津木柚希さんとはどういうご関係ですか?」
紫色の瞳が一直線にヨシオを射抜く。
その眼差しは昨日の優雅な振る舞いとは別人のようだ。
まるで獲物を捕らえる蛇のよう。
(なぜ今さら?)
「まぁ、答えたくないならいいです」
突然の態度変化にヨシオが目を見開く。
「わたくしがお聞きしたのは……ただの好奇心に過ぎませんから」
まるで興味を失ったかのように串から団子を離し、一口で頬張る。
その刹那—
「あ、そろそろお迎えが来るので行きますね」
時計をちらりと見る紫苑の背後で、コンビニ入口の自動ドアが開いた。
ガラス越しに漆黒の巨体が見えた。
(センチュリー……!?)
旧型ながら磨き込まれた車体が路上に鎮座している。
運転席から降りてきた燕尾服姿の老紳士が深々とお辞儀をする。
「ではお団子美味しかったですね、また何処かでお会いすると思います」
まるで初対面のような素振りで会釈すると、紫苑は悠然と立ち上がる。その右手には団子の残り一本を竹串ごと持っていた。
「えっ……ちょっと待ってくれ!これはなんだ?何が目的なん……」
ヨシオが伸ばした手をかわすように紫苑が踵を返す。
「お忘れですよ」
持っていたみたらし団子をヨシオに渡す。
受け取ると指がタレでベトベトになってしまった。
老人執事が恭しく差し出した傘を受け取りながら振り返りもせず—
「あなたの答えを楽しみにしております」
エンジン音とともに豪奢な車が走り去る。
残されたヨシオの掌中には竹串と一滴の甘露だけが残された。




