第一章旅立ち編 4話 金色の美女と怪物達
旅立ったシンとコウは、
ついにアリエルガの中心都市・ラグノリアへ辿り着く。
賑やかな街。
初めて見る景色。
そして、コウが呼んだ二人の仲間。
炎を操る豪快な男・アラン。
氷の二重属性を持つ少年・バウス。
魔大陸を目指すため、
シン達は新たな仲間と出会う。
だがそこで、
シンの中に眠る“謎の力”が一瞬だけ姿を見せる。
雷と雪。
氷の二重属性。
炎と嵐。
ぶつかり合う力の中で、
少年達は互いを知り、認め合っていく。
そして、その戦いを見つめる一人の少女。
彼女との出会いが、
シン達を新たな運命へ導いていく。
APOLLO 第4話
「金色の美女と怪物達」
よろしくお願いします!
シン「ここがラグノリアかぁ!!すっげぇ!広い!色々あるぜコウ兄!!」
(うわ…まるで転生前に本で読んだ中世の街みてぇだ…)
キラキラした目で街を見るシン。
肉串。
魔道具。
大道芸。
武器屋。
シン
「うわぁぁぁ!!」
走り回る。
コウ「疲れてたんじゃなかったのかよ…」
コウに捕まるシン。
シンはたくさんの出店料理を抱えていた。
コウは少し呆れながらもシンと共に出店料理を堪能し、本来の目的の再確認をはじめる。
コウ「シンはラグノリアに来るのが初めてだもんな。よし、まずは属性判断所に行くか」
シン「属性判断所?」
コウ「人それぞれその人にあった魔力の属性があるのは知ってるだろ?数ある属性のうちから自分がどの属性になるのかを判断してくれる場所だよ」
シン「え?属性って判断してもらえるとこあるの?生まれつきみたいなもんだと思ってた」
コウ「家系とか、先天的なもので決まってるやつはシンみたいにわかってるやつが多いけど、普通の人は属性判断所で自分の属性を知ってからその魔力属性に合わせた訓練をしたりする。後はまれに属性2つ持ちのやつとかもいるしな」
シン「属性が2つあれば2倍強いってこと?」
コウ「そんなことはない。2つあっても2つとも極めるのは至難の業だ。それに2つあっても使い方次第では1つの属性だけを極めたやつの方が強いしな」
シン「なるほどな〜っていうかコウ兄の知り合いの強い人達はどこにいるんだよ!」
コウ「全くお前は…勉強も強くなるためには必要なんだぞ…」
コウ「ここが属性判断所だ。ここで落ち合うことになってるんだが…」
??「おう!久しぶりやな、コウ!」
赤い髪。
ガタイのいい男が、
片手を上げながらこちらへ歩いてくる。
顔には、
無数の傷跡。
目尻にも、
頬にも、
過去の喧嘩を物語るような傷が刻まれていた。
シンは思わず身構える。
――強い。
一目でそうわかった。
だが。
男がコウを見た瞬間、
その鋭い目がふっと柔らかくなった。
まるで、
昔からの悪友に再会したみたいに
コウ「アラン!!!久しぶりだな!また傷増えてるじゃねーか!相変わらず喧嘩ばっかりしてんのか」
アラン「はっはっはっ!喧嘩売ってくるやつは全部買ってやるのが俺の流儀や!」
アラン「お!隣の金髪がコウが言ってた弟か!」
シン「はじめまして!俺はシン!コウ兄が言ってた人達だよね?隣の人は…?」
淡い青い髪の少年
歳は自分と同じくらいだろうか
冷たい視線をこちらに向けてくる
??「……」
アラン「こら!挨拶せんか!」
??「……っち」
アラン「お前誰に舌打ちしてんねん!こら!」
??「バウスだ。」
アラン「すまんな、こいつ無愛想やねん」
バウス「馴れ合うつもりはねぇ。目的が同じだから同行してやるってだけだ」
コウ「初めまして。アランから手紙で聞いてたよ。バウスだね。うん。シンのいいライバルになってくれそうだ」
シン「よろしく!アランさん!バウスさん!」
アラン「よせよせアランでええよ!バウスはシンと同い年やし、お互いなかよくしたらええ!」
シン「わかった!あらためてよろしく!アラン!バウス!」
バウスはシンをじっと見つめる。
まるで、
値踏みするみたいな鋭い視線。
シン「な、なんだよ…」
バウス「……弱そう」
シン「はぁ!?!?」
バウス「俺の足手まといにはなるなよ」
シン「こいつ!失礼なやつだな!喧嘩なら買ってやるぞ!」
バウス「いつでもこい。返り討ちだ。」
アラン「まぁまぁそんな焦んなや。どのみち王様らに許可貰わんと行かれへん場所やしな。
時間はかかる。ならその前に…」
シン「??」
アラン「お互いの背中を預ける旅の仲間になるわけやろ。なら実力は知っとかなアカンよな。」
