第一章旅立ち編 2話 喪失の先にあるもの
崩壊した地球で命を落とした少年・太陽。
女神ルリによって魂を救われ、
“シン”として新たな世界に生まれ変わった。
そこは、
魔法と剣、
そして神々の伝承が残る世界。
優しい家族。
頼れる兄。
穏やかな日常。
失ったはずの幸せを、
シンは少しずつ取り戻していく。
――だが。
平和の裏では、
静かに“世界の歯車”が狂い始めていた。
母を蝕む未知の病。
危険な魔大陸。
帰らなくなった父。
そして、
世界の闇で動き出す“悪神教”。
これは、
少年達が“運命”に立ち向かうまでの物語。
APOLLO 第2話
「喪失の先にあるもの」
よろしくお願いします!
APOLLO第一章旅立ち編
2話喪失の先にあるもの
庭を駆け回る二人の少年。
黒髪の少年が、
笑いながら餅を抱えて逃げる。
その後ろを、
金と黒の虎模様の髪をした少年が追いかけていた。
シン「待てよーー!コウ兄!」
コウ「ほら!早くしないとお前の分の餅も食っちまうぞ!」
縁側では、
白と黒の長髪の女性が優しく笑っている。
ユキ「大丈夫よ〜。ちゃんと皆の分あるから」
――俺の名前は太陽。
今は“シン”として、
この世界で生きている。
生まれ変わってから5年の月日が流れた。
俺は、崩壊していく地球で死んだ。
化け物になった親父に殺され、女神と出会い、気付けば“シン”として生まれ変わっていた。
空を見上げる。
青空の向こうには、巨大な星々が浮かんでいた。
赤い星。
輪を持つ星。
まるで宇宙そのものが、空に貼り付いているみたいだった。
コウ「どうした?シン!」
この黒髪の青年はコウ・サンダラ。
俺の兄にあたる人物。
と言っても血は繋がっていない。
元々コウの家系は、代々シノビという地球でいう忍者のような一族だった。
サンダラ家とは親戚にあたる関係らしい。
しかし、俺が産まれる一年前。
コウが住んでいたシノビの里は滅ぼされた。
たった一人生き残ったコウは、俺の父さんと母さんに引き取られた。
シン「いや…空に浮かんでる星がたくさんあるなって…」
コウ「星に興味があるのか!よし!兄ちゃんが教えてやる!まずあの大きなでかいやつが太陽だ!そしてあそこにある星が確か水星で、輪っかついてるのが木星で、赤っぽいやつが火星で…あとはなんか色んな星がある!」
シン「太陽…」
コウ「でかいだろ!太陽は星の王様なんだぞ!全部の星に暖かい光を与えてるんだ!そして星にはそれぞれ神様が住んでるらしい!昔話だし俺は見た事ねぇけど」
シン「神様…か」
俺の住んでいた地球では空は黒く覆われていてこんなに青く明るいものだと思ってなかった。
写真とかで昔の地球の空は見たことがあるが、その写真とも少し違う気がする。
まず木星や火星なんかは地球からは望遠鏡とか使わないと見えないと書いてあったが、この星では肉眼で見える。
シン(やっぱり俺の知ってる地球ではないんだろうか?)
コウ「シン!見てみろ!いくぞ!」
コウ「黒嵐!(コクラン)」
コウはおもむろに手を広げて庭にある桃色の花が咲く木に黒い暴風みたいなのを生み出した。
シン「す、すげぇ」
コウ「すげぇだろ!これが魔法だ!」
この世界では体の中に魔力と獣力というものがあるらしい。
魔力とは体のなかにあるエネルギーみたいなもんで獣力とは魂に刻まれた人それぞれが持つスキルらしい。
俺にはチンプンカンプンだったがひとつ言えるのはここは俺が知ってる地球ではない。
コウ「いいか!魔力を込めて自分の属性にあった技を一気に放出するんだ!それが魔法だ!」
シン「…コウ兄…あの桃の木は母さんが育ててたやつじゃ…」
コウ「…し、しまった。母さんに怒られる!シン!頼む!俺がやったって言わないでくれよ!」
シン「どうしよっかな〜!」
コウ「た、たのむよ!」
俺とコウはとても仲が良く
コウはこの世界のことをたくさん教えてくれた。
まずこの星は地球という名前で俺が生まれ変わる前と同じ星の名前だ。
景色はだいぶ違うが…
そしてこの世界では魔法が当たり前に使えて
皆それぞれ自分に合った魔法や武術や剣術を鍛え
自分に合った仕事につくらしい。
昔は戦争の絶えない国だったが
今はそれぞれの国を治める王達によって不可侵条約が結ばれ平和になったと聞いた。
