第三章アリエルガ編 14話彼岸に咲く雷
フォルナの森岩石地帯に飛ばされたシン。
彼を待つのは六花弁最強の敵メリガン。
神話×魔法×ファンタジー物語
第14話楽しんでってください。
フォルナ大森林岩石地帯
ブビィが、激戦を広げる中
シンもまたメリガンと激戦を繰り広げていた
ドゴォォォォン!!!
岩盤が砕ける。
吹き飛ばされたシンが地面を転がる。
シン「ぐっ…!!」
額から血が流れる。
息が荒い。
その先。
岩の上に腰掛けるメリガン。
美しい顔立ち。
長いまつ毛。
少女と見間違うような容姿。
だがその瞳には冷たい光が宿っていた。
メリガン「驚いた。」
メリガン「今ので立てるんだ。」
シン「へっ。」
シンは笑う。
シン「俺、結構頑丈なんだよ。」
メリガン「知ってる。」
メリガン「馬鹿って丈夫だもんね。」
シン「誰が馬鹿だ!!」
シンが飛び出す。
雷を纏った爪が閃く。
シン「おらぁぁぁぁ!!」
メリガン「遅い。」
ドンッ!!
黄泉の魔力が爆発する。
シン「ぐあぁっ!!」
再び吹き飛ぶ。
メリガン「君さ。」
メリガン「なんで戦ってるの?」
シン「はぁ?」
メリガン「だって勝てないじゃん。」
メリガンが首を傾げる。
メリガン「僕にはわからない。」
メリガン「怖くないの?」
シン「怖ぇよ。」
即答。
メリガン「……。」
シン「めちゃくちゃ怖ぇ。」
シン「痛ぇし。」
シン「できれば逃げてぇ。」
メリガン「なら逃げればいい。」
シン「でもな。」
シンが立ち上がる。
シン「逃げたら後悔する。」
シン「後悔する方がもっと嫌なんだ。」
メリガン「変なの。」
メリガンの魔力が膨れ上がる。
メリガン「黄泉魔法」
地面が黒く染まる。
岩が崩れ始める。
周囲の空気が重くなる。
メリガン「黄泉落。」
ドゴォォォォォ!!!
地面そのものがシンを飲み込もうとする。
シン「うおぉぉぉ!!」
飛び上がる。
雷が弾ける。
バチバチバチッ!!
シン「雷光波ぁぁぁぁぁ!!!」
巨大な雷撃。
一直線。
メリガン「っ!」
初めてメリガンの表情が変わる。
ドゴォォォォォン!!
岩石地帯が雷光に包まれた。
轟音。
爆風。
砕け散る岩石。
メリガン「……。」
土煙の中。
人影が立っていた。
シン「はぁ……はぁ……」
全身傷だらけ。
腕は震えている。
それでも立っている。
メリガン「信じられないな。」
メリガンの服は焦げていた。
頬には浅い傷。
メリガン「その程度の魔力で僕を傷つけるなんて。」
シン「へへっ。」
シンは笑う。
シン「お前の攻撃には信念がねぇ。」
メリガン「……。」
メリガンの眉が僅かに動く。
シン「だから、俺が勝つ。」
メリガン「無理だよ。」
ゴォォォォォォ……
黄泉の魔力が膨れ上がる。
メリガン「君と僕じゃ見てきたものが違う。」
メリガン「覚悟も。」
メリガン「絶望も。」
シン「お前が何に絶望したのか俺は知らねぇ。」
シンは拳を握る。
シン「でも。」
シン「絶望したから悪に手を染めていい理由にはならねぇ。」
メリガン「……は?」
シン「絶望に囚われたまんまのお前じゃ。」
シン「俺にはぜってぇ勝てねぇ。」
メリガン「知ったような口聞くなよ!馬鹿が!」
ドォン!!!
地面が割れる。
メリガンの魔力が無数の槍となり現れる。
メリガン「黄泉魔法。」
メリガン「黄泉槍!」
数十本。
数百本。
黒紫の槍。
シン「うおっ!?」
一斉射出。
ドドドドドドドドドドッ!!!
シンは走る。
避ける。
飛ぶ。
転がる。
一本が肩を貫く。
シン「ぐっ!!」
二本目。
太ももを掠める。
三本目。
頬を裂く。
それでも。
止まらない。
メリガン「なんで……」
シン「おおおぉぉぉぉ!!!」
メリガン「なんで止まらない!!」
シン「決まってんだろ!!」
ドンッ!!
さらに加速。
雷が弾ける。
バチィィィィッ!!!
シン「抱えた闇に抗おうとしてっからだ!!!」
メリガン「っ!!」
シン「絶望も!」
ドン!!
シン「覚悟も!」
ドン!!
シン「俺だって持ってる!」
ドォォォォォン!!!
雷が爆発する。
シン「それでも俺は!!」
シン「前に進むために努力する!!!」
シン「絶望に負けて諦めたりしねぇぇ!!」
メリガンの目前。
シンの拳。
雷光を纏った渾身の一撃。
シン「雷光拳!!!」
メリガン(なんなんだよこいつ…!)
