影からの糸 続き
「でも先週」
柚希の声が揺れる。
「あの男たち……パパのスキャンダル記事を持ってきて」
ヨシオの眉間に皺が寄った。
雅也にそんな過去があっただなんて初めて聞く。
「脅してきたの?」
「……そう」
柚希が絞り出すように答える。
「『父親が困ったことになる』って」
* * *
**当日の控室**
「やめろ!」
押し倒されかけた柚希が必死に抵抗する。
若者の友人がドアを塞いでいる。
「落ち着けよ。楽しいことするだけさ」
ドレスの襟が乱暴に引きちぎられる感触。
腐敗臭のような吐息が首筋を這う。
(助けて……誰か)
その時だった。
「何をしているんですか?」
鈴を転がすような声と共に控室のドアが開いた。
* * *
「それで月城さんっていう人に助けてもらったわけか」
ヨシオの確認に柚希が小さく頷く。
「あの後……父さんは何も言ってなかったけど」
「言ってなかっただと?」
「うん」柚希の目に涙が溢れる。
「きっと私が我慢すれば良かったんだって思ってる」
ヨシオの拳が机を叩く。
「そんなわけないだろ!」
驚いた柚希が顔を上げた。
そこに映るのは怒りではなく哀しみに満ちたヨシオの顔だった。
「お前の父親は……」
言葉を飲み込む。雅也がどのような判断を下したか想像はついた。
「政治家という仕事がどれほど孤独かわかってるつもりだ」
窓の外では雨音が強くなっていた。
「でもな」
ヨシオが立ち上がり、ソファーに近づく。
「どんな理由があろうと娘を犠牲にする大人になっちゃダメだ」
柚希の肩が震え始める。
堰を切ったように泣き崩れるその姿に、ヨシオはそっと手を伸ばした。
「これからは……俺が守るから」
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