第一章旅立ち編 1話 誕生
空が割れた日から、
世界は少しずつ壊れていった。
発展した文明。
終わりゆく地球。
守れなかった大切な人。
少年・大空太陽は、崩壊した世界の中で、
何も救えなかった自分を悔やみながら生きていた。
そしてある日、彼は命を落とす。
――だが、それは終わりではなかった。
女神ルリによって魂を救われた太陽は、
“シン”という新たな命として、異世界に転生する。
これは、ひとりの少年が、
世界を救い、失った未来を取り戻すための物語。
APOLLO 第1話
「誕生」
よろしくお願いします!
星が落ちる。
空が裂ける。
黒い神が笑う。
燃え崩れる世界の中、
ひとりの少年が大剣を握っていた。
シン「絶対に取り戻す。」
失った仲間も。
世界も。
これは、
ひとりの少年が、
世界を救い、
失った未来を取り戻すための物語。
現在――2315年。
地球は、もう終わりかけていた。
空は黒い雲に覆われ、
太陽の光すらまともに差さない。
文明が発展したその代償に、人類は壊れた。
他惑星へ移住した地球人同士による戦争。
異常気象による氷河期。
生物兵器実験の失敗によって生まれた“化け物”。
崩壊した街を、
そいつらは当たり前のように歩き回っていた。
食料は不足し、
生きるために人を殺すなんて珍しくもない時代。
そして今日、
俺と母さんは地球から逃げ出す。
——昨日。
俺がずっと片想いしていた幼なじみ、
未来は。
化け物に殺された。
太陽「結局最後まで言えないままだったな。」
墓とも呼べない瓦礫の山に俺は手を合わせ黙祷をした。
俺は大空太陽。
昔、空には“太陽”という光があったらしい。
それにちなんで、
大空を太陽で照らしてほしい。
この子が地球の希望になってほしい。
そんな大層な願いを込めて付けられた名前らしい。
太陽「俺にそんな大層な力なんてねぇし、自分の大切な人を守るどころか俺が守られてちゃ世話ねぇよな…」
_______
みく「またその顔してる。怖いんでしょ?」
太陽「うるせぇよ。」
みく「大丈夫。私が守ってあげるさ!」
太陽「俺だってみくのこと守れる…し」
みく「えーほんとにー?太陽弱虫だもんな」
太陽「そ、そんなこと…」
みくの顔が太陽に近付く。
みく「大丈夫。私が守ってあげるから!そのかわり、もしさまた普通通りの世界になれたら…」
太陽「なんだよ」
みく「ううん!やっぱなんでもない!」
_______
みくとの会話が鮮明に蘇る
化け物の爪が振り下ろされた瞬間、
俺の前に飛び出したんだ。
みく「……たいよう、無事でよかった」
血まみれになりながら、
みくは最後まで笑っていた。
きっと、
俺に辛い顔を見せたくなかったんだと思う。
でも次の瞬間、
みくの身体は化け物に引き裂かれた。
赤黒い血。
崩れ落ちるみくの身体。
俺はただ見ていることしかできなかった。
あの光景が、
今でも頭から離れない。
怒りより先に感じたのは、
恐怖だった。
助けなきゃと思った。
なのに俺の身体は動かなかった。
逃げたい。
怖い。
そんな感情ばかりが頭を埋め尽くしていた。
みくを守れなかったことより、
そんな自分自身が、
俺は許せなかった。
太陽「俺にもっと勇気があって、何か力があったら、みくのこと救えたのかな…」
母親「たいよう。もう行こう。」
太陽「…うん。」
俺の母親は、大空光。
名前の通り、
祖父母から“空を照らすひかり”になってほしいと願われて付けられた名前らしい。
母はその名に恥じない優秀な科学者だった。
生物兵器研究の第一人者。
父も同じ研究に関わっていた。
だが、生物兵器実験の事故に巻き込まれ行方不明になった。
母と何人かの研究者達は助かり、
今日故郷である地球を母と共に離れることになった。
母「ここからの道は化け物共もいないから大丈夫。あんたは私の後継いで研究者になっていつかこの腐敗しきった地球とほかの惑星を救ってもらうんだから…って聞いてんの?」
太陽「俺にそんなのできるわけねぇだろ…」
母「大丈夫。私の知識の全てをあんたに託すし、きっとあんたが生き残ったのにはなにか意味があるはずで…」
太陽
(正直みくがいないこの世界で生きていたくねぇな)
(友達はみんな死んじまった)
(他に生きてるやつなんてほとんど知らねーやつばっかり)
(なんでそんな奴らのために俺が世界を救わなきゃいけねぇんだよ)
そんなことばっかり考えていたからか、母に近付いていた化け物に気付くのが遅れた。
太陽「母さん!危ねぇ!」
咄嗟に母さんを突き飛ばす。
ーーーーーー
父「母さんを守ってやってくれよ」
太陽(こんな時に父親の言葉が頭に思い浮かぶ。危ない研究をしてるから、なんかあったら母さんを頼むって、いつも言ってたっけ。)
化け物の首には父親が付けていた母さんとお揃いのペンダントが見えた。
太陽「…化け物になってんじゃねーよ、親父」
母「やめてぇーーー!!!!」
母親の泣き声や怒声や色んなものが混じりあった声が聞こえた気がした。
でも目の前はすぐに真っ暗になった。
太陽(全身が痛い…気がする…そもそも俺化け物になった親父にぐっちゃぐちゃにされた気もするけどなんで意識あるんだろ…なんも見えねーや。これで俺もみくのとこへいけるかな。今度会ったらちゃんと好きだって伝えて…そして…)
??「…きて…」
太陽(誰か呼んでる…?)
