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第二章レグルス編 6話父親

レグルス王国へ辿り着いたシン達。


だが、かつて明るかったはずの王都は、

悪神教によって変わり果てていた。


操られた兵士達。

支配された城。

そして玉座の間で待ち受けていた仮面の男。


その男の名は、ギュスターヴ。


コウの故郷、シノビの里を滅ぼし、

父・ゲンヤを奪った男だった。


姉を救うために走るヴィーラ。


怒りを燃やすシン。


そして、過去と向き合うコウ。


英雄ではなく、ただ一人の“父親”だった男。


APOLLO 第二章 レグルス編

第6話「父親」


よろしくお願いします!

ドゴォーーン。


激しい音。


舞う土煙。


その先にはーーー

金色と黒髪の少年シン。

漆黒の髪の青年コウ。

赤髪の青年アラン。

淡い青の髪の少年バウス。

レグルスの王女ヴィーラ。


近付いてくるレグルスの兵士達。


兵士「う…うぁぉぉ〜!」


兵士「あぁ…ひ…め…さまぁ…!」


5人は兵士達を見ると怒りをさらにあらわにした。

兵士達は既に事切れていた。


激しい拷問をうけたであろう者

涙を流しながら襲いかかろうとしてくる者

足や腕がない者


コウ「アンデッド系の、おそらく屍魔法だな。」


アラン「死者を自分のコマにしとるっちゅうことかい」


シンは拳を握りしめた。


悪神教…


シンが吠える。


シン「ヴィーラの姉ちゃんーー!助けに来たぞーーー!」


城中に響き渡るシンの声。


その声も、その目も静かな怒りに燃えていた。


襲いかかってくる兵士達


バウスが氷の氷壁を作り兵士達の足止めをする。


兵士「う…うぉお」


兵士「あ”あ”あ”あ”〜」


バウス「眠ってろ。」


兵士達は一瞬で氷漬けになる。


バウス「シン達は先に行け。ここは俺1人で充分だ」


シン「バウス!頼んだ!ヴィーラの姉ちゃんを探すぞ!」


ヴィーラ「バウスさん!お気を付けて!」


コウ「無理するなよ!バウス!」


アラン「3人おったら充分やろ。」


バウス「アラン!お前も行け!俺は心配いらない!」


アラン「ちゃうちゃう!お前が心配で残った訳やない。なんやおもろそうなんがここらにおるな〜思うてな。」


アラン「でてきたらんかい。コソコソと屍操りしよって…お前からは死臭がプンプンするんじゃ」


屍兵士の中からまるで蛹が蝶になるように


ヌルッと出てきた細身の男


サルコス「んっふふふ。初めまして。私はギュスターヴ様の忠実なる部下。左腕のサルコスと申します。」


サルコス「見てくださいよぉ、この子達ぃ

腕が千切れてもぉ、足が潰れてもぉ、

