第一章旅立ち編 3話 旅立ちと森の山賊
母を失い、
父の行方も分からないまま、7年の月日が流れた。
15歳になったシンは、
兄・コウと共に旅立つ決意をする。
目的は、魔大陸へ向かったまま帰らない父・オウコを探すこと。
そして、母ユキを苦しめた病の原因を突き止めること。
だが、魔大陸へ行くためには、
ノムア大陸の12国王に認められなければならない。
シンとコウは、仲間を集めるため、
アリエルガの中心都市・ラグノリアを目指す。
大切な家族との別れ。
コウが背負う過去。
危険な森での出会い。
そして、ラグノリアに現れる一人の少女。
少年達の旅が、今始まる。
APOLLO 第3話
「旅立ちと森の山賊」
よろしくお願いします!
崩壊した地球から転生し、
“シン”として新たな人生を歩み始めた太陽。
温かい家族との日々。
だが、母ユキは魔大陸由来の病に倒れ、
父オウコは治療法を求めて魔大陸へ旅立ったまま帰らなかった。
母を失い、父の行方も分からないまま時が過ぎ
15歳になったシンは、
兄コウと共に決意する。
父を探すため。
母を苦しめた病の原因を突き止めるため。
そして――世界を救うために。
母が亡くなってから7年。
父が魔大陸へ旅立ち9年が経つ。
墓の前で手を合わせる2人。
線香の煙が、空へ向かって流れる。
幼い頃、
熱で苦しむユキが震える手でシンの頭を撫でながら言った。
ユキ「シンは…優しい子だから……
きっと誰かを守れる強い子になるよ……」
その言葉は今でもシンの胸に残っている。
俺はこの世界で、
たくさんのことを学んだ。
強くなる意味。
逃げずに立ち向かう勇気。
どれだけ辛くても、
諦めなければ前に進めるということを。
だから俺は戦う。
今度こそ、
大切な人を守るために。
もう二度と失う訳にはいかない。
シン「母さん。行ってくるよ!」
コウ「心配しなくていいぜ母さん。俺がついてる。シンのことは必ず俺が守る」
シン「なんだよ!コウ兄に守られるほどもう弱くないぞ!すげー強くなったんだからな!」
コウ「そうだな。魔大陸に行って父さんを必ず見つけような!」
シン「おう!」
オキナ「2人ともユキさんへの挨拶はもう済んだのかい?」
コウ・シン「あぁ!行ってくるよ!」
オキナ「気をつけるんじゃぞ。
オウコのやつを見つけたら1発ぶん殴ってやってくれ。いつまでも帰ってこずになにをしとるんじゃ!ってな!
あのバカ息子のことだ。きっと…無事だ」
シン「大丈夫だよじぃじ。父さんは強い。何か帰れない事情があるか、身動きが取れない状況とかなんだと思う。だから俺らが助けに行かなきゃ!」
コウ「そうだな!父さんならきっと大丈夫だ。それよりじぃじも体に気を付けてな。俺らがいなくなっても大丈夫か?」
ライ「なに心配してんだ。お前ら鍛え上げたお師匠様だろうが!」
オト「コウ坊っちゃま。シン坊っちゃま。心配なさらないで。私たちがついておりますから」
コウ「心配っていうか…ほらじぃじは俺とシンがいないと…な…」
ライ「確かに。孫バカだもんな。嫌じゃぁ〜離れたくないんじゃ〜とか言って泣き出すしな。コウがラグノリアに行く時もそうだったし」
オト「あの時はついて行くというのをお止めするのが大変でした…」
オキナ「これ!誰が孫バカじゃ!ワシにとってシンとコウはな…」
ライ「またはじまったよ…」
シン「ふふふ!俺は優しくて時に厳しいじぃじが大好きだよ!だから必ず帰ってくるから!待っててよ!」
コウ「あぁ、必ず父さん見つけて母さんを苦しめた病気を俺らでぶっ潰してくる」
オキナ「う…うぉぉ…な、なんていい子達なんじゃぁ泣」
号泣するオキナに周りは苦笑いしつつも本当に信頼し仲がいい家族だと再確認できた。
オキナ(本当に大きくなりおった。あんな小さかった子供達が…)
コウ・シン「じゃぁ行ってくる!必ず帰ってくるから!」
オキナ「あぁ…待ってるよ。」
(やっぱりわしもこっそりついていこう)
ライ「オキナ様。まさかついてこうなんて思ってないでしょうね?」
オキナ(ギクッ!!?)
