番外編②そんなつもりじゃなかったと言い訳男は言う。中編
2話でざまぁが終わりませんでした。3話ざまぁ、3話小谷朝霞の再生回をやりたいと思います。
次の日から朝霞はガチでおかしくなった。
これはオレの勝手な解釈とかじゃなくガチで。
雨野みたいに小谷の悪口を言ったやつには、
「小谷君の悪口はやめて」
ガン詰めするし、ちょっと小谷をいじっただけでも、
「小谷君を馬鹿にするのやめて」
ガン詰めするし。とにかく小谷の事は言っちゃだめだみたいな空気が漂い始めた。
その上、
「………………」
雨野が教室で全然喋らなくなった。ずっとチラチラと朝霞の方を見ては目を逸らしてを繰り返していた。そして、その雨野を見てるオレと目が合うといきなり野良猫みたいな目になって顎でこっちこいみたいな動きをしやがった。
「ねえ、アンタ、朝霞なんとかしてよ」
屋上に続く階段。誰も来そうにない場所で雨野がオレを押す。
「は? オレが? なんで? ていうか、何があったかまず教えろよ。昨日のアレだけでビビりすぎじゃね?」
オレの言葉を聞いた雨野は目をめっちゃ見開いて「は?」を声を漏らす。
ヤバい。なんかキレたっぽい。
「ガチで言ってんの? あの女、ガチでキレてんだよ……! あのあと、アイツ、アタシに連絡してきたんだよ。大量の脅しの文章……あああああ! ……これ! 見ろよ! これ!」
雨野が見せてきたスマホの画面にはびっしりと文章が、改行とかスペースとかなしにびっしりと。なんだっけ? アレだ。耳なし芳一みたいな。
ガチでホラーだった。
「アイツもうガチで頭おかしくなってるから。何されるかわかんないのよ! 多分、これとかで自分が捕まっても、それでアタシを道連れにできたらそれでいいとか思ってんだよ! クソ!!!」
雨野のいうことは分かる。朝霞は、屋上から飛び降りようとしてミスって小谷を身代わりにしてしまった時点で自分の事がもうどうでもよくなってる。そして、小谷の為にって言葉でめちゃくちゃやり始めてる。おかしくなってる。文章見てもわかる。
朝霞が絶対使わない言葉。
きたねえ言葉。
エグい言葉。
病んでる言葉。
それがびっしりと並んでいる。
「アンタのせいだ」
雨野がそんなことを言い出す。
は?
「アンタが! 朝霞の情報とか流し出したからこうなったんだろうが!」
「人のせいにしてんじゃねえよ! 手下したのはお前だろうが!」
「うるさい! なんとかしてよ! じゃないとアタシの人生めちゃくちゃじゃない!」
そう言ってオレの制服をつかんで揺さぶってくる雨野。派手な匂いがぷんぷんとしてきて腹が立つ。ヤバくても香水とかはしっかりつけてくんのかよ。だが、オレは何も言わない。こういう自分勝手なやつの相手をしたら負けだと思うから。そして、案の定途中でバテてやめた。だけど、その後の言葉は完全に想定外。
「今の状況何とかしないと朝霞にも先生にも全部言うから」
「……………………は?」
マジかこいつ。自分がヤバくなってしんどいからってオレ脅してきやがった。
マジ人間の屑。ごみ。カス。
だが、コイツも目がイキはじめてる。ガチだ。
朝霞の真っ黒な目が伝染ってる。カラコンっぽいけどなんとなくそんな感じだった。
コイツが全部バラせば、ガチでオレは終わる。だから、オレは頷くしかできなかった。
「朝霞、ちょっといいか?」
教室の入り口からじっとこっちを見ているカス女の視線を背中に受けながらオレは朝霞に話しかける。その瞬間、クラスの視線がオレに集まる。
朝霞は今クラスの地雷だ。だけど、オレはその地雷処理班に無理矢理された。
地雷の顔はきれいだった。
髪は黒く染め直してもったいないし、ガチ病人みたいに白い顔だったけど、朝霞はやっぱりかわいい。その瞬間、コイツを助けられるのはオレだけだと確信した。
オレは朝霞を想う気持ちをたっぷり顔面に乗せて笑う。
「あんま自分、責めんなよ。お前がそんな顔してんのオレ見てて辛いわ」
朝霞がオレを見上げる。その目は間違いなくオレに助けを求めていた。
オレが、朝霞を救う。
「小谷のことはさ、お前のせいじゃない。オレさ、もっとお前には笑顔でいてもらいたいと思ってんだぜ」
オレの想いを朝霞にぶつける。はっじい! マジで顔が熱い! だけど、オレの想いがつまった言葉を朝霞に送った。そして、朝霞は……わらった。
よっっっ
「大川」
「え?」
え?
朝霞が今、オレのことを大川って言った?
朝霞はそんな風にオレを呼ばない。朝霞はいっつもとびっきりの笑顔で、
『大川くーん!』って元気な声で呼んでくれたんだ。
なのに、大川?
朝霞じゃない朝霞がオレを呼び捨てにして近寄ってくる。
例の真っ黒な目で。口角は上げて。
「小谷君のことはわたしのせいだし。あなたに何か言われる筋合いはないし。小谷君のことをそんな風に言わないで、絶対に。ぜったいに」
朝霞の目がオレの吞み込もうとするみたいな感じだった。そして、ガチで空気が冷えて、教室のみんながオレを見る。お前何してんだよみたいな目で。
ちがうちがうちがう! オレはそんなつもりで言ったんじゃない!