ちゃ〜んと戦うんですよぉ!」


バウス「気色悪い奴だ。」


その瞬間近くにある小屋が突然壊れる。


崩れた小屋の瓦礫の中から大男が現れた。


身長はゆうに3mを超えている。


周りにいた屍の兵士達も巻き添えをくらい倒れた。


サルコス「あらぁガトラスくんお目覚めですか。今日は早いですねぇ〜」


ガトラス「ふぁあ〜よく寝たわ。いやなに。美味そうなガキの匂いがするもんでな。」


アラン「こりゃでけぇやっちゃのう…」


ガトラス「まぁ楽しんでやろうや。俺はギュスターヴの部下。右腕のガトラスだ。」


ガトラスが倒れている兵士を踏みつけながらアランを睨みつける。


アラン「お前…足どけろや…」


ガトラス「はぁ?こいつら死んでんだぜ!何そんな怒ってんだよ!」


アラン「口で言ってもアカン…な。身体に叩き込んだるわ、デカブツ。」


怒りに震えるアラン。


炎が体から湧き上がる。


その姿は仁王像を彷彿とさせる。


ーーーーーー


そしてその頃シン、コウ、ヴィーラは姉のレジュを助けるため城の中にある玉座の間を目指していた。


ヴィーラ「兵士の皆さんが…あんなむごい姿に…もしかしたら姉も既に…」


シン「大丈夫だ!必ず俺らが助ける!」


コウ「……恐らくレジュ王女は無事のはずだ。奴らの目的は国盗りではなく、戦争だからな」


3人に道中襲いかかる屍の兵士。


なるべく破壊しないよう倒しながら進む。


大きな獅子の銅像。


階段を登った先にあるのは3m以上の大扉。


そこを開けた瞬間中にはヴィーラの姉

レジュを踏みつけている男がいた。


半分は悪魔が怒り、半分は天使が微笑んでいるような不気味な仮面を付けた軽薄そうな男。


その男を見た瞬間コウが叫ぶ。


コウ「ギュスターヴ!!!」


沈黙。


玉座の間は静寂につつまれていた。


聞こえるのはギュスターヴがレジュを踏みつける音のみ。


数秒後ため息をついたかと思えばこちらを振り返るギュスターヴ。


ギュスターヴ「あは♪コウくんおひさ〜♪」


ギリッ


コウは本気で怒っていた。

血が滲みでるまで強く握られた拳。

今までに見たことない形相。


ギュスターヴ「ぷぷっ♪その怒った顔!ゲンヤにそっくりだなぁ笑 あれ?今日は一緒じゃないの?笑」


ギュスターヴ「あぁ!忘れてた!僕が殺しちゃったんだぁ♪♪」


コウは咄嗟に掴みかかる。


払い除けるギュスターヴ


ギュスターヴ「昔よりはちょっと強くなったのかな?」


仮面を床に置き、魔力を解放するギュスターヴ


その量はシンが思わず身震いをしてしまう程だった。


強い。ひと目でわかる。


シン(コウ兄やアラン。じぃじや父さんと同じ位の威圧を感じる...それでいて禍々しい。)