コウ「ほんとにお前は喧嘩好きだな…まぁ俺もアランがどのくらい強くなったか興味はある模擬戦でもするか」
バウス「…くだらねぇ」
アラン「なんや!負けるのが怖いんか!」
バウス「…っち。殺すぞ。俺は誰にも負けねぇ」
アラン「俺に勝ったことないやんけ笑」
バウス「お前とは相性がわりぃだけだ!」
アラン「はいはい笑 よし!ほな行こか!」
シン「行くってどこに??」
アラン「属性判断所の中や!こんなかはどんだけドンバチしても大丈夫な模擬戦ルームもあるんや!」
属性判断所に入ったシン達一行
中ではざわめく声がする
大衆「お、おい、あれサンダラ家のコウじゃねぇか…」
大衆「ほ、ほんとだ。隣にいるの火猿のアランじゃねーか…」
…ザワザワ…
シン「す、すげぇ。コウ兄達有名人なんだな。みんな見てるぜ」
コウ「ま、まぁ昔ちょっとな…」
アラン「シンの兄ちゃんも昔はヤサグレとったもんなー笑」
コウ「いや、お前ほどじゃねーよ。」
大笑いするアラン
受付の女性「ようこそお越しくださいました。属性判断をご希望でしょうか?それとも…あ!コウさん!アランさん!」
コウ「ど、どうも汗 いやほんとに昔はご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした…」
アラン「本人もそう言ってるんやし許したってぇな!」
コウ「やらかしたのは8割お前だろーが!」
またも大笑いするアラン
受付の女性「ふふふ、ずいぶんとお二人ともご立派になりましたね。あの頃とは大違い。」
受付の女性「今日はどんな御用ですか?」
シン「属性判断をしたいんだ!」
受付の女性「あら、あなたは…あ!コウさんがいつも言ってた可愛い弟さんかしら!」
シン「可愛い弟…?」
受付の女性「コウさんがラグノリアに来た時に毎日のようにシンに会いたい。俺がそばにいなきゃあいつは悲しむ。ってずっと言ってましたよ笑」
コウ「ちょ、ちょっと!やめてくれよ!」
シンは思わず笑った。
昔からそうだ。
コウはいつだって、
自分のことばかり気にかけてくれる。
――だからこそ。
シンにとってコウは、
誰より信頼できる兄だった。
受付の女性「ふふふ、冗談はこのくらいにして、ではシン様の属性判断をしましょうか。この水晶に手を触れてください」
シン「こ、こうかな?」
シンが手を置いた瞬間透明の水晶は大きく黄色に光った。
水晶にあらわれる雷の紋章
そしてその後に雪の紋章が現れた
シン「え!なにこれ!雷の後に雪がでてきた!」
受付の女性「あら!珍しい!属性2つ持ちですね!それに雷と雪の組み合わせなんて初めてみました!」
コウ「母さんが雪の属性だったからな」
突然水晶が激しく明滅する。
黒い空。
崩壊した街。
血。
叫び声。
そして。
空を埋め尽くす“何か”。
“あの化け物”の赤い目。
シン「――ッ!?」
頭に激痛が走る。
シン「…痛っ…」
コウ「大丈夫か?!」
受付の女性「い、いまのはなんでしょう?」
アランの笑みが消える。
アラン「……悪魔や。」
空気が変わる。
コウ「間違いない。」
コウの表情が少し曇る。
コウ「……悪魔。」
シン「え!悪魔!?え!どーゆこと?!俺悪魔ってこと?!」
コウ「昔、この地球を滅ぼしかけた存在だって聞いたことがある。」
シン「昔地球を滅ぼしかけた生物…?!」
だが次の瞬間、アランはわざとらしく笑った。
アラン「ま、悪魔属性とか強そうやん!聞いたことないけどな!」
シン「え、俺大丈夫なんだよね?!」
コウ「まぁお前には不思議な力かなんかがあると思ってたし!属性2つ持ちでも、悪魔持ちでも不思議じゃねぇよ!」
シン「コウ兄は悪魔とか得体のしれないの怖くないのかよ…」
コウ「何言ってんだ。シンは何があっても俺の弟だ。どんな事があっても守ってやる。それに悪魔が宿るとかそんなの聞いた事もないしな笑」
アラン「試しにもう一度水晶に手を当ててみたらどうや?」
シン「う、うん。」
シンはおそるおそる手を当てたがそこには雷の紋章と雪の紋章があるだけだった。
シン「特になんもうつらない…」
アラン「誤作動やったんやない?お姉ちゃんちゃんと整備しといてや〜!」
受付の女性「うーん。整備は毎日してるんですけどねぇ…私もこんなの初めてだったから…」
シン(あれは俺がこの世界に来る前の世界だった。忘れるわけが無い。さっきのコウ兄の話…昔地球を滅ぼしかけてた存在ってどーゆことだ…この地球と俺のいた地球は……本当に別物なのか?)