シン(剣と魔法の世界か…ガッツリファンタジーって感じだな。こーゆう転生した時ってすげぇスキル持ってたり、ガッツリチートってイメージが強かったけど、普通に努力しないと魔法は使えないし才能や遺伝的な方が大事って感じらしい)
オウコ「おりゃーー!捕まえたぞー!お前ら!」
コウ・シン「う、うわぁー!」
この人はオウコ・サンダラ。
俺の父親にあたる人物だ。
俺やコウが産まれるよりも前にあった異種戦争という大きな戦いで英雄と呼ばれた男らしい。
俺の目にはただの子供と奥さんが大好きな親バカにしか見えないが…
俺が小さい時にはハイハイができるようになっただけで天才だ!と村中に騒いでいたくらい親バカだ。
ユキ「ほんとにもうあなたったら!シンとコウが大好きね〜」
この人はユキ・サンダラ。
俺の母親にあたる人物だ。
白と黒の長い髪で、身体が病弱だがとても優しく、いつも子供の事を考えてくれる母親だ。
少しおっちょこちょいで天然っぽい所があるが明るく素敵な女性だ
ユキ「ちょ、ちょっと待って…あのボロボロになった木はもしかして…」
コウ「やばい!逃げろーー!」
シン「待ってくれよ!コウ兄!」
俺はシンという少年として何気ない日常を過ごしていた。
太陽として生きてきた時の記憶はそのまま残っている。
俺がこの家にシンとして生まれ変わったのはなにか意味があるんだろうが今のところさっぱりわからない。
女神が言っていた、全てが終われば全てが元通りってのはきっと…みくを生き返らせることができるってことだよな。
ならやることは1つだ。
俺が生まれ変わってから5年の間に得た知識をまとめると
・この星は地球であって俺が知る地球ではないこと
・魔法があり、不思議な力を持っているのが当たり前の世界
・そしてこの世界ではノムアという大陸があり12の国が作られている。
その中の1つアリエルガという国が俺が住んでいる国でありアリス王女が統治している国だ。
俺らが住むアリエルガの他に11の国がある。
そしてそれぞれの国には王や王女がいる。
・ノムア以外にも大陸があるがとても人が近付けない魔境ばかりでそれらを総じて魔大陸と呼ばれているそうだ。
普通こーゆう転生した時ってなにか使命を与えられたり
とんでもないスキル持たせられたり
勇者だったり
そんなふうに思ってたがそんなこともないらしい。
だが俺にはどうしてもやりたいことがある。
みくを生き返らせること。
女神が言っていた全てが終われば全てが元通りになるってのは俺が女神ののぞみ通り世界を救えばみくが生き返るってことだと俺は思ってるからだ。
みくにもう一度会えるなら世界でもなんでも救ってやる。
ただ世界を救うにもこの世界は平和そのものな気もする。
強いて言うなら魔大陸から持ち込まれたウイルスが流行していて流行りのインフルエンザみたいになってることくらいか。
母であるユキもその病気にかかっているが咳がたまに酷くなるくらいで他の症状は今のところない。
ユキ「ゲホッゲホッ」
オウコ「ユキ!大丈夫か?無理するな」
ユキ「あなたごめんなさい…少し休むわ…」
オウコ「あぁ…」
コウ「母さん大丈夫かな…」
オウコ「大丈夫だ!少し風邪が長引いてるだけだ!きっとすぐ良くなる」
心配そうに見つめるオウコとコウとシン。
大丈夫だというオウコの目には不安そうな表情が隠しきれていなかった。
老人の声「オウコや、ちょっと来てくれんか」
コウ「あ!じぃじ!おかえり!」
シン「じぃじ!」
老人の声「おぉおぉ〜可愛いのう〜ちぃっとお父さんと大事な話があるでのお前らは外で遊んでなさい。」
老人の声「ライ、オト、2人と遊んでやっておくれ」
ライ・オト「かしこまりました。オキナさま。」
この老人はオキナ・サンダラ。
シンとコウの祖父にあたる人物。
オウコの父親でもあり、昔は雷帝と呼ばれるほど恐れられた武人だったらしい。
そしてライとオト。
コウとは違うシノビの里出身でオキナの側近として一緒に住んでいる。
謎が多いが2人ともとても優しくしてくれる。
ライは顔を隠していて何考えてるか分からないがどんなときでも全力で遊び相手をしてくれる
オトは美人でキツそうな顔をしているが魔法の勉強や世界の知識を教えてくれる。
…あと…
オト「シンぼっちゃま?」
シン「な、なんでもない!」
妙に大人っぽくて、目のやり場に困る。
だめだ。
俺にはみくという心に決めた人がいるんだから…!