コウ「ふぅ、シン。ヴィーラ。2人でレジュ王女を救えるか?」


シン「コウ兄…あいつは」


シンの言葉に被せるようにコウが宣言する。


コウ「あいつは俺が倒す。」


ギュスターヴ「倒す?君が?僕を?」


ギュスターヴは体を捻らせながら笑いこける。


ギュスターヴ「寝言は寝て言えよ。ガキィ。てめぇもゲンヤと同じようにバラバラにしてやるよ」


口元まで裂けるようなニヤリとした表情の中には狂気と混沌が渦巻いていた


レジュ「ヴィ…ヴィーラ…逃げ…て」


ヴィーラ「お姉ちゃん!今助けるから!」


ギュスターヴ「あ♩そうだ♩せっかくだしぃ姉妹で殺しあっちゃおう♩ぅんぅん♩それがいいね♩」


ギュスターヴはおもむろに服のポケットから注射器を取り出すと、それを思い切りレジュ王女の太ももに刺した。


レジュ「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」


声にならない悲痛な叫びが玉座の間に響き渡る。


次の瞬間ーー


レジュがヴィーラに襲いかかる。


ヴィーラ「やめて!お姉ちゃん!!」


ガシッ


間一髪の所でコウがヴィーラを庇う。


レジュ「ア゛ア゛ア゛ア゛!ギギギ!」


ヴィーラ「おねえ…ちゃん…?」


レジュが突然天井を突き破り城の最上階に飛んだ。


コウ「シン!ヴィーラと一緒にレジュ王女を追え!!」


シン「でも…」


コウ「レジュ王女はこいつの魔力入りの注射で一時的に意識を奪われてるだけだ!生きてる!」


ヴィーラ「お姉ちゃんが…」


コウ「国を!姉ちゃんを救うんだろ!!ヴィーラもしっかりしろ!」


泣き崩れるヴィーラがコウの言葉で我に返る


ヴィーラ「ごめんなさい…私どうにかしてました!シン!一緒にお姉ちゃんを止めてください!」


シン「もちろんだ!行くぞヴィーラ!」


シン「コウ兄…絶対勝てよ!!」


コウ「任せとけ!兄ちゃんは最強だ!」


コウにギュスターヴを任せレジュを追いかけるシンとヴィーラ。


コウのその背中は哀愁と怒りに震えていたが誰よりも頼もしかった。


ギュスターヴ「兄ちゃんは最強だ♩ぷぷっ!バカみたい笑 なんで最強なのに里は滅んだの?最強なのにゲンヤお父さんはなんで死んじゃったの?」


ギュスターヴ「僕に勝てなかったからだよねぇ〜♩」


コウ「お前の顔は忘れたことがない。あの時から。」


ギュスターヴ「あのときぃ〜?どのときだっけ?笑」


コウ「俺から…全て奪った日からだ…!」


ギュスターヴは満面の笑みでコウを見つめる。

その狂気に満ちた笑顔はあの日から何も変わっていなかった。


ーーーーー

16年前

シノビの里

コウ4歳


コウ「みてみてー父さま!僕こんなに早く動けるようになったよ!」


ゲンヤ「こら、コウ!あんまり遠くに行くんじゃないぞ!」


この男ゲンヤ・ドウシャ。

シノビの里の長であり、異種大戦ではオウコと共に武勲をあげた1人。

風神の異名を持つ伝説のシノビと言われた男だった。


オウコ「息子さん。随分大きくなったなぁ!ゲンヤさんにそっくりじゃないか!」


ゲンヤ「はっはっは。毎日わんぱくで困っているよ。だが本当に目に入れても痛くないくらい可愛いというのは親になった今、わかる気がする」


オウコ「異種大戦で単独で砦落とした男とは思えねぇくらい穏やかだな」


オウコ「俺んとこも来年には産まれるんだ!今からすげぇー楽しみだ!」


ゲンヤ「オウコは少し子供っぽいところがあるからな。その性格を直さないと産まれてくる子供に笑われてしまうぞ」


オウコ「へいへい。わかってるよ!」


ゲンヤ「オウコ、俺はな。思うんだ。子供の笑顔が世界の全てだと。子供の笑顔を曇らせてはだめだ。」


オウコ「子供は可愛いもんな〜!」


