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四章カストリア編24話 復活の風

風は、誰かを導くために吹く。

その日、風は一人の少女を運んできた。

誰もまだ、その出会いの意味を知らない。


神話×魔法×ファンタジー物語


第24話楽しんでってください。

馬車はゆっくりと街道を進んでいた。


リアの村を離れ、


周囲には背の高い木々が増えていく。


ネビュラ「この道、静かだな。」


アラン「王都へ向かう一本道や。」


ヴィーラは窓から外を眺める。


ヴィーラ「綺麗……。」


風に揺れる草花。


木漏れ日。


鳥たちのさえずり。


昨日までの賑やかな村とは違い、


自然だけが静かに息づいていた。


シン「平和だな〜」


コウは地図を見ながら呟く。


コウ「もうすぐゼフィリアの森に入る。」


その一言で、


馬車の空気が少しだけ張り詰めた。


バウス「……行方不明者が出てる場所か。」


コウ「あぁ。」


御者が手綱を強く握る。


御者「正直、この森はあまり好きじゃありません。」


ネビュラ「なんで?」


御者「……変な事が多いんです。」


シン「変な事?」


御者は頷いた。


御者「誰もいないのに名前を呼ばれたとか。」


御者「子供の笑い声が聞こえたとか。」


御者「そんな話ばかりですよ。」


アラン「気味悪い話やな。」


御者「なにもないといいんですがね……。」


ガタゴト……


馬車は森へ足を踏み入れた。


途端に、


空気が変わる。


木々は生い茂り、


昼間だというのに薄暗い。


ヒュウ……


風だけが静かに吹き抜ける。


シン「なんか寒くないか?」


ヴィーラ「はい……。」


ネビュラも辺りを見回す。


ネビュラ「誰かに見られてるような……。」


その時だった。


バサッ!!


馬車の前へ、


一羽の白い鳥が舞い降りた。


御者「危ない!!」


ギィィッ!!


馬車が止まる。


鳥は一度だけシン達を見つめると、


森の奥へ飛び去っていく。


ネビュラ「ただの鳥じゃん。」


コウは眉をひそめた。


コウ「……いや。」


バウスも地面を見つめる。


バウス「何かある。」


全員の視線が向く。


街道の脇。


草むらの中には、


横倒しになった一台の馬車があった。


シン「!」


近付く。


馬は繋がれたまま。


荷物も散らばっていない。


壊れた様子もない。


ただ――


誰もいない。


ネビュラ「え……。」


バウスは膝をつき、


地面へ手を触れた。


バウス「血の匂いがない。」


アラン「戦った跡もあらへんな。」


ヴィーラ「そんな……。」


シンは馬車の中を覗き込む。


誰もいない。


本当に、


人だけが消えていた。


その瞬間――


ヒュオオオオッ!!


森の奥から、


一際強い風が吹き抜ける。


全員が振り返る。


誰もいない。


なのに、


どこからか笑い声だけが聞こえた。


「……クスクス。」


シン「今の声……。」


コウは短剣へ手を添える。


コウ「全員、警戒しろ。」


森の奥から桃色の煙が流れてくる…


ヴィーラ「これは…睡眠属性の魔法ですね。」


コウ「皆!吸わないように気を付けろ。」


ヴィーラ「私に任せてください。」


ヴィーラ「聖浄光(セイジョウコウ)!」


ヴィーラの放つ魔法で霧がゆっくりと晴れていく。

霧が晴れたその先には大量のトレントとハーピー達がいた。


バウス「魔物の仕業だったのか…」


アラン「こいつら人攫ってなにたくらんどるんや…」


「オカシイ…ネムッテナイ…」

トレントが不思議そうな目で1人ずつ確認し、ハーピー達が手招きをしながら微笑んできた。


「フフフフ。コッチオイデ…」


ラン「ふせて!!」


響く少女の声に全員が反応する。


ビュオオオオオ!!


風の衝撃が辺り一面に走る。


シン「あ、昨日の!」


アラン「食い逃げ女やんけ!」


トレントとハーピー達はいつの間にか森の奥へ姿を消していた。


ラン「ふぅ!危なかったね!あたしが助けてあげたんだよ?感謝してよね!」


コウ「助かった…だが俺たちでも対処は充分できた。」


コウ「なんの目的で俺たちについてきた?」


ラン「べっつにー!暇だったし」


コウ「……。」


ラン「それより。」


ランが急に笑顔を消す。


ラン「この森、早く抜けた方がいいよ。」


シン「え?」


ラン「今日は森の様子がおかしいから。」


ネビュラ「今日は?」


ラン「うん。」


ランは森の奥を見る。


ラン「いつもならこんな大胆に襲わないのに。」


コウ「どういう事だ。」


ラン「普段は森の奥で大人しく暮らすハーピー達もいたでしょ?あんなに堂々と襲うなんて初めてなの…。」


その瞬間。


バサッ…!