バウス「おい。どけ」
シン「あ、わりぃ」
バウス「ちょっと属性が珍しいからって調子乗るなよ。俺の属性を見せてやる」
バウスが水晶に手を触れた瞬間シンが触れた時よりも大きく白く輝いた
水晶には氷の紋章が2つでてきた
受付の女性「まぁ!すごい!二重属性ですね!」
コウ「二重属性!?」
シン「な、なんだ!二重属性って!」
受付の女性「二重属性とはその名の通り同じ属性を2つ持ってるということです。属性2つ持ちより珍しいものですよ!ですが…」
コウ「二重属性は王族だけが現れるものだったはず…」
バウス「…ふん。俺は王族じゃない。」
受付の女性「ですが、王族以外の方で二重属性は初めてでして…」
アラン「あー!いやこいつにも色々あるんや!あんま詮索せんとってや!」
アランが慌てた様子で場を和まそうとする。
コウ「アラン…お前…まさか王族の子供誘拐したんじゃ…」
アラン「そんなわけあるかい!バウスとはなんやまぁ色々あって行動を共にすることになったんや!」
受付の女性・コウ「色々?」
慌てるアラン
説明しようとした瞬間
バウスが口を挟む
バウス「どうでもいいことだ。俺は王族じゃない。そしてアランと一緒にいるのは俺の目的のために必要だってだけだ。それ以外なんも理由はない。」
少しの沈黙の後
シンが突然口を開く
シン「すげぇ!!!二重属性とか超ヤバイじゃん!!」
バウス「…ふん。お前の2属性持ちや悪魔なんかより俺の方が…」
シン「ほんとにすごいよ!バウス!俺と模擬戦をしよう!」
バウス「…お前なんか秒で潰せるぞ」
シン「それはやってみなくちゃわかんねーだろ!」
アラン「はっはっは!こりゃええ!シン!バウスはシンと同い年なんやが、この通り性格がひねくれとるんや!お互い背中を預ける同士胸を貸したってくれ!」
シン「ひねくれてる?違うぞ!バウスはめちゃくちゃ信念があっていいやつだ!口は悪いから誤解されやすいと思うけど、俺にはわかるよ!」
目を丸くするアラン。
アラン「ほうか。そう思ってくれとるんなら兄貴分の俺としても嬉しい限りや!さっそく模擬戦はじめよか!」
バウス「おい。誰が兄貴分だ」
アラン「俺に突っかかって来る前に、はよ模擬戦ルームにいかんかい!少し認められて嬉しそうにしとるの顔にでてるで」
バウス「…っな!」
顔を少し赤らめるバウス。
文句を言いながらも、シンと共に模擬戦ルームに入っていく。
アラン「さて、コウの可愛い弟くんはどこまでできるんやろうか」
コウ「お前の弟分の実力も楽しみだ。二重属性なんて俺が相手をしたいくらいだ」
アラン「お前が相手したらバウス瞬殺されるやんけ。お前の相手は俺や」
コウ「確か今は2勝2敗。弟も見てる前で負ける訳にはいかねーな」
アラン「望むところや。」
ーーーーー
模擬戦ルーム
受付の女性「ここではどんな攻撃にも耐えられるため全力で戦っていただいて大丈夫です。ただ大きな怪我をしそうになった時点でお止めさせていただきます。」
シン「よっしゃ!行くぞバウス!」
バウス「かかってこい。ぶちのめしてやる」
広い石造りの空間。
壁には無数の魔法陣が刻まれている。
シンは拳を鳴らしながら笑う。
シン「負けても泣くなよ!」
バウス「それはこっちの台詞だ。」
ピリッ――
空気が凍る。
床に薄く氷が広がっていく。
シン「うおっ!?」
コウ「もう魔力を流してるのか…」
アラン「バウスのやつ、本気やな。」
受付の女性「では――開始!!」
ドンッ!!