ゲンヤ「だから私は戦争のような負の遺産を未来ある子供に背負わせてはいけない。そう思う。」


オウコ「そうだな。まぁ俺やアンタがいれば大丈夫だろ!用事もすんだし。そろそろ帰るわ!ユキも待ってるしな」


ゲンヤ「あぁ。早く帰ってやれ。奥さんは大事にしろよ」


オウコ「わかってるよ風神さま笑」


シノビの里を去っていくオウコ。

その背中を見送った後、ゲンヤはコウと日が暮れるまで遊んだ。


コウ「ただいまー!母さま!ご飯はなに?!」


シズク「あら。おかえりなさいコウ、あなた。もう泥だらけじゃない〜!」


この女はシズク・ドウシャ

ゲンヤの妻であり、コウの母。

明るく世話好きで、コウとゲンヤ。そして里の皆を愛してやまない女だった。


ゲンヤ「うむ。少しはしゃぎすぎてしまったか」


シズク「コウ。お父さんと修行して強くなるのはいいけど…強くなっても優しさがなきゃ意味がないのよ?」


コウ「優しさ?父さまみたいな?!」


ゲンヤ「まだコウにはわからんだろう」


シズク「そうね。はい!泥だらけの人はご飯抜きだぞー!先に二人でお風呂にはいっておいで」


コウ「はぁーーい!父さま!早く行こう!」


ゲンヤ「あぁ。今行くよ。」


3人は幸せだった。

異種大戦で数々の武勲をあげようと、どれだけ他者に認められようと、ゲンヤにとってこの幸せ以上は何も要らなかった。


だがその幸せは永遠ではなかった。


コウ「ちょっと川に遊びに行ってくる!」


シズク「気を付けるのよ!深いところまで行っちゃだめだからね!」


ゲンヤ「大丈夫だ。私も後からついていこう」


コウ「はぁーい!父さま先に行ってるね!」


ーーーー

川で遊ぶコウ

その姿は無邪気で、笑顔は太陽の光でさらに輝いて見えた。


ギュスターヴ「こんにちゎ♩」


コウに近づく若い男。


コウ「お兄さんだれ?」


ギュスターヴ「ここはゲンヤさんがいるシノビの里であってるかな?ゲンヤさんに昔お世話になった者で挨拶がてらこの里によらせてもらったんだ♩」


コウ「そうなの?ゲンヤって人は僕の父さまだよ!僕の家においでよ!案内してあげる!」


突然笑顔が消えるギュスターヴ。


ギュスターヴ「へぇ…子供いるんだ…」


また、満面の笑みでコウを見つめる。


ギュスターヴ「ありがとぅ〜♩君は優しい子だねぇ♩よし!お兄さんがお菓子あげよう♩」


コウ「ほんと?!ありがとう!」


里にギュスターヴを案内したコウ。

コウの家に着いた2人。


コウ「ただいま!父さまいる?!」


シズク「あら、おかえりなさい。父さまはさっきコウのとこに行くと言って家を出たけど…すれ違ったのかしら…あらそちらの方は?」


ギュスターヴ「はじめましてぇ♩ゲンヤさんに昔お世話になったものです♩」


シズク「まぁ!主人のお知り合いですか!すぐ帰ってくると思いますのでどうぞ、中でお茶でも…」


ギュスターヴ「えぇ♩と〜ってもお世話になりました♩」


シズク「…?」


次の瞬間──


シズクの胸から血が滴り落ちる。


シズク「え…な…にこれ…」


ギュスターヴ「あ♩僕の血魔法です♩」


倒れるシズク。


コウ「え…母さま…?」


ギュスターヴがコウを血の魔法で拘束する。


コウ「ン゛ン゛!!」


ギュスターヴ「あはは♩案外上手くいったなぁ♩ゲンヤはどんな顔するかなぁ♩」


ギュスターヴ「あ、サルコスくんガトラスくん里の他の人は皆殺しでお願い♩ゲンヤはだめだよ!僕の獲物だから♩」


ギュスターヴの合図で木の上から細身の男と大男が降りてくる。


サルコス「んふふふ。畏まりました。ギュスターヴ様」


ガトラス「ガッハッハッ!どれ!ひと暴れしてくるか!」


ガトラスが拳を振るう。


ドゴォォン!!


