元・元気印無邪気活発娘
「あ、あのー……俺、パン一個でいいって……」
「大丈夫。好きなの選んでくれれば、いいから……!」
「で、でも、お金」
「お金もいいから。わたしが出したくて出してるから……!」
いや、朝霞の気持ちもわかるけど俺の気持ちーっ! クラスメイト達の視線が痛い痛い! 状況は分かってるから殺意というより頼むなんとかしてくれ的な懇願の眼差し。バーロー! 俺になんとかできるわけねーだろ! ていうか、中原消えやがったぁああああ! いつの間にか窓際でたそがれてるふりしてやがるぅうう!
とにかく、買ってきてもらったのだから感謝を述べねば。俺はツナマヨパンを選ぶ。
「あ、ありがとう。朝霞さん。あの……ほかのパンは……?」
「残りは欲しくなったら言って、い、いつでも出せるように準備しておくから……」
妙だな。俺の朝霞さんの好きなパン買ってという言葉が消えている? 俺の言葉が迷宮入り? 聞こえなかった? さては、どこかのラノベ系主人公? だとしたら、目がキマりすぎている……!
その後も、ことあるごとに朝霞は俺に絡んでくるが、3か月前と違い過ぎてキツかった。
例えば……三か月前なら授業前に朝霞は……。
『ごめーん! この次の授業の宿題やってなくて! ジュースおごるからさあ! 一瞬貸し手ください!』とか言いながら、手を合わせてぶんぶんと頭を下げてくる。
だが、今は……。
「こ、小谷君……次の授業の準備大丈夫? 教科書忘れたら言ってね、貸すから。あと、こ、小谷君が出てこれなかった授業の分、まとめてあるから……あ、あと、小谷君が好きなジュースもあるから喉乾いたら言ってね」
だし! ていうか、同クラなんだから貸したら自分の分ないじゃん! って言いたいけどいえる空気ではない。
掃除でも……。
『いよっしゃあ! 誰が一番箒で掃き終わるか競争ね! 速攻終わらせて部活いくぞおおおお!』と元気印無邪気活発娘だったのに。
「ねえ……あまりほこりたてないで。こ、小谷君、病院出てきたばかりなんだから調子悪くなったらどうするの? なんだったら、先に帰っていいから。わたし一人でやるから。こ、小谷君も先に帰っていいからね。でも、校門までは荷物持っていくから教えてね……」
だしぃい! 呪印邪気暗黒娘と化しているのだ。
とにかく終始そんな感じで太陽の見る影もない。クラスメイト達も、じゃ、じゃあってな感じで帰ってしまった。みんな、朝霞に怯えている。そして、朝霞は……俺に怯えている。
「…………!」
俺に何かしなきゃと必死で考えて、俺がやりたいことは何かを必死に探し続けている。
その顔も目も、今にも裂けそうな風船みたいだった。
胸がばくばくと内側から俺を叩く。俺までポンプで膨らまされてるみたいで息が出来なくなり、思わず立ち上がる。
「……!!」
「こ、小谷君? あ、あ、帰る? 荷物、持とうか?」
朝霞が恐る恐る俺に近づく。俺は吐きそうになるのをこらえながら手で朝霞を制す。
「……あー、大丈夫。俺、ちょっとトイレ行ってくるから。で、戻ってくるから」
そう言って俺は松葉杖をとって、トイレへと急ぐ。流石の朝霞もトイレまでは追ってはこない。ゴツゴツと繰り返す松葉杖の音を聞きながら俺は考える今の朝霞に何が出来るのかを……何も出来るわけがない。俺はもう朝霞を庇って大けがをしてしまったし、どんなに俺が許してもあいつは……。
その時だった。
「おい、どーすんだよ、小谷も帰ってきたし」
大川の声がした。
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