影からの糸
**パーティ会場外**
騒然とする中、紫苑が静かに歩き去る。
「待ってくれ」
ヨシオが思わず呼び止めた。
「助けてくれてありがとう」
「当然のことをしたまでです」
彼女が振り返る。
月光に照らされた紫苑の瞳は宝玉のように澄んでいた。
「華族として……弱き者を守るのが使命ですから」
その言葉を残し、小さな背中は人混みへと消えた。
**帰路の車中**
雨がフロントガラスを叩く。
後部座席に座る柚希は膝の上で組んだ手を固く握りしめていた。
「……話したくないことは言わなくていい」
助手席のヨシオがバックミラー越しに声をかける。柚希が俯いたまま小さく首を振る。
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**雅也邸・リビング**
湿った空気が部屋を満たしていた。
柚希がソファーの端に浅く腰掛け、膝を抱えるように丸くなっている。
ヨシオは少し離れたダイニングチェアに腰掛けていた。
「それで……」
沈黙を破ったのは柚希だった。
顔を上げずに続ける。
「あの男……ずっと私に付きまとってたの」
ぽつり、ぽつりと語り始める。
「最初はただのパパのファンって感じで。でも次第に……」
* * *
**一ヶ月前**
放課後の校門前。
見知らぬ学生グループが待ち構えていた。
「柚希さんですよね?」
リーダー格の青年が一歩前に出る。
整った顔立ちだが目が異様にギラついていた。
「実は僕、昔から雅也先生の大ファンで……」
熱っぽい口調で話しかけてくる。
初めは無視していたが次第に付きまとうようになっていった。




