チームクソ
大川は誰かと話しているようだった。慌てて松葉杖を持ち上げ壁に背中を預ける。話している相手は、雨野だった。
「知らないわよ。別にやれることないし、ほっとけばいいじゃん」
「だって……朝霞があんな男に尽くしてんの見てらんねーよ」
どーもあんな男です。ほっとけ。俺だって見てらんねーよ、あんな朝霞。それにしても中原情報もバカにできない。マジで二人なんかあるっぽいな。雨野が俺にまで聞こえるクソデカため息。
「知らないわよ。ていうかさ、そもそもあんたが朝霞をモノにしたいから、追い詰めさせようとしてきたんでしょ?」
はあ?
「は、はあ?」
マジでヤダ。かぶった。
「だって、そうじゃん。あたしらに女バスの会話教えたりしてさ。あからさますぎ。そんで精神的に病み始めたところでやさしいこと言って自分のモノにしようとしたんじゃん? あんたがゆうとに送ったLIN〇スクショしてんだからね」
「うるせーな! お前らがやってんの普通にいじめだからな。オレまで脅し始めやがって」
……なるほど。大川はなんとしても朝霞をモノにしたくて追い詰めようとした。それでネタになりそうな情報を雨野に送って、ゴミメディアマノが切り抜いていじってたってところか。で、作戦通りとか馬鹿な事を仲間に送ったのが雨野に見られて手駒にされたと。
「もーいいじゃん。アイツ、あたしらに釘は刺してきたけど、なんかする様子はないし。あんなに病んでんだしさー。みんな引いてるし、ざまぁみろっしょ?」
ざまぁみろ……と。なんにもしてない朝霞が? あんなに苦しそうな顔になってんのがざまぁみろ?
「おい、ふざけろよ……!」
思い切り廊下に松葉杖を打ち付けて俺はカスどもの前に立つ。
「こ、小谷?」
「な、なんでここに……ていうか、聞いてた!?」
クソ三下悪役セリフをありがとう。
「聞いてた」
一方、俺もセリフのセンスはない。それだけしか言えない。だが、効果は抜群。固まる二人。数秒後、お互い見合って、俺見て、見合って、俺見て。クソ同士仲いいな、お前ら。
俺が松葉杖を振り上げ、もう一度廊下に叩きつけると二人はびくりと身体を震わす。
その様子にアイツの顔がちらつき、怒鳴る気力が消えていく。なんかもう疲れた。怒鳴っても意味ない気がするし。
「お前らがやったことを朝霞がなんで言わないか分かんないけどな」
いや、ちょっと嘘だ。朝霞はやさしいから、あんなになってもちょっと信じてるのだ、人を。
「俺は言うぞ。てめーらがこれ以上くだらねーことしたら」
俺は朝霞とは違う。朝霞をあんなにしてしまった俺は。
「だから、これ以上……」
「うあああああああああああ!」
「お、大川!」
そこまで言いかけて大川が急につかみかかってきた。え? え? うそ!? コイツ何!? ヤバくない!? まだ話してる途中なんですけど!?
俺がもし異世界チート主人公であればオート何かが作動して迎撃できるだろう。だが、俺はちょっと事故にあっただけのただの高校生。反応できずにそのまま大川に掴まれ、床に倒れ込む。
「お……えっ……!」
治りかけの腹がぐわんとして痛みが走る。幸い、足は直でぶつかってないがそれでも振動で痛い。
「お前が……お前が……オレはそんなつもりじゃ……!」
そんなつもりじゃ……? 嘘だろ、コイツマジで言ってる?
「そんなつもりじゃなかったってか? テメエがやったことマジでわかってねえんだな! このクソゴミカス!」
「う、うるせえええええ!」
大川がマウントポジションから思い切り殴りかかろうと拳を上げる。これを喰らえば、朝霞のことがなくても大川はだいぶ終わるだろう。どうせ、もう大けがしたんだし、一個や二個。そう思って目を閉じた時だった。
「何、してるの……?」
一瞬、地震が起きたかと思った。
身体がぐらっとなる感覚。だが、地震じゃない。ただの声だ。目を閉じてたから聴覚にもろに刺さる冷たくほの暗い声。
目を開けると大川はもう俺の方を見てなかった。雨野と同じ方を見て震えていた。
俺もそっちを頑張って首だけで見る。
居た。
元・太陽が。
曇りきった眼でこっちを見ていた。
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