第三章アリエルガ編18話六花の足掻き
ギャグから一気に絶望へ…
シン達は奴を倒せるのか...
神話×魔法×ファンタジー物語
第18話楽しんでってください。
ようやく仲間たちと合流できたコウだったが
誰も虫から助けてはくれない。
コウ「ぎゃぁぁぁぁ!!」
コウ「なんでお前らも逃げるんだよぉ!!」
コウ「助けてくれよ!!」
アラン「さすがにあんな多いと無理やろ」
シン「コウ兄!範囲魔法で倒せないのか?!」
コウ「いや俺の魔法じゃ全部は無理だ…」
コウ「なにか弱点属性でもあれば…」
シン「あ!!」
アラン「なんや?」
シン「前に父さんが言ってただろ!?」
コウ「虫は火に弱い!か!?」
コウ「アラン頼む!」
アラン「おう!ほんなら考えよった範囲攻撃でも試してみよか」
大群の虫たちを前に、
アランは一歩前へ出た。
黒い波のように押し寄せる虫の群れ。
羽音が空気を震わせる。
ギチギチと鳴る無数の顎。
木々を覆い尽くすほどの数だった。
コウ「アラン!!」
シン「頼んだ!!」
アランは答えない。
ただ静かに息を吸い込んだ。
ゴォッーー
掌から溢れた炎が腕を這い、
背中に担いだ大斧へと集まっていく。
赤かった炎は次第に濃く、
激しく、
まるで溶岩のような色へ変わっていく。
周囲の温度が一気に上昇した。
草が焦げる。
木々が軋む。
迫り来る虫たちでさえ本能的な恐怖を感じたのか、その動きを僅かに鈍らせた。
アランは大斧を構える。
そしてーー振り抜いた。
アラン「焔斧葬。」
ドゴォォォォォォォン!!!
振り抜かれた斧から、
巨大な炎の斬撃が解き放たれる。
それは斬撃というより爆撃だった。
紅蓮の奔流が大地を焼き、
木々を呑み込みながら一直線に駆け抜ける。
虫たちは悲鳴すら上げられない。
触れた瞬間、
黒い影となって消し飛んでいく。
熱風が森を吹き荒れた。
赤く染まる視界。
焼け焦げた大地。
そして先程まで虫で埋め尽くされていた空間には、
一本の巨大な焼け跡だけが残されていた。
エスイ「な…なによこれ!!」
アラン「なんや虫の大群なんてたいしたことあらへんやん」
コウ「さすがアランだ!!!」
シン・ブビィ「すげぇ!!」
ヴィーラ「形勢逆転…ですね!」
バウス「怪物だな…ほんと。」
エスイ「こ、こうなったら〜!」
エスイ「おいで!クイーンワームちゃん!」
その瞬間――
ゴゴゴゴゴゴゴ……
大地が揺れた。
まるで地震のような振動。
木々が激しく揺れ、
森にいた鳥たちが一斉に飛び立つ。
コウ「な、なんだ……?」
シン「地面の下からだ!」
バウスが足元を見る。
地面が膨れ上がっていた。
まるで巨大な何かが土の中を泳いでいるように。
ズズズズズズズズ……
一直線にこちらへ向かってくる。
そして――
ドォォォォォン!!!
地面が爆発した。
大量の土砂と木の根が吹き飛び、
巨大な影が姿を現す。
全長二十メートルを超える巨体。
紫色のぬめった外殻。
無数の節に覆われた胴体。
顔には花のように開いた巨大な口。
その中心には何百本もの牙が渦を巻くように並んでいた。
ギチギチギチギチ……
牙同士が擦れ合い、
耳障りな音を響かせる。
さらにその身体には無数の小型虫が張り付き、
まるで女王を守る兵士のように蠢いていた。
ヴィーラ「ひっ……!」
思わず後ずさる。
ブビィ「こいつだ!俺も見た事ないでかい虫!」
圧倒的な威圧感。
存在しているだけで生理的嫌悪感を覚える怪物だった。
エスイは嬉しそうに両手を広げる。
エスイ「うふふ〜♪」
エスイ「紹介するねぇ〜!」
エスイ「この子があたしの最高の友達!」
エスイ「クイーンワームちゃんだよぉ〜!!」
クイーンワームが空に向かって口を開く。
そして――
ブギャァァァァァァァァァッ!!!