開始と同時に、
シンが雷を纏って突っ込む。
床が砕ける。
シン「うおおおお!!」
雷を纏った拳。
真正面からの一撃。
だが。
バウス「遅い。」
スッ――
最小限の動きで躱す。
同時に、
シンの足元が凍った。
シン「なっ!?」
バウス「終わりだ。」
バキィッ!!
氷の蹴り。
シンは腕でガードするが、
そのまま吹き飛ばされる。
シン「ぐっ…!」
壁に激突。
だが。
シンは笑っていた。
シン「すげぇ!今のどうやったんだ!?」
バウス「……は?」
シン「足元凍らせて動き止めたろ!?
めっちゃ頭いいじゃん!」
バウス「お前…戦闘中に何言ってんだ。」
シン「だって強いやつと戦うの楽しいし!」
雷が弾ける。
次の瞬間。
シンの姿が消えた。
バウス「!?」
横。
シン「こっちだ!!」
轟音。
雷を纏った回し蹴り。
バウスは氷壁を生成。
ドゴォン!!
氷が砕け散る。
観客席がざわめく。
大衆「なんだあのガキ共…!」
大衆「レベルが違ぇぞ…!」
バウス(俺の氷を…蹴り砕いただと…!?)
シン「まだまだぁ!!」
止まらない。
拳。
蹴り。
雷撃。
荒々しい。
だが速い。
重い。
バウスは紙一重で避け続ける。
バウス(なんだこいつ…!
滅茶苦茶なのに読めねぇ!)
シン「逃げてばっかじゃ勝てねーぞ!」
バウス「黙れ。」
瞬間。
空気が凍る。
床一面が白く染まった。
シン「!?」
バウス「氷牙。(ヒョウガ)」
無数の氷柱。
シンへ一斉射出。
シン「うおおお!?」
避ける。
砕く。
だが。
頬が切れる。
シン「っ…!」
バウス「避けきれないか。」
シン「へへっ…!」
シンは血を拭いながら笑った。
シン「やっぱお前強ぇな!!」
バウス「……。」
バウスの眉が僅かに動く。
こんな奴、
今までいなかった。
自分を見ても恐れず、
才能に嫉妬もせず、
ただ真正面から笑ってくる。
シン「でも負けねぇ!!」
雷が爆ぜる。
バウス「……来い。」
氷が舞う。
雷と氷。
二つの力が真正面から衝突した瞬間――
ドゴォォォンッ!!!!
模擬戦ルーム全体が揺れた。
受付の女性「きゃあっ!?」
コウ「おいおい…」
アラン「ははっ…やりすぎやろあいつら…!」
煙が広がる。
その中心で。
シンとバウスは、
互いの拳をぶつけ合ったまま止まっていた。
シン「へへっ…」
バウス「……っち。」
だが。
その顔は少しだけ。
ほんの少しだけ、
楽しそうだった。
受付の女性「ストップストーップ!!」
バウス・シン「え?」
受付の女性「これ以上したら壊れちゃいます!」
バウス「どんな衝撃でも耐えられるんじゃないのか?」
受付の女性「それはあくまでも一般の人達の模擬戦の場合です!怪物級の人達はだめです!」
シン「そんなー!これからもっと面白くなるところなのに!まだ必殺技もだしてないよ俺!」
受付の女性「だめなものはだめです!」
バウス(俺との戦いで………
まだ本気じゃなかったのか)
シン「バウス!!」
バウス「な、なんだ。」
シン「お前めちゃくちゃ強いな!すげぇよ!コウ兄とじぃじ以外で勝てないって思ったの初めてだ!」
バウス「…お前も、まあまあやる。」
シン「バウス!仲間として、友達としてこれからよろしくな!」
差し出される手。
バウスはその手を見つめたまま動かない。
“友達”
そんな言葉、
今まで自分には無縁だった。
バウス「……おう」
アラン「何照れとんねん!でもよかったやないか!初めて真正面からぶつかれる同年代のダチができたんや!」
バウス「ダチか…」
アラン「当たり前やろ!戦ってお互い認めあったならそれはもうダチや!そやろ?シン!」
シン「うん!当たり前だよ!バウスは俺の仲間で、初めてできたライバルで友達だ!」