家屋がまとめて吹き飛ぶ。


ガトラスの剛魔法により里の人々は次々と命を奪われた。


そして死体を起き上がらせ、まだ生きる生者を襲わせる屍魔法を使うサルコス。


里が壊滅するまでさほど時間はかからなかった。


ゲンヤ「何だ…今の音は…?」


川に遊びに行ったコウを追いかけていたゲンヤだったが異変に気付き里に引き返す。


ゲンヤが里に着いた時…

そこはまさに地獄と呼ぶに相応しい光景だった


ゲンヤ「…コウ…シズクーー!!」


叫びながら家へと走る

きっと大丈夫だ。

無事なはずだ。

そう想いたい感情とは矛盾するように

顔は焦りと涙でぐしゃぐしゃになっていた。

自分がもっと早く戻っていれば

異変に気付いていれば


ガラッ


勢いよく扉を開ける

ゲンヤの目に飛び込んできたのは

いつもの笑っているシズクとコウの姿ではなく

無惨に弄ばれたシズクの死体と自分の大切な息子を縛り付け手で雑に抱えている若い男。


ゲンヤ「き…きさまぁーーー!!!」


勢いよくゲンヤの力が解放される…はずだった

力が出ない

魔力も出ない

獣力も反応しない


ゲンヤ「な…っ?!」


ギュスターヴ「あっ♩おかえりぃ♩ぱーぱ♩」


ギュスターヴ「力でないよねぇ。悲しいよねぇ。あんた相手に正々堂々なんて挑むわけないじゃーん♩勝てるかわからないし♩」


ギュスターヴ「この里ねぇ♩魔力使えないようにしてあるの♩」


ギュスターヴ「もちろん君らだけ使えないよ??だからほら、君の息子!僕の血魔法で縛ってるんだから♩」


コウ「父さま!!助けて!!」


ゲンヤ「コウ!!すぐ助けてやる!!」


ゲンヤ「貴様は誰だ!!」


ギュスターヴ「ひどいな〜♩覚えてないの?」


ギュスターヴ「ほら、みてよこの刺青♩」


ギュスターヴの額には異種大戦で反乱軍として討伐されたはずの虐殺部隊クロコダイルの紋章が刻まれていた。


ゲンヤ「貴様…生き残りか!」


ギュスターヴ「やだなぁ♩覚えてないの?僕のお父さん殺したじゃない♩」


ゲンヤ「…?!……あの時の子供…か…?」


ギュスターヴ「まっ。んなのどうでもいいんだけど。ほら子供。大切なんでしょっ♩」


ゲンヤ「頼む!私を恨んでいるのならば命でもなんでも差し出す。子供だけは…コウだけは助けてくれ!」


ギュスターヴ「もっちろん♩」


ゲンヤ「た、たすけてくれるの…か?」


ギュスターヴ「うんっ♩じゃぁ今目の前で腕を切り落として♩」


コウ「な、なにいってんだ!父さまはやくこんなやつやっつけてよ!」


ギュスターヴ「むりぃむりぃ〜!魔法も使えない今、肉弾戦にするなら僕が君の喉を切り裂く方が何倍も早い♩」


ギュスターヴ「子供のためとはいえ、腕切り落とすなんて躊躇しちゃうよねぇ♩」


その瞬間ー


ザシュッーーゴトッ


ゲンヤは自分の左腕を切り落とした。


ギュスターヴ「わぁお♩すごい!ほんとにやれちゃうんだ♩」


コウ「父さま!父さまぁー!」


泣き叫ぶコウ


息を切らしながら

歯を食いしばり

敵を睨みつけるのではなく

誰よりも優しい笑顔でコウを見る


ゲンヤ「コウ…父さんはいつでもお前を愛してる。」


ギュスターヴ「はぁ?!なにその家族愛キッショキッショキッショ!!」


ギュスターヴ「次は目玉だ!目玉抉りとれよ!」


ゲンヤは目を抉りギュスターヴの方に放り投げる


ギュスターヴ「…はは…あんたイカれてるよやっぱり…子供のためにここまで普通できるやつなんか…」


ゲンヤ「できるさ。それが親だ。」


コウ「父さまぁ…父さまぁ!!」


ゲンヤ「コウ!強く優しく生きろ。母さんも俺も見守っている。」


ギュスターヴは親子のやり取りを見ながら

一瞬悲しそうな顔をしたが

すぐ狂気を取り戻し、無数の剣をゲンヤに突き刺した。


ギュスターヴ「あはっ♩どこまで刺したら壊れるかなぁ?」


ザクッザクッ


コウ達の家にはいつも流れていた幸せの音ではなく

コウの悲鳴と里の焼ける音、ゲンヤをひたすら刺す音だけが響いていた。


ゲンヤ「…はぁはぁ…頼む。コウを…逃がしてやってくれ…」


ギュスターヴ「自分の罪と向き合わなきゃね♩」


ギュスターヴ「君が昔そうしてくれたようにこの子は逃がして…あげるわけないじゃーーん!」


