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第三章アリエルガ編 12話勇者の仮面

襲いかかるフロルモルテの脅威

そして新たな敵六花弁…


神話×魔法×ファンタジー物語


第12話楽しんでってください。

甘い香りが広がる。


ブビィ「……あれ?」


頭がぼんやりする。


視界が霞む。


シン達の声が遠ざかっていく。


シン「おい!ブビィ!」


ヴィーラ「危ないです!」


アラン「鼻と口を塞げ!!」


聞こえない。


聞こえない。


聞こえない。


その時。


優しい声が聞こえた。


??「ブビィ。」


ブビィ「……母ちゃん?」


アラン「しっかりしろや!」


アランがブビィの頭を思い切り叩く


ブビィ「いてぇぇ!!!」


ブビィ「母ちゃんごめんよ!」


アラン「誰が母ちゃんや!こんなごつい、母ちゃんやったんか?!」


ブビィ「あ、赤髪の暴力男じゃねーか」


アラン「誰が暴力男や!アランや!アラン!」


アラン「気抜くな!この花粉みたいなの吸うたら意識持ってかれるで!」


その瞬間。


ズルルルル……


巨大な根が地面を這う。


シン「来るぞ!!」


ドゴォォォン!!


大地を突き破り、

無数の根が飛び出した。


コウ「散れ!!」


全員が飛び退く。


しかし。


根は執拗に追いかけてくる。


ヴィーラ「この魔物……!」


ヴィーラは周囲を見る。


地面。


木々。


白骨。


全てが根に覆われていた。


ヴィーラ「森そのものを取り込んでいます!」


バウス「つまり本体を潰せば終わりだな。」


フロル=モルテが花弁を開く。


ブワッ


大量の花粉。


シン「やべぇ!」


コウ「伏せろ!!」


だが。


ヴィーラは一歩前へ出た。


ヴィーラ「私に任せてください。」


シン「ヴィーラ?」


ヴィーラは胸の前で両手を組む。


光が集まる。


ヴィーラ「聖浄光(セイジョウコウ)


カッ!!


眩い光が森を照らした。


花粉が次々と消滅していく。


ブビィ「すげぇ……」


ヴィーラ「浄化系の魔法なら私にもできます!」


フロル=モルテが怒ったように唸る。


無数の根が襲い掛かる。


その時。


バウスが前へ出た。


バウス「邪魔だ。」


パキッ


パキパキパキパキッ!!


地面が凍る。


バウス「氷牢壁(ヒョウロウヘキ)


巨大な氷壁。


根が全て止められる。


コウ「おぉ。」


アラン「珍しく頼もしいやんけ!」


バウス「珍しくは余計だ。」


フロル=モルテが再び花を開く。


ヴィーラ「また来ます!」


バウス「なら咲かせなければいい。」


バウスの足元から凄まじい冷気。


周囲の温度が急激に下がる。


白い息。


凍り始める湖。


凍り始める地面。


バウス「花は寒さに弱い。」


シン「お前なんか悪役みたいなこと言うな。」


バウス「黙れ。」


そして――


バウスが剣を構える。


バウス「終わりだ。」


バウス「氷牙斬(ヒョウガザン)。」


氷の剣がフロル=モルテを切り裂く。

その斬撃は荒々しく舞う氷が美しかった。

切られた部分から全体に氷が広がり

フロル=モルテが倒れる。


ドスンッ!!