そう言いたいがうまく言葉が出てこない。必死で出た言葉が。
「ちが……オレ、あまのに、言われて……」
それだけだった。
それ聞いた朝霞はもっと口の端を上げて、オレの後ろにいる雨野を見る。
「ああ……雨野ね。あの雨野ね。わたしのよーく知ってるとーっても意地悪な雨野ね」
ヤバ。
朝霞はじっとりと笑ってそう言った。
オレの後ろからはうめき声が暫く聞こえて、そのあとはあはあ気持ち悪い声が聞こえて、そして、雨野の声が聞こえた。
「ちが、うし……勝手なこと、言わないで、よ……」
雨野が必死に何か言おうとしてるがもう負け確。その瞬間にチャイムが鳴ってガチ雨野助かったなって感じだった。
そのあとの授業はめちゃくちゃ変な空気だった。腐りかけの生温かさ、そんな感じだった。
「じゃあ、次、大川」
そんな中でオレが当てられ、ホワイトボードに答えを書く。勿論、正解。
オレが席に戻ろうとしたその時だった。みんながオレを見てた。
いや、ちがう。じっと見てるヤツと全然目を合わせようとしない奴らにはっきり分かれていた。すぐわかった。コイツらオレを見捨てる気だって。
そして、雨野は殺人鬼みたいな目でオレを睨み、朝霞はオレを見てうっすら笑っていた。
詰んだ。
そう思った。
なんとかしなきゃ。
そう思った。
授業が終わり、めっちゃ変な空気の中ショートホームルームも終わって、ダッシュで帰ろうとした時だった。
「大川、全部テメーのせいだからな……! 全部……!」
雨野がオレの前に立ってそんなことを言ってきた。
ガチで空気読めないバカ。
放課後にみんなの前でそんなこと言うなよ。小声でも聞こえるかもしれねーだろ。
周りを見る。みんなオレ達をじっと見ていた。
真っ黒な目だった。
雨野がそんなこと言わなければ逆転の策があったかもしれないのに消えた。
オレはダッシュで帰ってベッドに潜り込んだ。ガチで体調悪くなった感じで休むことにした。
オレは3日休んだ。雨野も一日出てそのあと2日休んだ。
次に学校に出てきたときには、雨野は更にやばくなってた。
相変わらず朝霞は、ちょっとしたジョークで小谷の話を出すのも許さなかった。
ピリつく教室。そこにヤバくなった雨野がぶっこむ。
「ていうかさあ! 聞いたよ、アンタ小谷に会ってもらえなかったんでしょ! 来なくていいとか言われたらしいじゃん! 全部さ、あんたのせいじゃないの!?」
めっちゃヒステリックババアみたいなクソ高い声で叫ぶ雨野。
朝霞はめっちゃ低い声で、
「一番はわたしのせい。だから、わたしはわたしを許さないし、小谷君を守る義務がある」
そう告げた。
マジで意味が分からなかった。
もう誰もが小谷の話出すなって空気になって。
そして、ガチで早く小谷来てくれってなった。
なのに、小谷は学校復帰がめっちゃ遅くなって、オレ達は3か月近くずっと朝霞のプレッシャーを喰らい続けた。
そして、小谷が帰ってきたその日。
雨野とモメてたら小谷が来てなんかごちゃごちゃ言ってきたから黙らせようとしたら、ヤバいことになった。
「何、してるの……?」
一瞬、なんかぐらっとしたってレベルで低い声が響いた。
下で押さえつけてる小谷とかもうどうでもよくなるくらい真っ黒な目。
居た。
オレが大好きだったのにヤバくなった病み女が。
真っ黒な眼でこっちを見ていた。
オレは今の状況を回避しようとがゆっくり小谷から離れる。下がってたら雨野とぶつかる。マジで邪魔、コイツ。
朝霞は、オレと雨野をすげー見て、そして、小谷のそばで屈んだ。
「……こ、小谷君。立てる?」
小谷にだけは申し訳なさそうな声で話しかける朝霞。
「立てる。ありがとな」
礼を言う小谷。なんかすげーキモかった。
立つときも朝霞に手伝ってもらってキモかった。
もう一回礼を言っててキモかった。
かっこつけて一人で松葉杖取りに行くのもなんかキモかった。
なのに、朝霞は小谷が松葉杖までたどり着くとほっとしたような表情をする。なのに、オレ達の方に振り向いたときにはめっちゃヤバい目で。
「……言ったよね? 小谷君に迷惑かけたらって……」
「あ、アタシは何もしてないし! そんなつもりじゃなかったし! お、大川が……」
雨野はガチで最悪。こんな時にもオレのせい。
「お、オレは……朝霞が心配で……」
これはオレの本心。オレは別にそんなつもりじゃない。ただ、朝霞が心配なだけ、それだけだった。のに、
「ガチしんぱ……ひゅっ……」
首をつかまれた。白い冷たい指で。
朝霞の指だった。
力はそこまで入ってない。だけど、何かが詰まったような感じでめっちゃ息が出来ない。
真っ黒で真っ黒な目がオレをのぞき込んでた。
オレを見てるわけじゃない。オレを、なんだ、ただ、みてた。
そして、
「朝霞、もういいから。俺、帰りたいからさ、ついてきてよ」
小谷がかっこつけてそんな事を言うと、
「……うん」
朝霞の目がなんか変わった気がして、なんかキモかった。
そして、小さくうなずくとオレの首から手を放す。ガチで怖かった。
漏らしそうだった。漏らしてねーけど。
ゆっくりと離れる朝霞。だけど、目は真っ黒でうっすら笑ってキレてた。
黒い髪が揺れる。
「許さないから……。覚悟しといてね。先生や教育委員会がごちゃごちゃ言っても、絶対に絶対に絶対につぶすから」
朝霞がそう言ってオレは何か言おうと口を開くが何も、何も言えなかった。
そして、翌日からオレたちにとってガチの地獄が始まった。
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