ギュスターヴ「目の前で拷問したらどんな反応する?大切なもの奪われるってどんな気持ち?」


ゲンヤ「コ、コウ…!」


もはやボロボロで目も見えているかわからないゲンヤ。

這いつくばりながら、必死にコウの元へ向かう。

そしてコウの元まで来ると残った腕で優しく抱きしめた。


ゲンヤ「大丈夫だ。怖くないぞ。」


その声は、コウを一瞬で安心させてしまった。

だがコウは気付いていた。

自分も父さまも助からない。

このまま死ぬんだと。


里の端から声が聞こえる。


オウコ「ゲンヤぁぁぁぁー!!!!どこだぁーーー!!」


ギュスターヴ「そっか、この近く雷神も住んでるってディコルプヌス様も言ってたっけ…」


ギュスターヴ「雷神は今だと都合悪いや♩また今度にしよっと♩」


コウ「父さま…父さま…」


ギュスターヴ「君は…見逃してあげるっ♪︎僕今機嫌がいいし!恨むならいつか僕のこと殺してみなよ♩」


ギュスターヴ「まぁ無理だろうけど♩サルコス、ガトラス。帰ろっか♩」


サルコス「んふふふ。楽しかったですねぇ」


ガトラス「俺は力封じてない風神とやってみたかったんだけどなぁ…」


ギュスターヴ「むりむり!僕らじゃ勝てないよ♩控えめにいってディコルプヌス様と同レベルだよ?」


ガトラス「?ギュスターヴ。なんで泣いてんだ?」


ギュスターヴ「え?泣いてないよ?汗じゃない♩」


笑いながら闇の中へ消えていく3人


ゲンヤの身体は、もはや生きていることすら不思議なほど傷ついていた。


オウコ「ゲンヤ!!」


ボロボロになったゲンヤ

そのゲンヤに力なく抱きしめられるコウ

涙とゲンヤの血でコウの顔はぐしゃぐしゃになっていた。


オウコ「なんで…こんな…」


ゲンヤ「オウコ…か…?」


オウコ「待ってろ!すぐ傷の手当をする!」


ゲンヤ「いや。大丈夫だ。私は助からない。自分が1番わかってる。それよりもコウを頼む」


オウコ「ゲンヤ…」


ゲンヤ「コウ。復讐をしようとは考えるな。復讐はまた悲しみや負の連鎖を生む…」


コウ「父さま…ぐすっ」


ゲンヤ「…いいかコウ。人を許すことができる人間が…本当に強い人間だ。」


ゲンヤ「お前だけでも守れてよかった…」


コウ「父さまーーー!!!」


享年30歳。

10年前の異種大戦で英雄と呼ばれ

風神の異名を手にした男

ここに散る

彼の最後の姿は英雄や、風神ではなく

誰よりもただ、父親であった。










ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


APOLLO 第二章レグルス編

第6話「父親」でした。


今回は、コウの過去。


そして、彼の父であるゲンヤという男の最期を描いた回でした。


ゲンヤは、異種大戦で英雄と呼ばれ、

風神の異名を持つほどの強者です。


でも今回描きたかったのは、

英雄としてのゲンヤではありません。


息子を守るためなら、

自分の全てを差し出せる。


そんな、ただ一人の“父親”としてのゲンヤです。


コウがなぜ強さにこだわるのか。


なぜ大切な人を守ることに執着するのか。


その理由が、今回の話で少し見えたと思います。


そして、ギュスターヴ。


彼はただ残酷なだけの敵ではなく、

過去に何かを抱えたまま壊れてしまった存在として描いています。


もちろん許されることをしたわけではありません。


ただ、APOLLOでは敵側にもそれぞれの過去や歪みを持たせたいと思っています。


次回からは、

シン、ヴィーラ、コウ、アラン、バウス。


それぞれの戦いが本格的に始まっていきます。


レジュを救えるのか。

コウは因縁の相手ギュスターヴとどう向き合うのか。

悪神教の目的とは何なのか。


レグルス編、ここからさらに熱くなっていきます。


少しでも「続きが気になる」と思っていただけたら、

応援・コメント・フォローしていただけると本当に励みになります!


次回もよろしくお願いします!


――岡本 煌

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