メリガン(なんでそんな真っ直ぐ生きられる?!)
メリガンの瞳が揺れる。
底知れない。
どれだけ痛めつけても折れない光。
メリガン「この僕が…こいつに…」
恐怖。
ただ、昔メリガンが感じた恐怖とは別な種類の恐怖だった。
____________
10年前
メリガン「こっち来いよ!」
メリア「待ってよ!お兄ちゃん!」
美しく咲き誇る花。
崖の下から見えるエメラルドグリーンの海。
活気が溢れる町。
メリガン「ほら見てみろこの花。綺麗だろ?」
メリア「わぁぁ!ほんとだ!この花なんて言うの?」
メリガン「この花はアネモネ。花言葉ははかない恋だ!」
メリア「この花は?」
メリガン「これはアヤメとヒヤシンス!」
メリガン「花言葉は信じる者の幸福、悲しみを超えた愛」
メリア「お兄ちゃん詳しい!」
メリガン「この花は水仙と白百合。花言葉は自己愛と純潔」
メリア「この真っ赤なお花はなんか不思議。葉っぱがついてない!」
メリガン「これはヒガンバナ。花が咲く時には葉がないんだ。だから花と葉が出会うことはない。」
メリガン「花言葉は悲しい思い出。」
メリア「なんか切ないねぇ」
メリガン「そうだな…」
メリア「もうパパもママも会えないところに行っちゃったんでしょ…」
メリガン「うん。でも空の上から見守ってるよ!それにメリアには僕がついてる!」
メリア「うん!メリアはお兄ちゃんとずっと一緒!」
メリガン「約束だ!」
メリア「メリアは将来お兄ちゃんと一緒にお花屋さんになりたい!」
メリガン「いいぞ!じゃぁ花をもっとたくさん覚えなきゃな!」
メリア「うん!メリアはお兄ちゃん大好き!」
その一週間後。
メリアが死んだ。
不慮の事故だった。
花と木の実をとってくる。
そう言って笑顔で家を出た妹は、
二度と笑顔で帰ってこなかった。
町の人「崖から落ちたんですって…」
町の人「かわいそうに…」
町の人「まだ小さいのに…」
抱き抱えた妹の亡骸は小さく、軽かった。
手に握られているのはヒガンバナ。
真っ赤な花がカバンいっぱいに詰められていた。
メリガン「ずっと一緒って言ったのに…」
メリガン「守ってやれなくてごめん…」
強く握る拳。血が滲むほど唇を噛み締め
目からは大粒の涙が零れていた。
____________
シン「オラぁぁぁぁぁ!!」
シンの拳がメリガンを追い詰める。
攻撃を捌ききれない。
メリガン「こ、こんな奴に…」
ドガァァァーーン
岩山まで吹っ飛ばされたメリガン。
シン「なんで悪神教に入った。」
攻撃の手を止めメリガンに詰め寄るシン。
メリガン「妹に…会いたかった…」
シン「妹に会いたかったらどんな罪を犯しても許されるのか?」
メリガン「………。」
シン「今のお前見て心から胸張れる兄ちゃんだ!って妹に言えんのか!」
メリガンの瞳から涙が零れる
メリガン「僕はただ…」
シン「俺にも大切な人がいた。」
シン「でももういねぇ!」
シン「それでも俺はそいつに誇れる男でありたい。」
メリガン「僕は…」
メリガンの頭に声が響く。
ディコルプヌス「メリガンよ。」
メリガン「はっ…!ディコルプヌス様…?」
ディコルプヌス「その程度の想いで妹にもう一度会えるのか?」
ディコルプヌス「どれ、私が力を貸してやろう。」
メリガン「え…うわぁぁぁぁあ!!」
シン「どーしたんだ?!」
メリガンの周りに集まる赤黒い魔力
その魔力はメリガンを覆いつくし、
更なる絶望へと誘う
メリガン「あ…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
美しい黒髪が白く変わる。
頭からは黒い角が生え始め無数のヒガンバナが咲く。
目は赤く獣のような瞳に変わった。
メリガン「……獣纏…冥鹿」
赤黒い魔力を纏ったメリガンの魔力は
先程までとは比べ物にならないほど膨らんでいた。
シン「なんだよ…この威圧…!」
ゴォォォォォォォ
魔力がメリガンに集まる。
メリガン「黄泉魔法。」
メリガン「冥花葬。」
シンの足元に無数に咲き出す彼岸花。
シン「な、なんだこれ!」
その瞬間
シンが倒れる
シン「…ど、どく?からだが痺れて…」
彼岸花がシンの体を覆うように咲き出す
メリガン「死ね。」
ドガァァン!
彼岸花が一斉に爆発する。
シン「ぐわぁぁぁ!!」
メリガン「悲しい思い出と一緒に。」
ドガァン!
メリガン「なくなってしまえ!」
ドガァン!ドガァン!