??「起きて…」
太陽(すんげぇ優しい声だな。でも俺なんかすげぇ眠たいんだ。だからそっとしてくれよ)
??「お願い…起きて…」
太陽「ここは…どこだろ。」
眠たい気持ちを堪えて起き上がると
辺り一面、白いもやのようなもので覆われている。
植物らしきものが近くにあるのと水の音がどこからか聞こえてくる。
??「こっちだよ」
声のする方へ足を運ばせる。
先程まで鉛のように重たかった足は今は驚くほど軽くなっていた。
??「ようやく会えたわね、太陽」
そこには金髪で美しい女性が立っていた。
だが明らかに人間ではない。
神々しく光ってる。
太陽「あ…女神様?いや、天使?俺やっぱり死んだんだ」
??「ふふっ本当に可愛い私の坊や。大丈夫あなたはまだ死んでないわ。肉体のほうは消滅したけど魂だけ私の力でここに呼び戻したのよ」
太陽「は…え?俺死んでないのか?てか坊やってなんだよ、俺あんたの息子じゃないんだけど…てか呼び戻したって、いったい…てか誰だよ!?あんた!」
??「あなたは私の大切な子の1人よ。ごめんなさい。今はまだ詳しく話すことはできないの。ただあなたには救って欲しいの、この世界を。」
太陽「…世界を救うとか、誰かを助けるとか、ヒーローになるとかさ。俺漫画の主人公とかじゃないから。俺の母さんみたいなこと言わないでくれよ」
??「私は知ってるわ、あなたが誰よりも優しくて勇敢で困ってる人を放っておけない性格だってことをね。大丈夫。あなたが守れなかった人を守る力をあなたは持ってるわ」
太陽「…なんなんだよ。みくも友達も死んだ!親父は化け物になった!世界はボロボロな状態だ!それにそんな力があったとして今更…」
??「大丈夫。全てが終われば全てが元通りになる。」
太陽「は…?それっていったい…」
??「ごめんなさい。今は時間があまりないの。また会えるわ。太陽。私の可愛い坊や。」
金髪の女がそういった瞬間不思議な光に俺の体が包まれた。
太陽「な、なんだこれ…」
??「私はルリ。今は力の大半を失ってるけどこれでも女神なのよ」
太陽「は?ルリ?めがみ??」
ルリ「私以外の神は全て滅ぼされた。残った私にも力はない。あなたを送ることで精一杯」
太陽「いや意味わかんねぇよ、滅ぼされた?送るってどこ…」
俺が言いかけた瞬間目の前が真っ白になり俺は意識を失いかけ、体が強くどこかに引っ張られる感覚がした。
ルリ「お願い…世界を救ってね。太陽。」
ーーーーーーーーー
目の前が真っ暗で意識はあるのに体が上手く動かせない。なにか温かい場所のようだが自分がどこにいるかも分からない。
言葉をだそうとしたが言葉も出せない。
太陽(な、なんだここ。液体?体が動かせない、言葉も出ない…いったいどうなってんだよこれ…)
遠くから声が聞こえる。
野太い男の声「ユキ!頑張れ!俺が側にいる!」
子供の声「ユキさん!頑張って!」
女の声「もうすぐですよ!大丈夫!」
ユキ「あぁぁ!!いたい!!」
その瞬間俺にも激痛が走った。
太陽(な、何だこの痛み。やばい、痛すぎる!早く!ここから出なきゃ!!外の光が見える!)
太陽「オ、オギャーーー!!」
太陽(ようやく外に出れたと思って、声が出たと思ったら赤ん坊みたいな声しかでなかった。というか赤ん坊になってる?!)
女の声「う、うまれました!!元気な男の子ですよ!!!よかったですねぇ!!」
野太い男の声「お、おぉーー!ユキーー!よく頑張った!!ありがとう!すごいぞー!」
ユキ「はぁ…はぁ…可愛い、私の坊や」
太陽(……誰だ、この人。)
俺を抱きかかえる女性は、
とても優しい目をしていた。
苦しそうに息を切らしながらも、
まるで宝物を見るみたいに俺を見つめている。
どこか、
母さんに似ていた。
……でも違う。
顔も、
声も、
雰囲気も、
俺の知ってる“大空光”じゃない。
頭の中がぐちゃぐちゃだった。
なんで俺は生きてる?
