表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/32

第四章カストリア編23話 風の精霊

謎の少女、ランが残した言葉

物語の謎が少しづつ動き出す


神話×魔法×ファンタジー物語


第23話楽しんでってください。

リアの村 宿屋


ギィィ……


木製の扉が開く。


宿屋の主人「いらっしゃい!旅の方かい?」


コウ「あぁ。六人部屋を頼む。」


宿屋の主人「毎度あり!」


木造の宿は外観とは裏腹に広く、木の香りが漂っていた。


ヴィーラ「素敵なお宿ですね!」


ネビュラ「ベッドだぁーー!!」


勢いよく飛び込む。


バウス「壊すなよ……」


アラン「今日は疲れたわぁ……」


荷物を下ろし、旅の疲れを癒す。


シンは窓の外を眺めていた。


リアの村は夕日に照らされ、


黄金色に染まっている。


自然と町並みが溶け合うその景色は、


レグルスともラグノリアとも違う美しさだった。


シン「……いい村だな。」


コンッ。


突然、窓ガラスを小石が叩く。


シン「ん?」


窓を開ける。


誰もいない。


その時だった。


クスクス……


笑い声。


見上げると、


向かいの屋根の上。


ラン「よっ。」


シン「お前……!」


ランは寝転びながら手を振っていた。


ラン「暇。」


シン「は?」


ラン「この村つまんないんだよね。」


シン「いや、知らねぇよ。」


ラン「だから遊ぼ。」


シン「嫌だよ!」


ラン「えぇー。」


つまらなそうに口を尖らせる。


ラン「ねぇ。」


シン「なんだ?」


ランは笑みを消した。


ラン「なんで女神なんかに選ばれたの?」


シンの表情が固まる。


シン「……何言ってんだ…?」


ラン「隠さなくても分かるよ。」


ヒュウ……


風が吹く。


ランの前髪が揺れる。


ラン「私、そういうの見えるから。」


シン「……。」


ラン「まぁいいや。」


ニッ。


再びいつもの笑顔。


ラン「また遊ぼ。」


トンッ。


屋根を蹴る。


風を纏い、


少女は夕焼けの空へ消えていった。


シン「……なんなんだ、アイツ。」


その様子を、


宿の廊下から一人だけ見ていた人物がいた。


コウ「……。」


コウは何も言わず、


静かに窓を閉めた。


シン「コウ兄?」


コウ「……あいつは選ばれた奴だな。」


シン「え?」


コウ「風の精霊に選ばれた奴だ。」


シン「風の精霊…?」


コウ「まぁ俺もあまり詳しくはないが…」


シン「悪い奴なのか?そんな風には見えなかったけど…」


コウは少し考えるように目を閉じる。


コウ「昔から風の地方には、時折生まれるんだが…」


シン「何が?」


コウ「風の精霊に選ばれる奴だ。だが精霊を使いこなせないと自我をとられる…らしい。」


シン「自我をとられる…か…」


コウ「まぁ精霊絡みは面倒臭い。無理に絡まない方が無難だ。」


シン「……。」


コウは部屋を出て行く。


残されたシンは窓の外を見つめる。


シン(女神憑き……精霊に選ばれた子……。)


シン(あいつ、一体何者なんだ。)


______________


深夜。


リアの村外れ。


一本の大樹の上。


ランは枝に寝転び、


星空を眺めていた。


サワサワ……


風が木々を揺らす。


ラン「ねぇ。」


誰もいない夜。


ランは空へ向かって話しかける。


ラン「見つけたよ。」


静かな風が吹く。


ラン「女神様の痕跡。」


その瞬間――


ヒュオオオオッ!!


大樹を揺らすほどの突風。


ランは嬉しそうに目を細めた。


ラン「やっぱり。」


ラン「間違ってなかった。」


ニヤリと笑う。


ラン「面白くなりそう。」


風と共に、少女の笑い声だけが夜空へ消えていった。


______________


翌朝。


チュンチュン……


鳥達のさえずりが村中に響く。


リアの村は朝市の準備で活気づいていた。


宿屋の一階。


アラン「朝飯うまっ!!」


山盛りの料理を頬張るアラン。


ネビュラ「おかわり!」


宿屋の主人「はいよ!」


ヴィーラ「焼きたてのパン、美味しいですね。」


バウス「昨日食べた虫よりは安心して食える。」


アラン「まだ言うとるんか!」


シン「コウ兄。」


コウ「なんだ?」


シン「昨日のランって子のことだけど…」


コウはスープを飲む手を止める。


コウ「……今は気にするな。」


シン「でも…」


コウ「12国から通行許可を貰うのが先だ。」


それ以上は何も話さなかった。


シンは少しだけ腑に落ちない表情を浮かべる。


宿屋の主人「旅のお客さん!」


コウ「?」


宿屋の主人「ゼフィリアへ向かうなら気を付けな。」


ネビュラ「なんで?」


宿屋の主人は周囲を見渡し、


声を潜めた。


宿屋の主人「最近、ゼフィリアの森で旅人が何人も姿を消してる。」


シン「魔物ですか?」


宿屋の主人「いや…」


主人は首を横に振る。


宿屋の主人「誰一人、争った形跡がねぇ。」


バウス「……。」


宿屋の主人「しかも、荷物や馬車はそのまま!人だけが消えてたって噂だ。」


アラン「噂やろ。」


宿屋の主人「そうならいいんだけどねぇ…。」


コウ「行くぞ。」


シン「うん。」


______________


村の出口。


馬車へ乗り込もうとした、その時。


ヒュオオッ!!


一枚の木の葉が、


シンの肩へ舞い落ちる。


シン「?」


木の葉には、小さく文字が刻まれていた。


『退屈。』


シン「……。」


見上げる。


遠く、


風車の上。


ランが寝転びながら、


退屈そうに手を振っていた。


ラン「いってらっしゃーい!」


シン「お前…!」


ラン「またね。」


トンッ。


風を纏い、


少女は朝日に溶けるように姿を消した。


コウ「……出発するぞ。」


馬車はゆっくりと動き始める。


リアの村を離れていくシン達を、


一人の少女だけが、


風の中から静かに見送っていた。


ラン「あいつらなら。」


少しだけ笑う。


ラン「退屈じゃなくなりそう!」


ヒュオオオオオッ!!


少女は風と共に姿を消した。

23話読んでいただきありがとうございました。


24話では森の正体が明らかに…?

次回もお楽しみください。


岡本煌(オカモトコウ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