オト「だめですよ。オキナ様。この村の統治もまた村の領主であるオキナ様の大事なお仕事ですから。」
オキナ「い、いやわしはついていこうなどおもっとらんよ?!」
シン「じぃじと旅するのも楽しそうだけどね笑」
コウ「大丈夫だよじぃじ。それじゃ行ってくる」
大きく手を振るシン。
オウコよりも背が高く、勇敢になったコウ。
コウとシンの背中が遠ざかる。
震えるオキナの手。
ぐしゃっと握られる杖。
涙を堪えるように顔を上げる。
オキナ「行ったか…」
オト「大丈夫ですよ。コウ坊っちゃまは風神と言われたゲンヤ様のご子息。
才能だけで言えばゲンヤ様を凌ぐほどの天才。
シン様は雷帝であるあなたと雷神と呼ばれたオウコ殿の血を引きどんな修行にも弱音を吐かずついてまいりました。
心配なさらずとも無事に帰ってきますよ」
ライ「オキナ様と俺らが鍛えたんだ。その辺のちんちくりんになんか負けねーよ。少しは孫離れしてください」
オキナ「そう…じゃが…というかライはワシに冷たくない?」
ライ「ほら。仕事片付けますよ」
オト「きっとユキちゃんも見守ってくれます。」
オキナ「そうじゃな…」
オキナはそっとユキの墓の前に座り、線香をたて手を合わせる。
オキナ「ユキさんや…2人は行ってしもうた。
父を探しユキさんを苦しめた病気の原因を突き止めるんじゃと…
ほんと親に似て正義感が強く立派な子達じゃ。」
オキナ「どうか2人を見守っておくれ。」
ライとオトも手を合わせ2人の旅の無事を願う。
ーーーーーー
大好きな祖父や修行をつけてくれたライとオト達に別れを告げ、2人は旅に出る。
シン「ところで今更だけどさ魔大陸ってどーやって行くんだ?」
コウ「魔大陸に行くには大まかにふたつのルートがある。
1つは船でいく方法。
だがこれは現実的じゃない」
シン「なんでだ?」
コウ「海にはキケンな海洋生物もいるが、なにより魔大陸周辺の天候は荒れやすい。よほど船の操縦に慣れたやつじゃなきゃ無理だって話だ。
それに俺らは船を用意する財力もない。」
シン「じゃぁもう1つの方法は?」
コウ「これは父さんも使った方法だが、ノムア大陸の12国王全てに魔大陸に行っても大丈夫だという許可を貰い、ノムアの中心にある魔大陸へのゲートを使う方法だな…」
シン「め、めんどくせぇ…」
コウ「父さんほどの偉業と強さがあれば俺らだけでも可能だが、まず今の俺らの力じゃ認めてもらうことはかなり難しいだろう」
シン「え!?じゃぁどうするんだよ!」
コウ「まず魔大陸を探索できるほどの強さを持つ仲間を集める。
そして各国に行き、このメンバーなら大丈夫だと認めてもらうしかないな。
まず今よりもっと強くなるために修行は必要だな」
シン「まだ修行かよ!!というかコウ兄より強いやつなんて父さんとじぃじくらいでしょ!」
コウ「シンは村からでたことないだろ?だからわからないかもしれんが、他の国には俺以上の強さを持った連中が何人もいる」
シン「ま、まじか…コウ兄やじぃじや父さんが最強だと思ってた…」
コウ「世の中そんな甘くねぇし上手くいかねぇってことだ笑」
シン「でも、魔大陸みたいな危険な場所、一緒に来てくれる奴なんていんのかよ?」
コウ「まぁ普通は行きたがらないだろうな…
ただ2人だけ俺に心当たりがある。俺がラグノリアへ修行に出た時に出会ったヤツだ。」
シン「おぉ!で、その人達はどこにいるんだ?」
コウ「手紙を送ってある。ラグノリアで合流する手筈になってるよ。」
シン「さすがコウ兄だ!」
コウ「ふっふっふ!頼れるお兄ちゃんだからな!
