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誘惑の香り
柚希を抱き寄せるヨシオ。
その小さな背中に手を回した瞬間、かすかな息遣いが伝わってきた。
パーティドレス越しに感じる体温。
汗ばんだ肌から漂う少女の匂い──
それは未熟な果実を思わせる清涼感と、香水が混ざり合った複雑な香りだった。
「……っ」
柚希が息を詰める。
彼女の細い肩が微かに震えている。
ヨシオの鼻腔にはかすかなカクテルの匂いも混ざっていた。緊張をほぐす為に飲んだノンアルコールカクテルだろうか。
「大丈夫だ」
低く抑えた声で囁くと、柚希の身体から少しずつ力が抜けていくのがわかる。
彼女の髪からは柑橘系の甘酸っぱい香りが立ち上り、それが汗と混ざって芳醇な余韻を残していた。
(この匂い……)
それは決して嫌なものではなかった。
むしろ、懐かしいような……遠い記憶を呼び覚ます芳香。
かつて工場で汗水流していた頃の記憶だろうか。いや違う。
「おじさん……」
柚希の声は途切れがちだ。
「あんな目に遭うくらいなら……」
「もういい、二度と離さないよ」
ヨシオの言葉が柚希の鼓膜に突き刺さる。
彼女の頬が急速に熱を帯びていくのが感じられた。
「柚希……」
囁きと共にヨシオの顔がゆっくりと近づく。その唇が柚希の潤んだ唇へ—