なんで赤ん坊になってる?
ここはどこなんだ。
状況が何一つ理解できなかった。
子供の声「わ、わぁ…!可愛い!小っちゃい!」
太陽(……知らない人ばかりだ。)
俺を囲む大人たちは、
誰一人として見覚えがない。
優しそうに笑う女の人。
豪快に泣き笑いしてる男。
俺を覗き込んで目を輝かせてる黒髪の子供。
……ここはどこなんだ。
俺は、
死んだはずじゃなかったのか。
頭の奥に、
昔読んだ漫画の記憶が浮かぶ。
“異世界転生”
死んだ人間が、
別の世界で新しい人生を始める物語。
……まさか、
俺が?
でも、
今はそんなことを考える余裕もなかった。
身体は小さく、
まぶたは鉛みたいに重い。
みんなの声を聞きながら、
俺の意識はゆっくり闇へ沈んでいった。
ユキ「寝ちゃった…可愛い…ほんとに…私とあなたの子なのね、オウコさん。」
オウコ「あぁ。ほんとにありがとう。よく頑張ったな。ユキ愛してるよ」
子供の声「僕もいる目の前でイチャイチャしないでくれよオウコさん…」
オウコ「あ、あぁすまない。コウも付き添ってくれてありがとう。お前の弟みたいなもんだ!ほら!抱っこしてみろ!」
コウ「弟みたいじゃなく、弟でしょ。オウコさんとユキさんは俺の父さんと母さんになってくれたんだから」
オウコ「コウ…今父さんと母さんって…」
ユキ「コウくん…」
コウ「本当に可愛い…俺が命をかけてでも守ります!お兄ちゃんだから!ね!父さん母さん!」
オウコ「コウ…な、何言ってんだ!コウもこの子も俺が守ってやるさ!お父さんだからな!!」
ユキ「オウコさんったら…あ、そうだわこの子に名前をつけないと…」
オウコ「うむ!シンにしよう!」
ユキ・コウ「シン?」
オウコ「あぁ。芯が通った真っ直ぐな男になって欲しいって意味を込めて、シンだ!」
ユキ「シン…素敵な名前…」
赤ん坊を抱き上げて掲げるオウコ。
オウコ「お前の名前はシンだ!サンダラ家に産まれてきてくれてありがとう!」
女の声「だ、だんなさま!まだ首もすわっておりません!そんな高くあげてしまうと…!!」
オウコ「あぁ!すまない!いやぁ〜ほんとに可愛いでしゅね〜!」
コウ「伝説の英雄ってのは皆親バカなんですね…笑」
ユキ「そうね笑 シン〜!ママとパパとあなたのお兄ちゃんよ〜」
俺はどうやら生まれ変わったらしい。
なんのために生まれ変わったのか。
あのルリという女神は何者なのか。
ここは地球なのか。
いや――絶対に違う。
窓の外に広がる空には、
俺の知る世界には存在しない星々が浮かんでいた。
太陽(異世界転生ってやつ……か……?)
かつて、
幼なじみを失い。
母を守れず。
化け物へと変わり果てた父に殺された少年は、
“シン”という新たな命として、
もう一度、世界に生まれ落ちた。
これは、
ひとりの少年が、
世界を救い、
失った未来を取り戻すための物語。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
改めまして、
APOLLO 第1話「誕生」でした。
この作品は、
「もし世界が本当に壊れてしまったら」
「大切な人を守れなかった少年は、その後どう生きるのか」
そんなことを考えながら書き始めた物語です。
主人公・太陽は、
誰かを救えるような特別な人間ではありません。
恐怖で動けなくなるし、
後悔もするし、
自分の弱さに苦しみ続ける普通の少年です。
だからこそ、
そんな彼が“シン”として新しい世界で何を選び、
どう成長していくのかを大切に描いていきたいと思っています。
そしてAPOLLOは、
ただの異世界転生では終わりません。
崩壊した地球。
神々の存在。
魔大陸。
星々に隠された秘密。
全てが少しずつ繋がっていきます。
この先、
笑える仲間との出会いもあれば、
残酷な別れや、
世界の真実も待っています。
シン達の旅を、
ぜひ最後まで見届けてもらえたら嬉しいです。
もし少しでも
「面白い」
「続きが気になる」
と思っていただけたら、
応援・コメント・フォローしていただけると本当に励みになります!
1つ1つめちゃくちゃ嬉しくて、
執筆の力になっています。
ここからAPOLLOの物語は、
一気に広がっていきます。
次回もよろしくお願いします!
――岡本 煌