森全体を震わせる咆哮が響き渡った。
コウ「無理ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
コウ「気持ちわりぃぃぃぃぃ!!!」
エスイ「キモくない!かわいい!!」
アラン「いや、かわいくはねーやろ…」
クイーンワームが巨大な羽を震わせる。
ブォォォォォン!!!
爆音。
暴風。
巨体とは思えない速度で空へ舞い上がった。
シン「飛んだ!?」
バウス「デカいくせに速いな……!」
上空を旋回するクイーンワーム。
その巨大な口が開いた。
ブシャァァァァッ!!!
紫色の液体が雨のように降り注ぐ。
シン「散開しろ!!」
全員が飛び退く。
液体が落ちた地面はジュウジュウと音を立てながら溶けていく。
ヴィーラ「皆さん!」
ヴィーラが聖典を掲げた。
金色の光が溢れる。
ヴィーラ「祝福神典!!」
眩い光がシン、アラン、バウスを包み込む。
ドクン。
体の奥で力が脈打つ。
シン「おぉ……!」
アラン「力が湧いてきよる!」
バウス「これがヴィーラの支援か……!」
攻撃力。
防御力。
反射力。
全てが一段跳ね上がる。
ヴィーラ「行ってください!」
シン「おう!!」
地面を蹴る。
ドンッ!!
今までとは比べ物にならない速度。
シンの姿が一瞬で消える。
クイーンワーム「ブギィィィ!?」
気づいた時には目の前。
シン「雷光拳!!」
バギィィィン!!!
雷を纏った拳が顔面へ炸裂した。
巨体が吹き飛ぶ。
アランが笑う。
アラン「ええやん!」
アランも飛び上がる。
巨大な斧に炎が集まる。
ゴォォォォォッ!!!
その時。
クイーンワームの腹が大きく膨れ上がった。
バウス「嫌な予感がする……!」
次の瞬間。
ボトボトボトボト!!!
大量の卵が空から降り注いだ。
地面に落ちた卵は即座に割れる。
パキッ。
パキパキパキッ。
中から這い出してきたのは――
フォレストワーム。
数十。
数百。
森を埋め尽くすほどの大群。
ヴィーラ「きゃっ……!」
ブビィ「多すぎるだろぉぉぉ!?」
コウ「うわぁぁぁぁぁぁ!!増やすなぁぁぁぁ!!!」
地面が虫で埋まる。
しかし。
アランは不敵に笑った。
アラン「また数かい。芸ないなぁ」
アラン「焔斧葬!!」
炎の斬撃が地面を薙ぎ、産まれたばかりのフォレストワームをまとめて焼き払った。
押し寄せる虫の群れが一瞬で飲み込まれる。
ギャァァァァァ!!
ジュウゥゥゥ……
炎が消えた頃には。
そこにいた無数のフォレストワームは跡形もなく消し炭になっていた。
ブビィ「す、すげぇ……」
コウ「最高だアラン!!」
アラン「当然や。」
ニヤリと笑う。
その隙に。
シンとバウスは空へ飛び出していた。
クイーンワームは傷だらけ。
だがまだ生きている。
クイーンワーム「ギィィィィィ!!」
シン「バウス!」
バウス「分かってる!」
氷と雷。
二つの魔力が膨れ上がる。
シンの拳に雷が集まる。
バウスの剣に氷が宿る。
シン「行くぞぉぉぉぉ!!」
バウス「終わりだ。」
二人が左右から迫る。
クイーンワームが迎撃しようと口を開く。
しかし遅い。
シン「雷光拳!!」
バウス「氷牙斬!!」
ドゴォォォォォォン!!!
雷と氷が同時に炸裂した。
クイーンワームの身体に巨大な亀裂が走る。
ギィ……
ギィィ……
断末魔。
そして。
ズドォォォォォン!!!