誘惑に負けるな!俺!
そんなこんなでいつも通りの日常を過ごしていたらいつの間にか俺も6歳になった。
コウは11歳になり本格的な魔法や武術や剣術の修行に入っていた。
ユキ「あら、ゲホッゲホッ…シンったらまたコウの修行を見てるのね...ゲホッ」
シン「母さん無理しないで、休んでて?」
ユキ「少しでもコウとシンの…ゲホッ…そばに居たくてね。」
ユキの咳は、
日に日に増えていった。
最初は、
「少し風邪気味なだけ」
そう笑っていた。
でも今は違う。
食卓で笑っている最中も。
洗濯物を干している時も。
夜、
俺たちが寝静まった後も。
苦しそうな咳の音が、
家のどこかから聞こえてくるようになった。
そして流行しているウイルスは治療薬が見つかっておらず
父であるオウコは色々な国を巡って治療できる方法を探していた。
ユキ「シンとコウが大きくなっていく姿をみるのが何より嬉し…ゲホッゲホッ」
シン「か、かあさん?!」
ライ・オト「おくさま!」
コウ「かあさん!大丈夫か?!」
梅雨もあけはじめた頃母さんが倒れた。
すぐに祖父のオキナが医者を呼んでくれたが医者も治療薬がないためなにもできないそうだ。
母のユキが倒れてから3日後、父のオウコが帰ってきた。
オウコは一目散に母の元へ駆け寄ると、すぐ俺らの元に来た。
オウコ「よく聞け。お前ら。母さんは恐らくもうそんなに長く病気とたたかえない。」
シン「そ、そんな…」
コウ「どうにかして助ける方法はないの?!」
オウコ「未知のウイルスだ。俺にもどうしようもない…が一つだけまだ確かめてない場所があるんだ。」
シン「確かめてない場所?」
コウ「まさか…!絶対だめだよ!父さん!魔大陸は危険すぎる!」
オウコ「それしかない。それに父さんが強いのはお前らが1番わかってるだろう!大丈夫だ。」
コウ・シン「父さん…」
オキナ「オウコ。魔大陸にいったとてユキさんの治療法を見つけるアテがあるんじゃろうな」
オウコ「アテ…ねぇ。眉唾な情報ならあるが確信なんてねぇよ。」
オキナ「じゃったら、そんな危険な場所に…」
オウコ「親父。俺はさ、自分の大切な女が苦しんでる時に何もしてやれないなんて…そんな情けない背中をこの子らに見せたくねぇんだ」
オキナ「しかし、シンはまだ6歳じゃ!コウも11になったばかり!ユキさんに万が一なにかあってそのうえお前までなにかあったら…」
オウコ「大丈夫だ。俺だぜー?雷帝の息子で、あんたを超える雷神の異名まで持ってるこの俺がそう簡単にくたばるかよ」
オキナ「し、しかし!」
オウコ「あんまり時間はねぇ。行ってくる。既に12国王の承認はとってあんだ」
オキナ「まったく…言い出したら聞かないのは昔からじゃな…」
シンとコウを抱き上げるオウコ。
オウコ「俺は欲張りだからよ、コイツらとユキと家族みんなで笑いあって過ごしてぇんだ。」
コウ「父さん…」
オウコ「コウ!シン!すぐ帰ってくる!母さんを頼む。」
シン「父さん!!」
オウコ「ん?」
俺はこの背中を知ってる。
太陽だった時に嫌という程みてきた。
誰かのためになにかを成し遂げようとする背中。
でも成し遂げた人なんてみたことがない。
行かせたらだめだ。
そう思っても行かないでなんて言えなかった。
シン「帰って…きてよ」
オウコ「あぁ!すぐ帰ってくるさ!いってきます!」
コウ「父さん!俺がシンや母さんを守るから!早く帰ってきてよ!」
こちらを振り向くことなく、
父さんは片手を上げた。
空は、
まるで引き止めるみたいに泣き出していた。
突然降り始めた雨が、
父さんの背中を濡らしていく。
その背中は、
寂しそうで。
それでも、
誰よりも勇敢に見えた。
ユキ「あなた…ごめんなさい…私のために…」
ーーーーーーー
その二年後俺は8歳になり。
コウは13歳になった。
そして母のユキが亡くなった。
すぐ帰ってくると言った父親は帰ってこずなんの手掛かりもない。
祖父のオキナが国に搜索申請をだしたが
国にも魔大陸に人を探しに行ける余裕や探しに行けるほどの力を持った人材がいないという理由で断られた。
シン「父さん帰ってこなかったね」
コウ「あぁ…」
シン「もう帰ってこないのかな…」