空の上に大きな影。


全員が上を向く。


しかし何もいない。


バウス「気配が消えた。」


ヴィーラ「魔力も感じません……。」


ラン「……嘘でしょ。」


ラン「やっぱり…復活したんだ…」


ランの額に汗がたれる。


シン「復活…?」


コウ「まさか!」


ラン「天災鳥ヴェルフェザー。」


ラン「あたしのパパとママが命を掛けて倒したはずの魔物。」


ラン「……でも、それで終わりじゃなかった。」


シン「どういうことだよ!倒されたんじゃないのか?」


ラン「倒されたはずだった…でもなぜか復活したの。だから私はヴェルフェザーを止める事ができる力を持つものを探してたの!」


アラン「ヴェルフェザーを止める力を持つものやと?」


ラン「風が…あなた達ならヴェルフェザーを止められる存在だって教えてくれたの!」


コウ「つまりは…ヴェルフェザーを止めるために力を貸して欲しいということか?」


シン「そのヴェルフェザーが人を襲ってるのか」


ランは小さく頷く。


ラン「絶対そう。」


ラン「しかも……ヴェルフェザーは普通の魔物じゃない。」


ラン「風を喰らって生きる、厄災級。」


ネビュラ「風を喰う?」


ラン「風が吹けば吹くほど強くなる。」


アラン「なんやそれ……反則やないか。」


ラン「だからパパとママも……」


言葉を飲み込む。


拳を強く握り締めた。


シンはそんなランの横顔を見つめていた。


その時――


ヒュオオオオオッ!!


森全体が大きく揺れた。


バキッ!!


一本の大木が音を立てて倒れる。


ネビュラ「な、なんだ!?」


バサァァァッ!!


巨大な翼が羽ばたく音。


だが姿は見えない。


バウス「上だ!!」


全員が空を見上げる。


雲だけがゆっくり流れている。


何もいない。


ヴィーラ「見えません……!」


ラン「違う!」


ランが叫ぶ。


ラン「見られてる!!」


ゾクッ……


シンの背中を悪寒が走る。


まるで、


森そのものに見つめられているようだった。


ヒュウ……


風が止む。


静寂。


次の瞬間――


「キィィィィィィィィィィッ!!!!」


森中へ響き渡る、


聞いたこともない鳥の咆哮。


耳を塞ぎたくなるほどの轟音に、


馬達が一斉に暴れ始める。


御者「うわっ!!落ち着け!!」


馬は恐怖で暴れ、


馬車が大きく揺れる。


コウ「全員、馬車から離れろ!!」


シン達は一斉に馬車から離れる。


ランは空を睨みつけたまま、


静かに呟く。


ラン「……来る。」


ヒュオオオオオッ!!


森中を暴風が駆け抜ける。


バキバキバキッ!!


何本もの木々が一斉になぎ倒された。


御者「うわぁぁぁ!!」


馬達が恐怖で暴れ始める。


コウ「馬を落ち着かせろ!」


御者「む、無理です!!」


パニックになった馬は荷車を引いたまま森の奥へ走り出した。


シン「まずい!」


バウス「追うぞ!」


その時だった。


ドォォォォン!!


馬車の目の前へ巨大な木が倒れてくる。


アラン「危ない!!」


ドガァァン!!


アランが炎を纏った拳で大木を粉砕する。


木片が辺りへ飛び散る。


ネビュラ「今の風で倒れたのか?!」


ラン「違う。」


ランの表情が強張る。


ラン「この風…ヴェルフェザーだ…」


ヒュウ……


風が止んだ。


森が静まり返る。


鳥の鳴き声も、


虫の羽音も、


何一つ聞こえない。


ヴィーラ「静かすぎる……。」


シンは拳を握る。


嫌な汗が背中を伝う。


その瞬間。


キィィィィィィィィィィィィッ!!!!


耳をつんざくような甲高い鳴き声。


全員が思わず耳を塞ぐ。


ネビュラ「うわぁっ!」


バウス「くっ……!」


シン「なんだ、この声……!」


空を見上げる。


雲の向こう。


巨大な影がゆっくりと旋回していた。


翼を広げるたび、


森全体が暴風に包まれる。


ヴィーラ「大きい……。」


アラン「なんやあれ……。」


ランは唇を噛み締める。


ラン「間違いない……。」


ラン「天災鳥ヴェルフェザー。」


その名が森に響いた瞬間、


巨大な影が急降下を始めた。


ゴォォォォォォッ!!


風圧だけで木々がへし折れる。


コウ「全員散開!!」


シン「来る!!」

24話読んでいただきありがとうございました。


25話では森を支配する王との決戦。

そして、ランの運命を変える真実が明らかになります。

次回もお楽しみください。


岡本煌(オカモトコウ)

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