シン「なんだよこれ…体動けなくして咲いた花が爆発するとか…」
シン「どうにもできねぇ…。」
追い討ちをかけるようにメリガンの魔法が炸裂する。
メリガン「黄泉魔法奥義。」
メリガン「彼岸冥泉。」
ドドドドドド
地面が揺れる。
シンの周りに咲き誇る彼岸花。
その瞬間
彼岸花以外の全ての景色が黒く染まる。
シン「な、なんだよこれ」
暗闇の中から現れる母の姿。
思考が止まる。
ユキ「シン。」
シン「母さん?!」
ユキ「大丈夫。こっちに来て。」
シン「どーしたんだよ母さん!なんでここに…」
ユキ「私と一緒に黄泉の国へ行くのよ。」
ユキ「大丈夫。もう頑張らなくていいの。」
母の優しい声、思わず足が進みそうになる。
シン「だめだ、これは幻だ…!」
シン「気をしっかり持て!俺!」
とても懐かしい声が聞こえる。
ミク「た…いよう…」
母の姿が変わり、別の人影が現れる。
そこには太陽の時に自分を庇って死んだはずのミクの姿。
シン「ミ…ク…?」
手を伸ばす。だが届かない。
ミク「なんで…私を守ってくれなかったの?」
シン「ミク…」
ミク「私を置いていかないで…」
ミクの側に駆け寄るシン。
ミクを抱き締める。
シン「ごめんな…俺も守るって言ったのに…」
ミク「一緒に…行こう…」
シン「わりぃ。行けねぇ。」
ミク「たい…よう…?」
シン「俺は今太陽じゃねぇんだ。」
シン「シンとして帰る場所がある。」
シン「ミク…必ずお前を取り戻す。」
シン「それまで…待っててくれるか?」
ミク「たいよう…」
__________
黒いドームで包まれた空間を見つめながらメリガンが呟く。
メリガン「ほら。綺麗事を言ってもやっぱり大切な人がいるなら囚われる」
メリガン「それが僕の黄泉魔法だ。」
バリッ
メリガン「なんだ…?」
バリバリバリバリッ!
黒いドーム状の空間が崩れ始める。
メリガン「そんな…バカな…!?」
バリーーーン!!
空間が壊れた瞬間。
中から現れたのはシン。
だが姿が違う。
雷のオーラをまとい空気がバチバチと揺れる
顔に現れた虎の模様。
そして手には鋭い爪。
雷撃を纏った虎の尻尾が地面を叩く。
黄金の雷を纏ったその姿は、
まるで天を裂く雷虎の王を彷彿とさせた。
メリガン「そんな…獣力が覚醒したのか…?!」
シン「獣纏・雷虎」
シン「雷魔法奥義。」
シン「雷虎神鳴!!!」
シンの全身が黄金の雷で包まれる。
背後には雷撃を纏った虎の影。
メリガン「僕の黄泉魔法から抜け出すなんて…」
背後の虎が吠える。
黄金の雷が天地を裂く。
あたりの景色が白く染まる。
ドガァァァァァァァン!!!!!
シンが放った雷撃がメリガンを貫く。
数十メートル近く飛ばされるメリガン。
角は砕け散り、花は雷撃により消滅する。
メリガン「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
メリガンの叫び声が岩石地帯に木霊する。
バチバチッバチッ
余韻のような雷が辺りを漂う。
メリガン「バ、バカな…僕が…」
シンが近づき、メリガンに1輪の花を渡す。
シン「わりぃ。加減わからなくてほとんど燃やしちまったから1つしか残らなかった。」
1輪の彼岸花。
メリガン「あ…あ…メリア…」
シン「もう終わりにしようぜ。」
メリガン「黙れ!お前なんかに僕の辛さがわかるわけない…!」
シン「俺にはお前の辛さはよくわかんねぇけどさ」
シン「お前にとってその花は悲しい思い出だけじゃなく、幸せな時の思い出でもあるだろ?」
メリガン「…………」
(メリア「お兄ちゃん…!大好き!」)
メリアの声が聞こえた気がした。
1輪の彼岸花を見つめるメリガン。
彼はその花を握りしめ涙を零した。
メリガン「僕は…僕は……!」
シン「いくら後悔しても過去には戻れねぇ。」
シン「無理に前を向けなんて言わねぇ。」
シン「それでも大切な人との思い出を抱えて1歩ずつ踏み出さなきゃならねぇ。」
シン「その道がどれだけ困難で、辛いものでも。」
シン「きっとお前を想う大切な人はお前が歪む姿なんて見たくねぇと思うぞ。」
2人を照らす太陽。
その光は眩しくて、暖かくて、優しかった。
メリガンが歪んだあの日のように。
シン「俺はもう行くわ!もうわりぃことすんなよ!」
その場を立ち去るシンの背中はメリガンに希望を与えた。
メリガン「心の強さが…違うな…。」
メリガンは、ただ一輪の彼岸花を抱きしめた。その瞳に、もう黄泉の闇は映っていなかった。
映っていたのは、ただ暖かな太陽の光だけだった。
一方、バウスが飛ばされたフォルナの滝。
轟く水音の中、
静かな冷戦が始まろうとしていた。
14話読んでいただきありがとうございました。
15話ではバウスとヒヤニスのタイマンですが…
どちらかというとバウスの過去がメイン。
次回もお楽しみください。
岡本煌