コウ「そんなわけあるか!あの父さんだ!きっと無事だけど、なにか事情があるんだよ!」
シン「でも…」
コウ「シン!お前は父さんに会いたいか!?」
シン「そりゃ会いたいよ!」
コウ「じゃぁ俺らで探しに行こう!」
シン「さ、さがすってどうやって」
コウ「魔大陸に行くぞ。」
シン「無理に決まってるじゃないか!俺らの力じゃ…」
コウ「強くなるんだ。俺らが魔大陸に行っても大丈夫だって証明するために!」
シン「コウ兄…わかったよ!強くなろう!」
コウ「あぁ!!」
コウは真っ直ぐな男だった。
そんな男に影響されたのか俺はみくを救う以外にも目標ができた。
親父を探し、母親のユキと同じ病気にかかってしまった人達を救う事だ。
これが世界を救うに繋がるかはわからないが、今はとにかく力が足りない。
そして俺とコウは祖父であるオキナや、ライとオトに地獄のような修行をつけてもらった。
血が滲もうが、
骨が軋もうが、
俺は修行をやめなかった。
倒れても立つ。
吐いても走る。
拳が壊れても、
また握る。
弱いままじゃ、
誰も守れない。
俺は10歳になり修行を継続。
コウ兄は15歳になりオキナから、アリエルガ国の中心首都のラグノリアに修行にいかされた。
3年後コウ兄は一回り二回り以上逞しくなり帰ってきた。
いつのまにか父のオウコよりも背が高くなっていた。
久々にあったコウ兄と手合わせしてもらったが
人間離れした怪物だった…いくらなんでも強すぎる…
俺はそんなコウ兄に修行をつけてもらいつつひたすら苦しい修行を乗り越えた。
そして2年後…
俺はシンとして15歳になった。
これから2人の大冒険の扉が開かれようとしていた。
ーーーーーー
〜魔大陸〜
世界各地で暗躍する禁忌の宗教組織
悪神教
黒い霧が蠢く。
まるで空間そのものが腐っていくようだった。
その中心に、
ひとりの男が座っている。
赤く光る瞳。
禍々しい魔力。
彼の背後では、
異形の獣たちが低く唸っていた。
謎の男「例の計画は順調だろうな」
異様なオーラを放つ男が問う。
謎の老人「ふぉふぉふぉ!全てがディコルプヌス様の計画どおりですぞぉ!」
妖艶な女「ちょっと〜!ディコル様〜!私頑張ったんだからご褒美ほしぃ〜♡」
堅物な男「黙れ!お前はいつもディコルプヌス様に無礼な態度をとりおって!」
軽薄な男「まぁまぁいいんじゃない♩仲間同士で喧嘩してもしょーがないでしょ♩」
ディコルプヌス「くふふ…いずれこの世界の全てが俺のものになる。この腐りきった世界を変える新たな神に私がなる。」
ディコルプヌス「偽りの神々は滅びた。これからは違う。“真の神は私だ”」
部下達の不気味な笑い声。
ディコルプヌス「さぁ世界を手に入れるぞお前ら!全ては悪神教のために!」
部下達「全ては悪神教のために。」
不気味な笑い声が、魔大陸の闇に響き渡った。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
APOLLO 第2話でした!
今回は、
シンが転生後どんな家族に囲まれて育ったのか、
そして“旅立つ理由”が描かれる回でした。
個人的に、
オウコというキャラクターはかなり好きです。
強くて豪快で、
ちょっとバカっぽくて、
でも家族を本気で愛している。
そんな“父親らしさ”を意識して書いています。
そして今回から、
少しずつ物語の裏側も動き始めました。
魔大陸。
悪神教。
ディコルプヌス。
シン達がまだ知らない場所で、
世界を揺るがす計画が進んでいます。
この作品は、
ただ強くなって敵を倒すだけの物語ではなく、
「守りたいもののために何を選ぶのか」
をテーマの1つとして描いています。
シンやコウ、
そしてオウコ達の想いを、
少しでも好きになってもらえたら嬉しいです。
次回からはいよいよ、
15歳になったシン達の旅が本格的に始まっていきます!
もし少しでも
「面白い!」
「続きが気になる!」
と思っていただけたら、
応援・コメント・フォローしていただけると本当に励みになります!
1つ1つ本当に力になっています。
次回もよろしくお願いします!
――岡本 煌