コウ「さて、じゃぁ俺らの目標は魔大陸だ。シンとバウスが今よりどれくらい強くならないといけないかアランとの模擬戦で教えてやるよ」
アラン「そやな…お前らよくみとけや!俺らの本気を!」
受付の女性「ちょっと。」
コウ・アラン「え?」
受付の女性「絶対だめです。あなたたちにはもう既に過去に4回も模擬戦場を壊されてるんです。絶対に許しません!」
コウ「そ、そんな!」
アラン「今回だけは見逃してや!」
受付の女性「だーめっ!どうしてもやりたいなら町から離れた草原とかでしてください!」
アラン「しゃーない。このまま熱ぅなったままっちゅうのもアレやしラグノリアの西にある草原でも行こか」
コウ「仕方ない、そうするか」
ーーーーーーー
ラグノリア西の草原。
夕日に染まる大地。
コウとアランは、
互いに距離を取り向かい合っていた。
噂を聞きつけた人々が、
次々と集まってくる。
大衆「おい…!サンダラ家の長男コウと火猿のアランだ!」
大衆「マジかよ…!」
大衆「こんな近くで見れるなんて…!」
ざわめく群衆。
だが。
コウとアランが互いに魔力を解放した瞬間――
空気が変わった。
ドンッ……
地面が軋む。
シン「……っ!?」
バウス「これが……本気。」
アランは笑う。
コウも笑う。
だがその目だけは、
獣みたいに鋭かった。
シンは無意識に拳を握っていた。
集まった観衆たちは、
息を呑みながら二人を見つめていた。
コウとアラン。
向かい合うだけで、
空気が震えている。
シン「す、すげぇ威圧感…」
バウス「……。」
アランは肩を回しながら笑う。
アラン「久々やな。お前と本気でやり合うんは。」
コウ「だな。今回は負けねぇぞ。」
アラン「それはこっちの台詞や!」
アランは背中の大斧へ手を伸ばす。
コウもまた、
腰の短剣へ指をかけた。
――だが。
コウ「……いや。」
コウは短剣から手を離し、
小さく笑う。
コウ「今日は武器無しでやろうぜ。」
アラン「……はっ。」
一瞬だけ目を細めた後、
アランは豪快に笑った。
アラン「ええやないか!!
久々に拳と魔力だけで語り合おうや!」
ドゴンッ!!
アランは大斧を地面へ突き立てる。
コウも短剣を鞘へ戻した。
シン「え……武器使わねぇのか?」
バウス「……まじか?」
アラン「ハッ!
武器なんぞ使ったら、
この辺一帯消し飛ぶで?」
コウ「違いねぇ。」
二人は笑う。
だが次の瞬間――
ドンッ――!!
地面が爆ぜる。
同時。
二人が消えた。
大衆「なっ!?」
次の瞬間。
空中。
バチィィィンッ!!!!
風を纏った蹴りと、
炎を纏った拳が激突する。
衝撃波。
草原が揺れる。
シン「速ぇぇぇ!?」
バウス(見えない……!)
アラン「はっはぁ!!」
炎が爆発する。
アランの右腕が燃え上がる。
アラン「爆炎牙!!!」
巨大な炎の拳。
コウへ叩き込まれる。
コウ「甘ぇ。」
ゴォォォ!!
嵐が巻き起こる。
暴風。
炎の軌道が逸れる。
コウ「暴嵐脚!!」
ズバァンッ!!
真空の蹴撃。
地面が一直線に裂ける。
アラン「うぉ!?」
飛び退くアラン。
だが笑っていた。
アラン「ええやんけぇ!!」
炎がさらに膨れ上がる。
髪が逆立つ。
周囲の温度が急上昇する。
アラン「炎乱舞」
ドォォォッ!!!
炎の渦がアランを包む。
まるで燃え盛る獣。
大衆「火猿だ…!」
大衆「本物の火猿だ!!」
シン「すげぇ……」
コウ「相変わらず派手だな。」
コウは静かに目を閉じる。
次の瞬間。
風が止んだ。
空が暗くなる。
シン「……え?」
バウス「空が……」
ゴロゴロ……
雷鳴。
黒雲。
草原を巨大な嵐が包み込む。
アラン「ははっ……!」
アランは笑う。
アラン「やっぱそれや!