アラン「やるやんけ!」


バウス「ふんっ。所詮雑魚魔物だろ」


ブビィ「雑魚って…フロル=モルテは災害級の魔物だぞ…」


バウス「それより…」


シン「真打ちのお出ましだな。」


パチッ


パチパチパチ……


森の奥から拍手が聞こえた。


ブビィ「誰だ!?」


木々の上。


二つの人影。


一人は桃色の長髪を揺らす女。


花びらを散らしながら枝に腰掛けていた。


もう一人は黒い外套を羽織った青年。


冷たい瞳でシン達を見下ろしている。


女は微笑んだ。


ネモネル「すごーい。」


ネモネル「フロル=モルテをあんな簡単に倒しちゃうなんて。」


ネモネル「思ってたより強いのね。」


アラン「誰やお前ら。」


女は枝から飛び降りる。


ふわり。


まるで花びらが落ちるように。


ネモネル「悪神教六花弁。」


ネモネル「“愛花”のネモネル。」


胸に手を当て優雅に礼をした。


続いて。


青年が静かに前へ出る。


ヒヤニス「同じく六花弁。」


ヒヤニス「“追花”のヒヤニス。」


ブビィの表情が凍り付く。


ブビィ「悪神教……」


ヒヤニスは無言でブビィを見る。


その視線だけでブビィの身体が震えた。


ネモネル「あなた。」


ネモネル「お母さんが悪神教にいた子よね?」


ブビィ「ッ!!」


空気が変わる。


シン達の表情が険しくなる。


ネモネルは楽しそうに笑う。


ネモネル「覚えてるわよ。」


ネモネル「泣きながらお母さん探してたもんね。」


ブビィ「てめぇ……」


ネモネル「可愛かったなぁ。」


ブビィ「黙れッ!!」


ブビィが女に掴みかかろうとする。

しかしふわりとかわされる。


ネモネル「ふふふっ!可愛い!変な仮面つけてるけど。」


ブビィ「うるせぇ!これは母ちゃんが一生懸命作ってくれたんだ!」


ヒヤニス「怒るな。」


ヒヤニス「思い出させてやろうか。」


ヒヤニスの瞳が紫に光る。


ブビィ「なっ!?」


ヒヤニス「追憶魔法。」


ヒヤニス「回想録(メモリア)!」


記憶を見てるブビィ「ここ…どこだ…?」


気付けばそこは森ではなかった。


小さな家。


古びた木造の家。


食卓。


暖炉。


そして――


優しく笑う女性。


母「坊やー!ご飯できたよ!」


幼いブビィ「今行くー!」


母「ほら。」


母「また仮面壊したの?」


幼いブビィ「だって勇者ごっこしてたんだもん!」


母「もう。」


母は笑いながら仮面を直してくれる。


幼いブビィ「俺は勇者になるんだ!」


母「ふふっ。」


母「なれるよ。」


母「坊やならきっと。」


景色が歪む。


家が消える。


笑顔が消える。


暖炉が消える。


幼いブビィ「母ちゃん?」


母親は泣いていた。


母「ごめんね。」


母「ごめんね。」


母「きっとお父さんに会わせてあげるから。」


母を取り囲む黒いローブの男達


悪神教徒「大丈夫です。ご主人はきっと蘇ります。」


悪神教徒「えぇ。えぇ。共に祈りましょう。」


悪神教徒「信じるのです。」


記憶を見てるブビィ「やめろ!母ちゃん!そいつらは!」


母に向かって叫ぶが声は届かない。

触れない。

悪神教徒に金を渡す母。

家の権利書も渡す母。

不安そうに隣で見つめる幼いブビィ。


母「主人が生き返るなら私!なんでもします!」


悪神教徒「では、私達と共に参りましょう。」


幼いブビィ「やめてよ!母ちゃん!」


遠ざかる母と悪神教徒


幼いブビィ「行かないでよ…」


残されたのは母の直してくれた仮面。

仮面を被り決意する。


幼いブビィ「俺は勇者だ!母ちゃんを助ける!」


連れていかれた悪神教徒の教会に行き


何度も

何度も

どれだけ追い返されようと、殴られようと

必死に母を呼び続けた。


しかし運命は残酷だった。


悪神教徒の1人の男が言う。


悪神教徒「お前の母なら先程帰ったぞ」


幼いブビィ「ほんとか!?どこに?!」


悪神教徒「こっちだ。」


幼いブビィは男についていった。


川辺。


冷たい雨。


横たわる母。


動かない。


幼いブビィ「起きろよ。」


返事がない。


幼いブビィ「起きろよ母ちゃん。」


返事がない。


幼いブビィ「起きろって言ってんだろォォォォ!!」


悪神教徒「うるさいガキだ。」


男は幼いブビィを蹴り飛ばす。

ブビィは川に落ちた。


幼いブビィ「た、たすけ、」


悪神教徒「ははは!!面白い!豚が溺れてやがる!」


悪神教徒「お前の母親も利用価値がなくなったからな!最後は皆で愉しんだ後に溺死させてやったわ!」


悪神教徒「お前も母親のところにいってこい!」


意識が遠のく。


そしてーー


現実へ引き戻される。


ブビィが膝をついていた。


汗だく。


呼吸が荒い。


ネモネル「思い出した?」


ブビィは肩を震わせていた。


呼吸が乱れる。