あ、シン。ラグノリアに行く前に少し寄り道していいか?」
シン「もちろんさ!ゲンヤおじさん達に挨拶していくんだろ?」
コウ「あぁ。俺の親父やお袋、村のみんなの墓参りを魔大陸に行く前にしていきたいんだ。
次はいつ来れるかわからないしな。」
コウのシノビの里はシンたちの村からはさほど離れてない場所にあった。
今は見る影もない里だが、里の人達の墓だけは綺麗に清掃してあった。
コウは静かに墓石に触れた。
コウ
「……俺がもっと強ければ。」
その声は小さく、
風に消えそうなほど弱かった。
コウは墓石を見つめたまま黙る。
ギリッ…
静かに握られる拳。
爪が食い込み、血が滲む。
シン
「……コウ兄?」
コウ「……いや。なんでもない。」
墓の前で手を合わせる2人。
線香の煙がゆらゆらとたちのぼり、まるで2人が来たことに喜んでいるかのように見えた。
コウ「親父、お袋、村のみんな。当分ここにも来れないな。」
シン「みんな!心配しないで見守っててね!」
シン「コウ兄の事も守れるくらい俺強くなったよ!」
コウ「まだ俺に1回も勝ったことないやつが何言ってんだよ笑」
シン「うるさい!いつか絶対コウ兄の事も倒せるくらい強くなるからな!」
コウ「楽しみにしてるよ笑」
2人はラグノリアまでの道を笑い、じゃれ合いながら進んだ。
ラグノリアへ行くにはフォルナ大森林を通る必要があったが、この森には多くのモンスターが生息している危険な森だった。
シン「なんだよこの森!
モンスター多すぎだろ!」
イモムシのようなモンスター
「キュェェェェ!」
シン「しかも気持ちわりぃ!!」
コウ「まぁ森だしな。ちなみにこいつはフォレストワームだ。こいつの粘液超臭いから気を付けろよ。」
フォレストワームを倒すシン。
シン「くっさ!気持ちわりぃ!てかコウ兄も戦ってくれよ!」
コウ「え。やだよ。俺虫嫌いだし。」
シン「…はぁ。昔から虫だけは嫌いだもんな…」
コウは虫が大の苦手だった。
見るだけで鳥肌がたつほどだ。
シンは森の険しい道を進みながら、襲いかかる虫や植物型のモンスターを次々となぎ倒していた。
だが、疲労は少しずつ蓄積していく。
シン「ねぇーまだつかないのかよ。もう歩くのも戦うのも飽きたよー」
コウ「俺の事倒そうってやつが何言ってんだよあと2日は歩きっぱなしだ」
シン「そんな歩くのかよ…」
ガサッ
コウ・シン「?!」
突然の物音に緊張が走る。
草むらから現れた謎の影。
変な仮面。
短い足。
沈黙。
シン「……豚?」
ブビィ「誰が豚だぁ!」
コウ「なんだお前」
シン「すんげぇ!豚が喋った!」
ブビィ「 おいこらぁ!俺は豚じゃねぇ!おいらはブビィ!泣く子もだまる山賊団の頭領ブビィ様とは俺の事よ!」
コウ「ブヒィ?」
シン「鳴き声?」
ブビィ「ブヒィなんて言ってねぇ!ブビィだ!山賊団頭領のブビィ様だ!」
コウ「山賊団って…」
シン「お前一人しかいねぇじゃねぇか!」
ブビィ「い、いまはまだ1人だがな!これからノムア大陸の大山賊として恐れられる頭領になるって決まってんだよ!」
コウ「シン。行くぞ。こんな奴にかまってる時間は無い」
シン「ごめんよ!俺ら急いでて遊んでやる時間ないんだ」
ブビィ「ちょ!待てよ!」
コウ「なんだよしつけーなー。」
ブビィ「おい!俺と勝負しろ!負けたら身ぐるみ全部おいてけ!まぁどうしてもお前らが俺様の強さに惚れ込んで部下にしてくださいって言うならきいてやらねーこともないけど…」
シン「山賊なのに殺さないんだな」
ブビィ「は!?あ、当たり前だろ!