お前の嵐はたまらんなぁ!!」
コウ「嵐帝式――」
雨。
雷。
風。
全てがコウへ集まる。
コウ「天穿嵐)」
ズドォォォォンッ!!!!
雷を纏った暴風の一撃。
大地が吹き飛ぶ。
アラン「っらぁぁぁぁ!!」
アランも真正面から突っ込む。
アラン「爆炎剛拳」
炎。
嵐。
真正面衝突。
瞬間。
世界が白く染まった。
ドゴォォォォォォンッ!!!!
大地が陥没。
暴風が草原を薙ぎ払う。
観客達が吹き飛ばされそうになる。
シン「うわぁ!?」
バウス「チッ……!」
煙。
土煙。
轟音。
その中心で。
コウとアランは、
互いの拳を押し合ったまま笑っていた。
コウ「やっぱお前強ぇな。」
アラン「そらどうも。」
バチバチと雷が弾ける。
炎が唸る。
二人の怪物は、
まだ笑っていた。
騒ぎを聞きつけたラグノリアの衛兵たちがやってくる
衛兵「なんだこの破壊跡は……!」
衛兵「まるで災害じゃねぇか…!」
だんだん騒ぎも大きくなってくる
アラン「こりゃ…アカンわ…」
コウ「しまった。やりすぎたな…」
衛兵に怒られるアランとコウ
それをみていたシンとバウス
シン「とんでもねぇ強さだ…あんな本気のコウ兄はじめてみた…!」
バウス「…っち。今はまだ届かねぇ。」
衛兵の事情聴取を終え戻ってくるアランとコウ
アラン「いやぁーすまん笑 やりすぎてもうた」
コウ「アラン相手なら本気出さねーと俺が危ねぇからな」
アラン「とりあえず今回は引き分けやな!」
コウ「そうだな」
まだ嵐を纏うコウ。
燃え残る炎を肩で払うアラン。
互いにボロボロなのに、
二人とも心底楽しそうに笑っていた。
シン「……すげぇ。」
バウス「……。」
シンの目は輝いていた。
バウスも黙ったまま、
二人から目を離せない。
“いつかあの領域に――”
言葉にしなくても、
二人が同じことを思っているのは分かった。
大衆「いやぁーすごかったな!」
大衆「あんなやばい決闘はじめてみたよ!」
大衆「アリス王女よりつぇーんじゃねーか?」
大衆「流石に…いやありえるかもな…!」
夕日が沈み始める。
焼け焦げた草原。
まだ立ち昇る煙。
観衆は興奮した様子で帰っていく。
その中で。
一人だけ。
金色の髪を揺らしながら、
立ち尽くす少女がいた。
??「…見つけた…!この人達なら…」
ここまでの力を持つ者なら。
あの人たちなら、きっと。
けれど、時間はもう残されていない。
少女は祈るように胸元のペンダントを握りしめた。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
APOLLO 第4話でした!
今回は、ラグノリアに到着したシンとコウが、
新たな仲間であるアランとバウスに出会う回でした。
アランは豪快で喧嘩好きで、
でも面倒見がよくて仲間想いな男。
バウスは口が悪くて不器用ですが、
強さに対して真っ直ぐで、
誰よりも負けず嫌いな少年です。
そしてシンにとって、
バウスは初めてできた“同年代のライバル”でもあります。
シンとバウスの模擬戦では、
雷と氷がぶつかり合い、
お互いの強さを認め合うような展開にしました。
こういう、
戦ったからこそ分かり合える関係が、
個人的にすごく好きです。
そして後半では、
コウとアランの本気のぶつかり合い。
シン達から見れば、
まだまだ届かない怪物のような存在。
でも同時に、
「いつかあそこまで行きたい」
と思わせるような背中でもあります。
この4話で、
シン達の旅のメンバーが少しずつ形になってきました。
そして最後に登場した金髪の少女。
彼女は何者なのか。
なぜシン達を探していたのか。
そして、彼女の姉に何が起きているのか。
次回、第5話からは新章――
レグルス編が始まります!
ここからAPOLLOの物語は、
さらに大きく動き出します。
新たな国。
王族。
悪神教の影。
そして、シン達が初めて直面する本格的な戦い。
ぜひ次回も読んでいただけると嬉しいです!
もし少しでも
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思っていただけたら、
応援・コメント・フォローなどしていただけると本当に励みになります!
ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました!
次回もよろしくお願いします!
――岡本 煌