巨体が地面へ墜落した。
森が揺れる。
土煙が舞い上がる。
やがて静寂。
シンは拳を握る。
バウスは剣を下ろす。
シン「勝ったな。」
バウス「あぁ。」
エスイ「う、うそでしょぉーーー!!?」
アラン「さ、終わりやな。観念しいや」
エスイ「まだよ!!」
エスイ「幹部様から直々にピンチになったら使えって渡された物が確か…」
エスイがポケットを漁り出す。
手には紫色の石版が握られていた…
その瞬間コウが叫ぶ
コウ「そいつは…!?やめろ!!!」
エスイ「へへーん!もう遅いもんね!」
紫色の石版が割れた瞬間
エスイから魔力が吸い出される…
エスイ「な、なにこれ…」
様々な方向から魔力が石版に集まり出す
エスイ「こ、こんなの聞いてない…よ…」
膝から崩れ落ちる。
先ほどまで笑っていた顔から血の気が消え、エスイは糸が切れた人形のように地面へ倒れた。
アラン「俺が倒したアメリスや、他の敵がいた方向からも魔力が流れとるな」
コウ「あれは文献で読んだことがある……」
コウの顔から血の気が引く。
シン達もただ事ではないと察した。
コウ「あれは近くにいる魔物を厄災級の魔物へ進化させる石版のひとつだ……」
ヴィーラ「厄災級……?」
バウス「まさか……」
コウは震える声で続けた。
コウ「使われた地域が滅んだという記録しか残っていない。」
その瞬間。
バキバキバキバキッ!!
倒したはずのクイーンワームの死体が痙攣を始めた。
シン「なっ!?」
アラン「まだ生きとったんか!?」
違う。
生きているのではない。
膨れ上がっているのだ。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
心臓の鼓動のような音が森中へ響く。
そして。
ズルリ。
クイーンワームの身体が裂けた。
ヴィーラ「ひっ……!」
巨大な胴体が真っ二つに割れる。
その中から現れたのは、
新たな怪物だった。
ズズズズズズズ……
森全体が揺れる。
木々が根元から傾く。
大地が沈む。
まるで山そのものが動き出したかのようだった。
やがて土煙の中から姿を現す。
全長五十メートル。
漆黒の外殻。
紫色に脈打つ無数の血管。
頭部からは王冠のような六本の巨大な角。
そして。
背中には巨大な昆虫の羽。
その羽が一度震えるだけで暴風が吹き荒れた。
ブォォォォォォォォォン!!!
周囲の木々が吹き飛ぶ。
シン達は腕で顔を庇う。
しかし。
誰も動けなかった。
威圧感。
殺気。
存在感。
その全てが桁違いだった。
まるで魔王。
いや――
厄災そのもの。
コウが唇を震わせる。
コウ「そんな……」
コウ「文献の存在が実在したなんて……」
アラン「おい。」
アランの額に汗が流れる。
アラン「冗談やろ……」
バウスですら剣を握る手に力が入る。
ヴィーラは言葉を失っていた。
ブビィはガタガタ震えている。
怪物がゆっくりと口を開く。
その口の奥には紫色の光。
空気が歪む。
周囲の魔力が吸い込まれていく。
そして。
コウはその名を口にした。
コウ「厄災級魔物―――」
コウ「【冥蟲皇ベヘルギガント】」
その瞬間。
ベヘルギガントが空を見上げた。
そして。
世界そのものを震わせるような咆哮を放つ。
ピギャァァァァァァァァァァァァァァ!!
轟音。
衝撃波。
空を覆う黒雲。
周囲にいた何百の魔物達が息絶える。
鳥は落ちる。
木々は折れる。
大地は割れる。
まるで世界が悲鳴を上げているようだった。
シンはその怪物を見上げる。
額から汗が流れる。
それでも。
拳を握った。
シン「……なんだよ。」
シン「今度は虫の王様かよ。」
しかし。
その言葉に余裕はなかった。
誰もが理解していた。
今まで戦ってきた敵とは違う。
レベルが違う。
格が違う。
存在そのものが違う。
目の前にいるのは――
人類を滅ぼせる怪物だと。
18話読んでいただきありがとうございました。
19話ではアランとコウの本気が見れます。
次回もお楽しみください。
岡本煌