命まで取ったら後味悪ぃじゃねぇか!」
コウ「はぁ…シン。ラグノリアに行く前に肩慣らしで相手してやれ」
シン「おう!山賊って名乗ったからには容赦しねーかんな!」
ブビィ「そっちのちっこいのが相手か!いいだろうかかってこい!ただ俺様は勝負は1回きりだ!ちっこいのが負けたら2人まとめて部下になれ!」
(ふふふ、ちっこい方が相手で助かったぜ、でかいのはなんか強そうだしな…)
シン「誰がちっこいだ!行くぞ覚悟しろブタァ!」
ブビィ「だ、だれがブタだぁ!覚悟しろよちびすけ!」
ドゴッ!!
ブビィ「ぐふっ!?」
バキィッ!!
ブビィ「ぐえっ!!」
シンの圧倒的な武術に押されるブビィ。
誰が見ても実力差は確かなものだった。
シン「雷光波!」
雷が森を裂く。
地面が抉れ、
木々が吹き飛ぶ。
ブビィ「ぶひぃぃぃぃ!!?!?」
――だが。
次の瞬間。
ブビィの姿が消えていた。
シン「え?」
コウ「……避けた?」
遠くの木の上。
ブビィがガタガタ震えている。
ブビィ「し、死ぬかと思ったぁぁぁ!!!」
コウ(今のを避けた……?
ただの雑魚じゃないな)
ブビィ「こ、今回は見逃してやる!」
驚く程の速さで森を駆け抜けるブビィ
シンとコウも呆気にとられる
コウ「シンよくやった。さすが俺の弟だ!」
(まだ荒削りだが確実に強くなってる。潜在能力はピカイチ。さすが父さんの血を引いてるだけあるな)
コウ「しかしあいつなんだったんだ…」
シン「すごい速さで森を抜けていったよ!」
コウ「あぁ…俺でも追いつけるかわからないくらい速い…」
シン「でも残念。友達になりたかったよ。なんか面白そうなやつだし」
コウ「あんなのと友達になりたいか…?」
シン「なんかあいつは山賊なんて言ってるけどいい奴な気がするんだ」
コウ「まぁ、今度会ったら友達になってやれ。
ほら。先を急ぐぞ」
ーーーー
ようやくラグノリアに着いたシンとコウ。
そしてもう一人ラグノリアについた金の髪をなびかせた少女。
??「やっとラグノリアについたわ。姉さんを助けてくれる人達をはやく見つけないと…」
???「お願い……間に合って……」
少女は胸元のペンダントを強く握りしめた。
その瞳には焦りと恐怖が滲んでいた。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
APOLLO 第3話でした!
今回は、いよいよシンとコウが村を出て、
本格的な旅へ踏み出す回でした。
ユキのお墓の前での決意。
オキナ達との別れ。
そしてコウの故郷への墓参り。
明るく前向きに旅立つシン達ですが、
その背中には、それぞれ失ったものや背負っているものがあります。
特にコウは、普段は頼れる兄貴分ですが、
シノビの里を失った過去をまだ心の奥に抱えています。
シンとコウは似ているようで、
背負っている痛みも、強くなりたい理由も少し違います。
だからこそ、この二人が兄弟として支え合いながら進んでいく姿を、
これから大切に描いていきたいです。
そして今回、ブビィが登場しました!
山賊を名乗っているのに、
命までは取らないと言ったり、
妙に憎めなかったり、
でも実はとんでもない速さを持っていたり。
今後どう関わってくるのか、
ぜひ楽しみにしていてください!
そして最後に登場した金髪の少女。
彼女がなぜラグノリアに来たのか。
姉に何が起きているのか。
次回から、シン達の旅はさらに大きく動き出していきます。
もし少しでも
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思っていただけたら、
応援・コメント・フォローしていただけると本当に励みになります!
ここからAPOLLOの世界は、
どんどん広がっていきます。
次回もよろしくお願いします!
――岡本 煌