拳が震える。


仮面の奥から歯を食いしばる音が聞こえた。


ブビィ「……殺す。」


ネモネル「え?」


ブビィ「お前らを殺す。」


ネモネルは楽しそうに笑った。


ネモネル「無理無理。」


ネモネル「だってあの時も何もできなかったじゃない。」


ブビィ「ッ!!」


ネモネル「お母さんを助けられなかった。」


ネモネル「泣いてるだけだった。」


ネモネル「連れ去られた時も。」


ネモネル「今も。」


ネモネル「何も変わってない。」


ブビィ「黙れ……」


ネモネル「本当のことでしょ?」


ネモネルの瞳が桃色に輝く。


ネモネル「愛魔法。」


ネモネル「恋慕花(レンポカ)。」


花びらが舞う。


ブビィの視界が揺れる。


気付けば。


目の前にいた。


母だった。


母「坊や。」


ブビィ「……母ちゃん。」


母「ごめんね。」


母「ずっと一人にして。」


ブビィ「ちがう。」


母「寂しかったよね。」


ブビィ「ちがう……」


母「辛かったよね。」


母「苦しかったよね。」


ブビィの目から涙が零れる。


母「もう頑張らなくていいよ。」


母「こっちへおいで。」


母が手を差し伸べる。


優しい手。


昔と変わらない。


温かい手。


ブビィは思わず手を伸ばした。


その時。


遠くから声が聞こえた。


アラン「アホか。」


ブビィ「……?」


アラン「そんなもん掴んだらあかんやろ。」


ブビィ「アラン……」


アラン「お前の母ちゃん。」


アラン「そんな顔で笑う女やったんか?」


母の笑顔が僅かに歪む。


アラン「母ちゃんの仇うつんやろ?」


アラン「なら立て。」


アラン「そこで泣いて終わりか?」


ブビィ「……。」


アラン「悪神教ぶっ潰したいんやろ?」


アラン「ほんなら立てや。」


ブビィ「……。」


震える拳。


流れる涙。


仮面の奥で歯を食いしばる。


ブビィ「母ちゃん。」


ブビィ「見ててくれ。」


ブビィはゆっくり立ち上がった。


ネモネル「へぇ。」


ネモネル「まだ折れないんだ。」


ヒヤニス「面白い。」


その瞬間。


地面に巨大な魔法陣が広がる。


コウ「なんだ?!」


ヴィーラ「この魔法は……!」


ヒヤニス「追憶転移魔法発動。」


ヒヤニス「追憶彼方(アナザーサイド)!」


ゴォォォォォォ!!


空間が歪む。


シン「なっ!?」


アラン「なんやこれ!」


バウス「転移魔法か!」


眩い光。


そしてーー


全員の姿が消えた。


_________


フォルナの花畑。


アラン「……は?」


目の前には一人の少女。


アメリス「悪神教六花弁の一人、未来花のアメリス・ヤアイ」


アメリス「未来は決まっている。」


アラン「知らんがな。」


_________


フォルナの滝。


バウス「ここは…」


ヒヤニス「君の相手は俺がしようか。」


バウス「自分も転移してきたのかよ。」


_________


フォルナの大木付近。


ヴィーラ「えっと…あなたは?」


シュクロ「悪神教六花弁の一人、浄化花のシュクロ・ラリリスと申す。」


シュクロ「美しい女だ……我の恋人にしたい…」


ヴィーラ「え。嫌ですけど。」


_________


フォルナ岩石地帯。


シン「すげー!森が岩石に変わった?!」


メリガン「いや…君が飛ばされたんでしょうよ。僕は悪神教六花弁の一人、黄泉花のメリガン・ヒノエバナ。」


シン「ヒノエバナ…すんげぇ変わった名前だな…」


メリガン「ヒノエバナは名前じゃなく苗字の方だけど…」


_________


フォルナ大森林虫の住処。


無数の羽音。


ブゥゥゥゥゥン……


コウ「.........。」


木々を埋め尽くす虫。


その中央。


エスイ「ふふ!可愛い!怖くて声もでないんだっ!あたしは悪神教六花弁の一人、鏡虫花のエスイ・コーセンだよっ!」


コウ「嘘だろ........。」


エスイ「大丈夫っ!私の鏡虫魔法の虫たちは可愛いから!じっくりゆっくり殺してあげるねっ!」


虫達がコウ目掛けて飛んでくる。


コウ「帰りたい……。」


___________


静まり返るフォルナ大森林奥地。


そこに残ったのは。


ブビィとネモネル。


ネモネル「ふふっ。」


ネモネル「二人きりね。」


ブビィ「……。」


ネモネル「逃げる?」


ブビィ「逃げねぇ。」


ブビィ「今度は。」


ブビィ「絶対に。」


仮面の奥で、少年の目が初めて敵を睨んだ。

12話読んでいただきありがとうございました。


13話ではアラン最強!ブビィ頑張れ!になれます

作者の私は圧倒的アラン推しなんです。

次回もお楽しみください。


岡本煌(オカモトコウ)

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